岐阜県立池田高校の運動部の顧問が、部員を丸刈りにさせる不適切な指導をしていたことが2024年6月、わかりました。県教委は不適切な指導と認定し、男性顧問は処分を受けましたが、こうした事例はいまだ全国でも後を絶ちません。

長く現場で部活を指導している人は、どのように時代の変化に対応し、生徒たちと向き合っているのか。イチローさんら数多くのプロ野球選手を輩出した高校野球の名門、愛工大名電の野球部で長く指導する倉野光生(くらの・みつお)監督に話を聞きました。

■「全員丸坊主に…」後を絶たない不適切指導

 岐阜県立池田高校の運動部で、50代の男性顧問が2022年9月、対外試合に負けた部員に対し「全員丸坊主にするか、俺が辞めるか」などと丸刈りを強要するような発言をしていたことが2024年6月、明らかになりました。

【動画で見る】後絶たぬ“運動部での不適切指導”…愛工大名電野球部で長年指導する倉野監督「社会の変化に対し敏感に対応を」

部員のうち16人が丸刈りにしましたが、男性顧問は2023年3月にも、髪が伸びてきた部員に対し「次の練習までに切ってこなかったら殴るぞ」と発言したということです。

県教委は不適切な指導と認定し、男性顧問は処分を受けましたが、こうした事例はいまだ全国でも後を絶ちません。

■名門野球部で40年以上指導する倉野監督が感じる「社会の変化への対応の必要性」

 時代の変化にどのように対応すればよいのか、イチローさんら数多くのプロ野球選手を輩出した高校野球の名門、愛工大名電の野球部で長く指導する倉野光生監督に話を聞きました。

愛工大名電高校野球部は、春夏通算25回の甲子園出場を誇る名門です。

倉野光生監督(65)は、指導者になって44年、コーチ時代にイチローさん、工藤公康さん、山崎武司さんなどを指導したほか、愛工大名電を甲子園常連校に育てました。

愛工大名電高校野球部の倉野光生監督:
「頭髪のことだとか持ち物のことだとか、学校のルールだとかいろいろなことが我々は当たり前だなといったことが今は変わってきていますから、それは敏感に教員や部活指導員、我々のようなチームを率いる指導者というのは周囲を見ながら、感じながら、対応するべきだと思います」

倉野監督はスポーツの世界でも、社会の変化に対応していく必要性を感じていました。

倉野監督:
「(昔は)体で覚える、1回じゃない、10回じゃない、1千回、1万回。答えが出ていないものを一生懸命体で数を重ねて覚えて行くというのが昭和だったと思うんですよね。令和になって、分析、スポーツサイエンスというんですか、我々が得ることが出来なかった数値とか映像とかそういったものを駆使して自分を高めていく」

その時代の生徒たちを取り巻く環境を理解し、タブレット端末を使うなど、指導方法をアップデートしているという倉野監督。過去の指導法をいま、そのまま押し付けることもしないと話します。

倉野監督:
「私が現役のときにやっていたことを今の選手にやれよという事は言いませんし、平成の時代30年の中で、いろいろと変わってきたことを、令和になってもそのままやれよということもありません」

■監督も「教えてもらう立場」を忘れずに

 指導者はあくまでも時代の変化に合わせ、環境を整えることが仕事としていますが、こうした“柔軟な考え”ができるようにするためにしていることがあります。

倉野監督:
「私自身のメンタルトレーニングというんですかね、雪山に登ったり、毎日選手と一緒に走ったり、自分が知らないことを、1人でやることの自分自身の気持ちの弱さとか小ささを自分で知るとか」

そこには、“自戒の念”が込められています。

倉野監督:
「教える身というのはどうしても教えられる立場を忘れてしまいますから。私たちも教えるんだけど、教えてもらう立場を常に忘れないように教える・教えられる両方を、一方通行じゃなくて行き来しないといけない」

2024年6月21日放送