きせかえ顔文字キーボードアプリの会社が「Z世代が選ぶ好きな給食のメニュー」について、アンケートをしたところ、1位は「揚げパン」でした。

揚げパンは約70年前に、東京都大田区の小学校で始まったメニューでしたが、誕生のきっかけは子供たちのことを思う愛がありました。

しかし「揚げパン」が出ない地域もあり、名古屋市もその1つで、市に理由を聞いてみました。

■給食人気メニュー1位の“揚げパン”…「出なかった」という声も多数

 きせかえ顔文字キーボードアプリの「Simeji」が10歳から24歳の男女785人に聞いた「Z世代が選ぶ好きな給食のメニュー」では、1位「揚げパン」、2位「フルーツポンチ」、3位「カレーライス」、4位「冷凍みかん」、5位「鶏のから揚げ」、6位「わかめご飯」、7位「ミルメーク」、8位「ラーメン」、9位「ABCスープ」、10位「カレーうどん」という結果でした。

【動画で見る】好きな給食1位との調査も…なぜ『揚げパン』は名古屋市立の学校で出されないのか 市教委から“2つの理由”

1位 揚げパン
2位 フルーツポンチ
3位 カレーライス
4位 冷凍みかん
5位 鶏のから揚げ
6位 わかめご飯
7位 ミルメーク
8位 ラーメン
9位 ABCスープ
10位 カレーうどん

1位となった「揚げパン」は給食の人気メニューとしてよく聞きますが、出されない市町村もあるなど、地域差があります。

名古屋の街で、給食のメニューに揚げパンがあったかどうかを聞きました。

愛知県常滑市出身の19歳:
「出ました。めっちゃ人気、好きでした」

一緒にいた愛知県東浦町出身の19歳:
「出た出た。取り合いだった」

人気メニューだったという地域の人もいましたが、逆の声もあります。

愛知県西尾市出身の女性(44):
「出てなかったよね」

一緒にいた西尾市出身の女性(42):
「出てなかったです」

愛知県一宮市出身の女性(26):
「出なかったんですよ。テレビで見て知って『え?同じ愛知なのに』ってなりました」

一緒にいた一宮市出身の男性(24):
「出たことないですね」

愛知県名古屋市出身の男性(19):
「揚げパンなかったです、僕の学校。食べたかったです、めっちゃ」

揚げパンはでなかったという声も多くありました。

東海3県の県庁所在地では、名古屋市は出されず、岐阜市や津市では出されているということです。

■名古屋の公立学校で「揚げパン」が出されない理由

 名古屋市の公立小学校の給食には、子供たちに人気のメニュー「揚げパン」は出されたことはわかりません。教育委員会に聞くと、2つの理由がありました。

1つは、バランスの良い給食にするためです。市の基準に「1回の給食で摂取エネルギーに占める脂肪エネルギーを40%未満にする」というものがあり、油を多く含む揚げパンを献立に入れると、メニューが、組み立てにくくなってしまうからということです。

もう1つの理由は「手間」です。名古屋市では、給食を各学校で作っているため、揚げて砂糖をまぶす“揚げパン”は、手間と時間がかかり、間に合わなくなるためとしています。

■揚げパンの発祥は約70年前…小学生のために調理師が考えた“愛”

 ひと手間かかる揚げパンですが、誕生した背景には子供たちのための愛に満ちたひと手間だったことがわかりました。

揚げパンが生まれたのは、東京都大田区の嶺町(みねまち)小学校です。

昭和27年(1952年)ごろ、インフルエンザで休む児童が多く、栄養をつけてもらうために、欠席した子供に友達がパンを届けてあげる慣習がありました。

しかし給食で出されていたコッペパンは乾燥しやすく、すぐに固くなってしまいます。

そこで調理師の篠原常吉(つねきち)さんが考え、固くならないようにコッペパンを油で揚げて表面に砂糖をまぶす=「揚げパン」を開発して乾燥を防ぐことに成功し、子供たちにおいしいパンを届けてあげることができたということです。

今も大田区の給食の名物として、揚げパンは提供されています。

■“揚げパン専門店”も登場…昭和と違いお洒落に進化

 揚げパンは今、再注目されています。2024年4月にオープンした愛知県日進市の「洒落CAFE(シャレカフェ)」は、揚げパン専門のカフェです。

厨房では、コッペパンがサラダ油の中へ投入され、片面を2分ずつ揚げて、いい色になっていました。

出来上がりを食べてみるとカリカリで、懐かしい味がします。

洒落カフェのオーナー:
「低温でじっくり長めに揚げることによって、サクサクの食感で、中はふわふわっていうのを実現できているのかなと」

実際にナイフを入れると「ザクザクザクッ」といい音がします。

お客さんはフォークとナイフを使って揚げパンを食べていました。

女性客:
「2回目です。美味しいですめっちゃ」

一緒にいた女性客:
「給食は揚げてお砂糖がかかっているだけだけど、(このお店は)クリームとかソフトとかのっていて、しかもフォークとナイフでお洒落な感じ」

アイスを乗せたり…。

マロンクリームを乗せてモンブラン風にしたり…。

グラニュー糖をバーナーで焦がしてブリュレ風にしたりと、進化した揚げパンです。

もともと福岡県に1号店を出し人気となり、2024年、愛知県日進市に2号店を出店したということですが、なぜ、揚げパン専門店を作ったのでしょうか。

洒落カフェのオーナー:
「(看板商品に)何が良いのかなと考えた時に、みんな満場一致で“給食の揚げパン”というのが面白いんじゃないかということで。昔ながらのイメージがあると思うんですけど、現代風にアレンジした形になっています」

共通の話題、学校給食の話が出て、みんな大好きだった揚げパンを看板メニューにしようとなったということです。

今回、撮影に訪れたのは夜の8時でしたが、夜にハイカロリーという背徳感もあり「ごほうびに」と食べに来る人が多いといいます。

女性客:
「日頃頑張っているので、ご褒美に。知っている揚げパンよりもサクサクしている感じで、おいしかったです」

「洒落カフェ」は平日午後1時から夜中の2時まで、土日は午前10時から夜中2時まで営業しているということです。

2024年7月12日放送