法律では規制しきれない「触らない痴漢」と呼ばれる手口が急増しています。街で聞くと、被害に遭った経験がある人も多くいました。被害に遭わないためにはどうすればよいのかや、被害に遭っている場面に遭遇した場合の対応について、医師や専門家に聞きました。

■「さりげなく写真」「電車内で追いかけられる」街で聞いた「触らない痴漢」の被害

「触らない痴漢」は「わざと至近距離に近づいてにおいをかぐ」「首筋や耳などに息を吹きかける」「見知らぬ相手に、スマホのデータ共有機能でわいせつ画像を送り付ける」といった行為で、近年急増している、新たな痴漢の手口です。

【動画で見る】「さりげなく写真」「電車内で追いかけられる」…狙われやすい人や状況は 専門家「逆上するのでタチが悪い」

名古屋の街で「触らない痴漢」について聞きました。

女子学生(19):
「写真は撮られたことはあります。なんか歩いてたら、さりげなくカシャって撮って過ぎ去ってっちゃった感じ」

別の女子学生(19):
「電車の中で追いかけられて、車両変えてもついてこられちゃう。接触があるわけではなく、追いかけられて、すごい見られたりとかがありました。一人でいたので誰にも言えなくて、そういう時どうしたらいいのかなって」

主婦(50):
「自分が電車に乗った時とかに付かず離れずとか、ちょっと距離近いなっていう感じで寄ってこられたりとか、そういう経験はありますね」

■「目の前のものに集中する場所」には注意 痴漢の治療も行う医師が指摘する「狙われやすい状況」

 2024年2月に発表された、女子大学生100人を対象にした調査によると5人に1人が「ガラガラの電車内で異様に近づいてこられた」「性に関わる不愉快な質問をされた」といった「触らない痴漢」の被害に遭った経験があると答えました。

痴漢などの「性依存症」の治療を行うなど、多数の元加害者に向き合っている名古屋市熱田区の「あつた白鳥クリニック」の院長、木村武博医師に狙われやすい状況について聞きました。

あつた白鳥クリニック木村武博医師:
「一番多い理由というのは『なんとなくできそうな状況だったから』。ものすごく何か性欲が強くなって起こるとか、そういうことではない」

「なんとなくできそうな状況」とはどんな状況なのか詳しく聞くと、木村医師は「特に目の前のものに集中をするような場所」だといいます。

木村医師:
「例えば本を読む、UFOキャッチャーでずっとじーっと見ているだったりとか、そういう状況というのはやはり後ろですね。人が少ないってところでは、むしろ触らないもの(触らない痴漢)というのが増えてくる傾向にはあるかと思います」

対策として、木村医師は「周囲へのけん制」を勧めています。

木村医師:
「時々、後ろを見たりとか、周りに注意を払いながら目の前の一点に集中をしないっていうことだったりとか、被害を防ぐというためには良いのかなと思います」

■痴漢が「逆上するのでタチが悪い」…専門家が指摘する痴漢に“狙われやすい人”と対策

 また“痴漢抑止バッジ”を製作するなど、性犯罪から身を守る活動を行っている「痴漢抑止活動センター」代表の松永弥生さんに、狙われやすい人について聞きました。

痴漢抑止活動センターの代表 松永弥生さん:
「痴漢は、気が弱そうで何かあっても声を上げそうにない子を狙うんですよ。うつむいて背中を丸めたりすると、本当に自信なさそうに見える」

松永さんは「気弱」「おとなしさ」が狙われやすいため “自分の見せ方”が大切だと言います。

松永さん:
「背筋をシャンと伸ばして顔も上げている方が、しっかり者に見られて被害に遭いにくいとは言われています。痴漢の加害者はホームでターゲットを見繕っているんですよ。ホームにいるときに腕を組んで、威張った立ち方していると痴漢に合わなくなったという声があって、それは上手いやり方だなと思いました」

また、もし被害に遭った場合は、行動には注意が必要だといいます。

松永さん:
「痴漢の手を掴んで『この人痴漢です。助けてください』って、それをやったら『冤罪』だとか『示談金目当てか』って罵声を浴びせられて、周りの注目も集めてすごい辛い思いをしたって言うんですよ。痴漢は「痴漢だ」というと怒るんですよ。逆上してくるのでタチが悪いんですよね」

このため、松永さんは大声を出すのは勧めないといいます。

■被害に遭った場合のとるべき行動

 接触のありなしに関わらず、痴漢に遭っていると思った場合の対策を聞きました。

まずは「距離をとってください」「近すぎます」などと、隣の人に聞こえる程度に声をかけることです。

また「しゃがむ」「一歩横へ動く」「『通してください』と言って移動」など、何か行動することも大切だといいます。

痴漢が後にいると感じた場合には「鏡やスマホの自撮りモードで覗き込む」ことで見ているということをアピールすることも対策としてあげています。

■目撃した場合のとるべき行動

 痴漢とみられる行為を目撃した場合の対応については「アクティブバイスタンダー=行動する傍観者」になろうと呼びかけています。

痴漢行為を受けている人に「大丈夫?」と声をかけたり、アラームを鳴らすほか「この時間、この車両、こんなことをしている人がいた」などの証拠をメモして残すなどすることで、後から援護することに繋がるといいます。

2024年4月26日放送