パリオリンピックのホッケー女子で、日本は地元のフランス相手に勝利し、3大会ぶりの白星を挙げました。絶妙なパスで決勝点を演出したのが、岐阜県各務原市出身の永井葉月選手(29)です。永井選手の家はホッケー一家で、この「一勝」を掴み取るまでに並々ならぬ想いと物語がありました。

■全員が日の丸を背負った「ホッケー一家」

 岐阜県各務原市の永井一家は、姉・友理選手と妹・葉月選手をはじめ、家族全員が日の丸を背負った経験があるホッケー一家です。

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 リオ大会では、父・祐司さんが日本代表の監督を務めていました。

Q.普段は娘さんと家で話しますか?
父・祐司さん(2016年):
「その時によるわ。自分からはあんまり話さない。子供たちが話したいことがあれば話すだけ」

姉・友理選手(2016年):
「今、祐司さんも言っていたんですけど、自分たちは家族という意識はないというか、チームの一員ですし」

 永井家では、家族ではなくチームの一員だとして、「お父さん」ではなく「祐司さん」と名前で呼んでいます。父と娘の3人で挑んだリオオリンピックでは、一度も勝利できず、帰国後に周囲から「家族旅行」と揶揄されたこともありました。

 さらに、祐司さんは代表監督を解任されます。ホッケーが大好きな家族が、そのホッケーをきっかけにバラバラとなりました。

姉・友理選手(2020年):
「もうオリンピックに出なきゃよかったなと思うぐらい、すごくショックだった」

妹・葉月選手(2019年):
「あれだけ『結果を残して頑張ります』と言っていたのに、結局何も残らなかったし。ずっと引きずりましたね」

母・理恵子さん:
「友理も葉月もそうですけど、会話は極端に減りましたね。(家族が)なんかバラバラな動きをしていた気もしますね。もう次のことを考えられないような感じで」

■『信ずる者に勝利あり』祖父が教えてくれたこと

 バラバラとなった家族を明るくて照らしたのが、祖父・千治さんでした。

祖父・千治さん(2016年):
「これ(ホッケー)の技術はないけど、こっち(しゃべり)の方でね」

妹・葉月選手(2016年):
「おじいちゃん・おばあちゃんから教わることが多くて。最後はすごくいい話で終わる」

 幼いころから孫たちを気にかけてきた千治さんは、日の丸を背負うようになり常々言っていた言葉があります。

祖父・千治さん(2016年):
「『信ずる者に勝利あり』という言葉を送っとるんだわ。自分の心を信じたり、チームメイトを信じたりして戦うことが勝利につながるよと。それは信じなきゃダメ」

 しかし、東京オリンピックを前に千治さんは天国へ旅立ちました。

妹・葉月選手(2021年):
「(東京五輪が)1年延期しなかったらって…。自分をすごくポジティブにしてくれていた存在で、本当に『家族の太陽』みたいな存在だったなとすごく思っています」

■「1勝」が遠い…引退を決意

 リオオリンピックに続き、姉妹で出場した東京オリンピックでも、一度も勝利を掴むことができませんでした。オリンピックでの「1勝」が遠い中、2022年2月、葉月選手は引退を表明します。

 しかしその半年後、現役復帰を決意します。原動力となったのが、千治さんの言葉でした。

<葉月選手のメッセージ(2022年)>
「色々ありましたが、またホッケーを頑張ろうと思います!できればパリまで。おじいちゃんの残してくれた言葉を忘れず頑張りたいと思います」

■祖父の言葉を信じ、自分も仲間も信じて戦った

 迎えた姉妹で3度目のオリンピック。ここまで3連敗で、地元のフランスを相手に、葉月選手の絶妙なパスから決勝点をあげ、見事12年ぶりの白星をあげました。

 葉月選手は試合後、LINEで思いを綴っています。

<葉月選手のメッセージ>
「リオからここまで勝つことができず、ずっと苦しかったけど、諦めずに戦い続けてきて本当によかったと思います。私のおじいちゃんがくれた言葉『信ずる者に勝利あり』、自分自身を信じて、仲間を信じて戦って来られてよかったです」