中日ドラゴンズの人気マスコットキャラクター「ドアラ」が2024年で、誕生して30年を迎えた。当初は人気が出ず、後輩キャラクター登場時には「クビ」になるピンチもあった。

 人気のきっかけとなったのは、ホームグラウンドを現在のバンテリンドームナゴヤに変わる際、球団関係者が与えた「課題」だった。

■12球団一人気のドアラにも辛い過去が

 5月26日、バンテリンドームナゴヤで行われたドラゴンズとスワローズの試合後、ドラゴンズのマスコット「ドアラ」の等身大モニュメントがお披露目された。

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モニュメントはドアラの誕生30周年を記念して製作。色や型も本人と同じになるように合わせ、忠実に再現した。

費用の500万円はクラウドファンディングで募集し、わずか5分で目標を達成。結果、約2800万円が集まった。

お披露目の会場でファンに聞いても、小さな男の子から成人男性、そして若い女性まで幅広い層にドアラは愛されている。

12球団一の人気マスコット、ドアラだが、その歴史はまさに「波乱万丈」だった。1994年、名古屋にやってきたコアラにちなんでデビュー。当時の姿はピンク色で、かなり丸みを帯びていた。

なぜこんなに変わったのか、ドアラに聞くと、いつもどおりの筆談で「赤ちゃんですね~かわいいですね~」「みんなも成長したら色々変わりますよね」と答えてくれた。

その後もマイナーチェンジを繰り返したが、そこには辛い歴史もあった。

当時は広報部で、ドアラの「育ての親」、現在はドラゴンズベースボールアカデミーの事務局長の石黒哲男さんが振り返ってくれた。

ドラゴンズベースボールアカデミー事務局長の石黒哲男さん:
「ドアラが行くと子供さんにギャーギャー泣かれたりとか。顔が大きいから怖いんでしょうね」

当初は人気がなく1997年、本拠地がドームに移り、新マスコット「シャオロン」が登場。

すると、ドアラを“お払い箱”にすることも検討されたという。

■ドームへの移転時に与えられた「課題」 その後一躍人気者に

 結局「かわいそうだ」ということで残されたが、この時、石黒さんはドアラにある“課題”を与えた。

石黒さん:
「プロの見せものとして、マスコットにもアスリートチックな気持ちは大切だなと。アスリートチックに振った方がファンの方が喜ぶんじゃないかっていう。ドームになる時にしっかり鍛えてこいと」

もう、あとがなかったドアラ。ダイエットでスリムなボディを手に入れ、おなじみの“バク転”を始めた。

石黒さん:
「発案者はチアドラゴンズの子たちです。『私たちが花道を作るので、そこへバク転してもらっていいですか』」

チアドラゴンズのメンバーのアドバイスで、7回裏に勝利を占う「バク転タイム」をスタート。2022年に終了するまでの25年間、約1600試合で披露した。

こうした努力や、動画サイトでバズったことがきっかけで一躍、ドアラは人気者に。2008年には“マスコット初”となる本も出版した。

当時の編集者で、PHP研究所の太田智一さんに話を聞いた。

PHP研究所の太田智一さん:
「1カ月位、アマゾンの本のランキングでずっと1位だったんですよ。そうしたら一時的にハリーポッター越えちゃったりして」

人気が出たことについて、ドアラ自身は「人気は自分でどうにかなるものではないんで…」と冷静な返事だった。

その後もCDデビューを果たすなど、ドアラは活躍の幅を広げていった。バンテリンドームでドアラの魅力を聞いてみた。

男性:
「なんか人間っぽいというか」

女性:
「お調子者」

別の女性:
「ちょっと気を抜いて行動する感じが好きですね」

■WBC壮行試合では大谷選手とのハイタッチを試みるも…

 試合中のドアラは、グラウンドのそばで静かにゲームの行方を見守り、出番が近づくと立ち上がってストレッチ。

そしてひとたびグラウンドに出れば、ファンが沸く。

「不思議ダンス」に、敢えて動かないお得意の「静止芸」も。

2023年3月、バンテリンドームで行われたWBC日本代表とドラゴンズの強化試合では、試合前の選手紹介で代表メンバーの列に並び、大谷翔平選手との「ハイタッチ」をちゃっかり試みたが、大谷選手はドアラをスルー。スルーした後の大谷選手は、いたずらっぽく笑っているように見えた。

当時のことをドアラに聞くと「あいつわかってるなと。色々やらないよりやった方がいい」と振り返った。

2013年からは、マスコット初の“契約更改”も始めた。年俸は食パンで、2023年はドラゴンズが2年連続で最下位だったことから、117グラム減の500グラムで更改した。

ドアラ:(2023年12月)
「2年連続最下位 試合・イベントを休む 自分からダウンを提案」

2013年の年俸は750グラムで、低迷するドラゴンズの順位に比例してダウン傾向が続いていて、そのためか“ブラック発言”も飛び出す。

ドアラ:
「たくさんパーティーをしてキックバックを受け取りたい」

司会:
「書き直してくださいね」

“人間っぽい”“自由”なドアラ。その人気は老若男女、敵も味方もかかわらず広がっている。

ドラゴンズファンの女性
「ファンサービスが良いと思います」

別のドラゴンズファンの女性:
「盛り上げていこうっていう、そういうのがみえるな」

阪神ファンの女性:
「阪神ファンの私たちにもドアラはすごいサービスしてくれて。手を振ってくれました」

■アクシデントで試合中断も会場の熱は冷まさず ドアラのプロ意識と将来の夢

 サービス精神あふれるドアラ。「育ての親」の石黒さんには、忘れられない出来事がある。

2005年8月、ドラゴンズとジャイアンツの試合。突然ドームで停電が発生し、試合が中断した。

復旧までに20分かかったがその時、グラウンドにあらわれたのがドアラだった。

石黒さん:
「20分間グラウンドを開けっ放しにするのはお客さんに申し訳ないですし。他になかったんですね。ドアラに『お願いね』って言って」

無茶ぶりにもかかわらず、復旧までの20分間、ファンを楽しませたドアラ。

石黒さん:
「レフトスタンドからも、本当にすごい拍手をもらって帰ってきたんですよ。あの時はヒーローでしたね」

この時のことをドアラは「早く電気直らないかな~。あきちゃうかなと。楽しませる事が仕事!」

あふれるサービス精神の裏に“プロ意識”。最後に将来の夢を聞くと「静かな所でダラダラ暮らしたい」と締めくくった。

2024年5月27日放送