生徒8割「見たい」も消えゆく『合格発表の掲示板』学校はデータ確認等が負担 専門家「歓迎伝える工夫を」
合格者の受験番号を学校に張り出し、受験生が喜怒哀楽する様子が見られた高校の「合格発表」がなくなろうとしています。愛知の公立高校では24年度からオンラインのみになり、受験生が一喜一憂する光景が見られるのは23年度が最後かもしれません。
■大学ではすでに廃止したところも…「合格発表の掲示板」愛知では23年度で最後か
2024年3月、名古屋市東区の県立明和高校で行われた合格発表では受験番号が張り出され、自分の番号を見つけた受験生からは喜びの声が上がっていました。
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受験生の女子:
「嬉しいです。震えが止まらなくて、飛び跳ねちゃいました」
受験生の男子:
「部活も勉強も両立して、悔いのない3年間にしていきたいと思います」
この合格発表が愛知県の公立高校では2024年度以降オンラインのみになり、こうした光景が見られるのは最後になるかもしれません。愛知県では2023年度は掲示板とWEBを併用していましたが、2024年度からは掲示板を廃止し、WEBのみとなります。岐阜県は未定ですが、三重県は掲示板とWEBの併用を考えているということです。
大学ではすでに合格発表を廃止しているところもあります。画像は、2011年の名古屋大学の合格発表の様子です。
受験生が絶叫して喜んだり、ガラケーで記念撮影する様子が見られました。
受験生:
「うわ~!!」
在校生に胴上げされる光景も風物詩でした。
さらに昔、40年前の1985年の映像も振り返ります。
インスタントカメラで撮影したり…。
このころも胴上げはあったようです。
応援団:
「経済学部、合格されました!せ~の、バンザ~イ!」
応援団による万歳三唱もありました。
しかし、名古屋大学は、2020年度に掲示板をやめています。
■「雰囲気楽しみたい」「精神的負担が」受験を控えた子供たちの声は
合格発表掲示板の廃止について、子供たちはどう思っているのか。名古屋市千種区にある佐鳴(さなる)予備校で、2024年度に受験を控えた中学2年生に「合格発表を掲示板で見たいか」を聞きました。
女子生徒:
「見たいです。その場に行って、皆と自分の番号を探すというのが、受験独特の空気を楽しめていいなと思うからです」
別の女子生徒:
「受験のドラマとかで壁にたくさん番号とか書いてあって、見るのがすごい憧れというのと、落ちていても友達が周りにいたら慰めてくれそうだし。せっかく人生で数回しかない経験だから、全然面倒くさいとは思わないです」
「見たくない」という意見もありました。
男子生徒:
「オンラインの方が手軽に見られるし、他の人の目がない状況で見られるから。移動する手間とかもないし、精神的な負担もないのかなと思いました」
45人に聞いたところ、結果は37人が掲示板で見たいと答えました。
■気風や文化に触れる機会の喪失に…専門家は「歓迎を伝える工夫を」
合格発表について、教育工学が専門の国際大学GLOCOM(グローコム)の豊福晋平(とよふく・しんぺい)准教授は「掲示板から始まって様々な形態が出ています。今では、受験番号とパスワードで合否を表示するといったオンラインが主流になりました。その結果、掲示板を見る人が減り、一方で教職員の方の負担は減っている」と話しています。
コロナで掲示をとりやめてそのままという学校が増えたそうで「掲示の取りやめは時代の流れではないか」と説明しています。
今回、合格発表を取材した明和高校の教頭は「合否データを掲示板に記すときには、間違いがないか何度もチェックするので、かなり神経を使う」と話しています。
また、発表当日は、交通整備などで負担が大きいということです。
豊福准教授も「掲示の取りやめは時代の流れではありますが、掲示することによって学校の気風や文化に触れられる。その学校の入口でもある。貴重な機会が失われるのは味気ないですね」と話し、「例えばリアルな触れ合いの代わりに、在校生がメッセージ動画を作るなど、歓迎を伝える工夫をしても良いのではないか」との提案もしています。
2024年3月15日放送