狙うは金…パリ五輪バド男子シングルス代表・西本拳太 高かった“桃田の壁”「彼がいたからこそここまで」
バドミントンの男子シングルスで、パリオリンピックの代表に選ばれた西本拳太(けんた)選手は、三重県出身での29歳です。29歳で初めてオリンピック代表に選ばれた「遅咲き」ですが、長身を生かした最速400キロ以上のスマッシュや粘り強さを武器に、金メダルを目指します。
■“日本のエース”桃田賢斗と同い年 遅咲きの五輪代表・西本拳太
バドミントンの西本拳太選手(29)は三重県伊勢市出身で、パリオリンピックの男子シングルスで代表に選ばれました。
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「ジェイテクト」に所属し、身長180センチの長身を生かしたスマッシュに、粘り強いプレーが持ち味です。
年齢は29歳ですが、今回のパリがオリンピック代表の初選出で、遅咲きの選手です。
西本拳太選手:
「大器晩成型だと思うので、ここからいい意味で年齢じゃないですけど、そういうのを覆していければいいかなと思います」
西本選手は、世界ランク1位にも輝いた桃田賢斗選手と同い年です。
西本選手:
「小学4年生くらいで初対戦してから、かれこれ僕らも約20年くらいなんですけど」
15年前、2009年の8月に中学校の全国大会で2人が対戦した時の映像が残っていました。2人は当時中学3年生で、この時は西本選手が準決勝で敗れ、3位に。
その後も桃田選手の「壁」を超えられず、西本選手はこれまで、オリンピックに届きませんでした。
西本選手:
「(2019年の)彼が年間11勝した時の全日本総合は、絶対に勝てなかったです。試合中に強すぎて笑っちゃったっすね。こっちは10割の体力使っているんですけど、あっちはずっと6割ぐらい(の力)できて、要所でパンて打たれて」
2021年の東京オリンピックに出場できなかったことは、とても悔しかったといいます。
西本選手:
「思っていた以上にこんなに悔しいんだなという気持ちはあったので。その悔しい気持ちを二度としないためにはどうするかっていうのをちゃんと、具体的に自分の中でも考えて、オリンピックレース全体を通してどうやって勝ち抜くかっていうのを、自分の中では考えてやりました」
悔しさをバネに、西本選手は2022年、28歳で国際大会「ジャパンオープン」で優勝し、世界のトップに駆け上がりました。桃田選手は2024年4月、日本代表の引退を発表。
西本選手:
「彼が本当にいたからこそ、僕もここまでやれていると思いますし。コツコツやるのが多分僕の才能ですね、たぶん。それが一番自分の中で思っています」
■元五輪代表 小椋久美子さんも「やばい」と驚愕…驚異の時速400キロスマッシュ
西本選手が出身の三重県は、オリンピックメダリストや日本代表選手を大勢輩出しています。
バドミントンの小椋久美子さんもその一人で、西本選手は小椋さんに憧れてオリンピックを目指してきたといいます。
西本選手:
「三重県は結構スーパースターばっかり出るんです、レスリングで金メダル、バレーボールなら西田君、野口みずきさんとか」
この日の取材では小椋さんに、西本選手とラリーをしてもらいました。
小椋久美子さん:
「いまから西本選手とラリーをしてもらうので、どれだけショットがすごいのかというのを体験させてもらおうと思います。スマッシュ見せてもらった方がいいですよね?私とれないと思うよ」
西本選手:
「行きます」
小椋さんめがけて、西本選手がスマッシュを打ち込みます。
小椋さん:
「はやっ~」
西本選手:
「めっちゃすぐとられるし」
小椋さん:
「めちゃ速いんだけど。いい所に返してくれたからさ。スマッシュ速いね、やっぱり」
しかしその後は…。
小椋さん:
「やばい…速い…。全然とれない」
西本選手は時速400キロ以上というスマッシュや、スマッシュに見せかけて、ネット際に落とすフェイントなどで、小椋さんを翻弄しました。
バドミントン選手のピークは一般的には20代中盤とも言われています。
小椋さん:
「私は26歳で辞めているんだけど、年齢の壁みたいなものをバドミントンやりながら、すごいく感じた部分があって、西本選手は29歳で、しかも初優勝は27歳」
西本選手:
「そうですね、27、28くらいですね」
小椋さん:
「今その状況で 優勝までたどり着くのはすごいことだなと私は思うんですけど」
西本選手:
「練習量、絶対量は確実にやって来た自信はあるので。全盛期はこれからだというのは、自分でちゃんと体現していきたいと思いますし。練習の中でなるべく休憩、レストは取らないようにしています。ラリー間の休憩はあまり取らないように、きつい状態をずっと維持し続けてやるっていうのは、練習の中でもやっています」
■所属する「ジェイテクト」のサポートも
西田選手が所属する「ジェイテクト」も様々な面でサポートしています。
1つは「食事」です。ジェイテクトの寮の食堂に同行しました。この日のメニューは親子丼にさつま揚げとコンニャクの炒り煮、サラダにみそ汁など様々です。管理栄養士がたんぱく質、炭水化物など計算し、品数が多い食事を毎日提供していて、海外試合が多い西本選手もベストコンディションになるようサポートしています。
西本選手:
「体脂肪率も1桁なので、維持できているのは食べ物もあるのかなと。味は最高ですよ」
チームのサポートの2つめはトレーナーによる「体作り」です。
この日は40分間の「鬼のサーキットトレーニング」。とことん追い込む、過酷な筋トレでした。
■両親は子供のころから全力支援 思い背負って臨むパリで金メダルへ
西本選手の実家は、三重県伊勢市にあります。西本選手を小学2年生のときからサポートし続けている父親の吉春さんと母親の三知子さんを訪ねました。
実家には、これまで撮影してきた試合のDVDがたくさんありました。中にはラケットを振り始めたばかりの小学2年の西本選手の映像も。
小学生の頃から西本選手を大会に連れて行き、高いレベルを目の当たりにさせてきました。オリンピックで活躍することは、両親にとっての「夢」でもあります。
西本選手の母・三知子さん:
「目指してきて、中々手に入れられかった舞台。拳太らしく思い切りプレーが出来たらと思います」
吉春さんが、見せてくれた西本選手の小学6年生の時の文集には、将来の夢が書かれていました。
《文集》
「ぼくの将来の夢は、バドミントンのオリンピックに出場して、金メダルを取ることです。将来の夢にしたのは、四年生の時です」
コツコツまじめに。できることを積み上げてきた20年越しの夢。
西本選手:
「男子シングルスは、今は誰が勝ってもおかしくないと僕は思っているので。本選では暴れまくってダークホースになりたいなと思います」
パリで狙うのは金メダルです。
2024年6月6日放送