7月3日、20年ぶりとなる新紙幣が発行されました。名古屋のラーメン店は新紙幣に対応した券売機更新を見送ったほか、バス会社は運賃箱での支払いを終了するなど、様々なものに変化をもたらしています。

 日銀名古屋支店では3日朝、職員が国立印刷局から届いた紙幣をチェックしました。7月3日だけで、東海3県の金融機関に1381億円を払い出したということです。

日銀名古屋支店の担当者:
「新しいお金が円滑に流通していくよう、責任をもって現金の供給を続けていきたいと思っております」

 中区の三菱UFJ銀行名古屋営業部では、原則7月4日以降としている新紙幣への両替を、3日から枚数限定で対応するということで、50人ほどが列を作っていました。

【動画で見る】誰もが歓迎とはいかず…20年ぶり新紙幣にラーメン店「迷惑です」原材料等も高騰で券売機には“中止”の貼り紙

 新紙幣は正午ごろに届き、多くの人が両替をしていました。

40代男性:
「今までの紙幣と手触りが若干違うなと。結構重みのある紙幣です。これが今日から流通ということで、楽しみにしています」

70代男性:
「きれいですね、最高です。これはずっと記念にとっておきます」

 新紙幣は3種類で、1万円札は「日本資本主義の父」実業家の渋沢栄一、5千円札は津田塾大学の創立者・津田梅子、千円札は近代医学のパイオニア北里柴三郎です。

 新紙幣を巡っては、誰もがもろ手を挙げて大歓迎というわけでもありません。名古屋市熱田区のラーメン店「フジサワ中華そば 日比野店」には、5年前に中古で譲り受けた券売機が置かれていますが、『中止』の貼り紙が貼られていました。

フジサワ中華そば日比野店の西川さん:
「新紙幣に対応するのにも40~50万円かかるんですよ。そうするとこちらも厳しいので」

 新紙幣に対応した券売機に更新するには、主力メニューの「中華そば」600杯ほどのコストがかかります。その中華そばも、チャーシューの豚肉や小麦に煮干しなどの原材料価格高騰で590円から徐々に値上げしていて、現在は830円です。

 さらなる値上げは厳しいため、券売機は買い替えずに「メニュー表」として使うことにしました。

 店は女将と大将の2人で切り盛りしていますが、新紙幣の流通を見据え、1カ月前から券売機を使わずに対応をしてきました。しかし、調理しながら伝票を書いたり、電卓を叩いておつりを渡したりと大忙しです。

 途中で釣り札が足りなくなると、顔なじみの飲食店へ行くこともあります。

フジサワ中華そば日比野店の西川さん:
「何十年ぶりとは言っていたものの、こちらとしてはちょっと迷惑ですよね。仕事量も増えて、回転数も減って」

 券売機の導入を見送って値上げを回避した店の判断に、客は「券売機を使えなくしても、値段が安い方がうれしい」と話していました。

Q.政府などへの要望は?
フジサワ中華そば日比野店の西川さん:
「(券売機更新の)補助金が出たらいいなと思っていますけどね」

 高速バスなどを運行する「JR東海バス」では、運賃の支払いは、車内の運賃箱に現金を入れる形も対応していました。

 今回のタイミングで、東京・静岡間などの一部区間を除き、80台のバスで運用している運賃箱での支払いを終了することとなりました。理由はコスト削減です。

ジェイアール東海バスの担当者:
「機器のセンサー部分の取り換えですとか、そういったところで1台あたり十数万円程度の費用がかかると考えています」

 新紙幣対応の運賃箱を導入するには多額のコストがかかり、すでに導入しているPayPayなどのQRコード決済へと徐々に移行することを決めたといいます。

 新紙幣で支払う場合や、運賃箱のない車両で現金を使いたい時は、運転手への手渡しで精算することができますが、車両更新のタイミングなどを経て運賃箱は完全に姿を消すことになります。

 新紙幣の20年ぶりの登場は、暮らしに変化をもたらし始めています。