一体何が…岐阜の老舗料亭が市と“立ち退きトラブル” 直撃取材に五代目社長「退去は一方的で納得できない」
岐阜市の金華山の麓にあり、昭和天皇も繰り返し訪れたという老舗料亭「萬松館」をめぐり、立ち退きのトラブルが発生しています。29日、五代目社長が取材に応じ、「一方的で納得できない」と話しました。
5月24日、岐阜市の柴橋市長が立ち退きをめぐるトラブルを明らかにしました。
柴橋正直岐阜市長:
「契約の満了日が令和6年2月14日にきたわけですが、この1年程前から明け渡しに向けた協議を私どもの担当部局と先方とで行ってまいりましたが、契約満了となっている現在も明け渡しがされていない」
トラブルとなっているのは、岐阜城がそびえ立つ金華山の麓にあり、織田信長の館があった場所と伝えられる、約7000平米の敷地を持つ老舗料亭「萬松館」です。
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岐阜市によると、土地と建物は明治時代に寄付を受けて市の所有となり、戦後は料亭側と賃貸契約を結んできました。
2024年2月、さらなる更新をしないという合意のもと結んでいた10年間の契約が、期限を迎えたといいます。
柴橋正直岐阜市長:
「市民の財産ということでありますので、契約や関係法令に基づく対応をしていかなければいけない」
萬松館は、契約が切れた後も営業を続けています。その理由について、萬松館の五代目・五百木健次社長が29日、岐阜市の主張に戸惑っているとしつつ取材に応じました。
Q.この状況で営業を続けるのは?
萬松館の五百木健次社長:
「ごめんなさい。いろいろと言いたいことはありますけど…」
Q.契約が切れたことは把握している?
「把握していますよ。2011年に東日本大震災がありましたので、耐震工事をしなきゃいけないと。そこでいったん長期の契約を切ったんです。その時に、10年後の話の説明は全くない。『どうなるかも分からない。これから決めていきますから』みたいな言い方なわけです」
五百木社長は、岐阜市から契約満了後の詳しい説明を受けないまま、期限付きの契約を結ばされたと主張しました。
萬松館は、明治時代に建てられて以降、昭和天皇や現在の上皇さまも繰り返し訪れ、岐阜市主催の敬老会の会場となるなど、市民にも親しまれてきた由緒ある料亭です。
五百木社長は、建物や土地は自身の先祖を含む市民が寄付したもので、長年お金をかけて維持管理してきたのだと訴えます。
五百木健次社長:
「仮にも柴橋市長は『岐阜市の財産』と言ったけども、その財産を守ってきたのは岐阜市だけではなくて、私どももやってきた訳であって。そのことに対して『退去しろ』という一方的な言い方は納得できない」
岐阜市は引き続き立ち退きを求め、提訴も検討しているとしていますが、萬松館は今後も営業を続ける意向で、市に対話を求めるということです。
萬松館は金華山の麓一帯の公園・岐阜公園の中にあります。岐阜市は、期限付き契約を結んだ2013年、「公園再整備の方針」をまとめ、このとき萬松館も再整備の範囲とされました。
24年2月には、この方針を改定した「再整備基本計画案」を公表し、『“迎賓館”の改修と活用』と明記していて、萬松館の名前を使わない形となっています。
岐阜市は、具体的な活用方法は明らかにしていないものの、「このままでは再整備に影響する可能性がある」としています。