“kg単位”で体重減ることも…過酷な将棋のタイトル戦 対局中の消費カロリーは動かずとも「早歩き」に匹敵か
将棋の藤井聡太八冠は、4月から毎週タイトル戦が続いていて、全国を飛び回っています。各タイトル戦の前日は、対局地で前夜祭などもあり、かなりハードなスケジュールです。
体の動きの少ない「将棋」ですが、頭を使うため多くのエネルギーを消費するといいます。プロ棋士や専門家にどれほどの消費があるのか聞きました。
■1日にキロ単位で体重減…プロ棋士が明かす過酷なタイトル戦
深浦康市九段(ふかうら・こういち 52)は、35歳で王位を獲得するなど、タイトル戦で3回勝っている名棋士です。
【動画で見る】“kg単位”で体重減ることも…過酷な将棋のタイトル戦 対局中の消費カロリーは動かずとも「早歩き」に匹敵か
深浦九段にタイトル戦での疲労度について聞きました。
深浦康市九段:
「自分は(タイトル戦の)1日制、2日制両方出たことあるんですけども、1日制で1キロ、2日制で2キロ落ちる感じですかね」
深浦九段は1日や2日の対局の間に、キロ単位で体重が減るといいます。
深浦九段:
「やっぱり頭がフル回転しています。考慮中でも小刻みに体が動いていますので、意外とカロリーは消費していると思いますね」
例えば叡王戦は持ち時間が、予選が1時間、本選トーナメントが3時間と勝ち上がると伸びていきます。
タイトル戦では4時間にもなります。お互いが持ち時間を全て使えばおよそ8時間、集中し続けなければなりません。
■対局で重要な食事やおやつ…レジェンド・羽生九段は驚きの行動も
このため厳しい対局では、昼食やおやつといった食事がとても重要です。
深浦九段:
「旅館やホテルにもう缶詰状態で、食事で『この場所に来たな』『旅をしている』っていう感じが出てきてリフレッシュにもなります」
ただ、食後に眠くなるようなことはないのでしょうか。
深浦九段:
「一瞬一瞬が勝負ですから、決して眠くなることはないですね。ただ、記録係が隣にいるんですけど、対局者ほど真剣味がないですから、対局始まった2時間ぐらいからうつらうつら船を漕ぐ人はいたりしますね」
深浦九段は2007年、王座戦で羽生善治九段と対局した際、食事について驚いたことがあるといいます。
深浦九段:
「3時のおやつにアイスクリームが出ても、羽生さんが一向に召し上がらないんですね。徐々に溶けていくわけですよ。1時間、1時間半経った後に、羽生さんが溶けたバニラアイスクリームの液体を『ズズズッ』っと飲み始めまして『なんだこの人は…こういうやり方があるのか』と。ちょっとこの勝負負けたかなと思いましたね」
羽生九段の、気迫に満ちた立ち居振る舞いに圧倒され、敗れたといいます。
そして、タイトル戦に連続して臨む藤井八冠について、深浦九段は…。
深浦九段:
「20数回、タイトル戦に出られていますので、ご自分のペースを掴んでいらっしゃるのかなと思います」
■医師に聞いた将棋の消費カロリー
将棋の対局におけるエネルギーの消費量について、医師にも聞きました。アマチュア将棋の六段保持者でもある、帝京大学医学部の功刀浩・主任教授(くぬぎ・ひろし 62)は、「人間の脳の重さは体重の2~3%程度にも関わらず、普段から食べた食事の20%程度のカロリーを消費している。プロ棋士はそれに加えて対局時は頭を使うため、さらに消費する」としています。
また対局中は、勝ち負けを争う「闘争状態」に置かれるため、ストレスホルモンの分泌や血圧上昇、エネルギー消費も大きくなり、運動に例えるとずっと「早歩き」ほどのカロリーを消費し続けているとみられるということです。
脳をフル回転させるのに必要なエネルギー源が、ブドウ糖です。ごはんやパンに含まれていますが、スイーツなどは、素早く脳をエネルギーで満たして活性化させてくれます。
深浦九段は、対局者がお菓子のラムネを持参していたのを見て、今は自分も持ちこんで対局に臨んでいるということです。
功刀教授も「ラムネは90%がブドウ糖ということに加え、口の中で溶けて吸収も早いため、対局中に有効」としています。
ただ、一般的には過剰な摂取は禁物です。「スポーツの試合」や「試験」など、特に頑張らなければならない場面や、緊張する場面では効果的ですが、甘いものは気分をよくする作用もあるため、普段の勉強などの際に摂っていると、クセになって太ってしまいがちです。
肥満になると、脳が萎縮して成績にも悪影響で、規則正しい3食のバランスの良い食事を摂り、ブドウ糖の摂取は「ほどほどに」ということです。
2024年3月29日放送