台風10号による大雨は、東海地方に大きな被害をもたらしました。岐阜県池田町では川が氾濫し、広範囲にわたって浸水しました。なぜ起きたのか、現地で専門家に聞きました。

 今回の台風10号は、東海地方に最も接近した週末には風の勢力は弱まりましたが、台風に伴う大雨は各地に大きな被害をもたらしました。

 8月31日午後2時前、三重県北中部で線状降水帯が発生。

 午後1時過ぎの三重県津市では、非常に強い横殴りの雨が降り、道は足首ぐらいの高さまで冠水していました。

 午後2時までの1時間に、大紀町藤坂峠で67ミリ、松阪市粥見で45.5ミリの大雨が降り、多気町を流れる佐奈川が氾濫しました。

【動画で見る】1時間73ミリの激しい雨…「河川氾濫×内水氾濫」で被害拡大か 岐阜県池田町の住宅地等で起きた広範囲の浸水

 岐阜県大垣市の赤坂東地区では、警戒レベルで最高となる5の「緊急安全確保」が発令され、大量の雨に対して排水機能が追い付かない「内水氾濫」などが原因となる浸水被害が発生しました。

 大垣市の北に隣接する池田町では、町内を流れる杭瀬川と東川の合流点付近が氾濫。岐阜県によると、住宅地などおよそ50ヘクタールで浸水が確認されました。

 消防団のボートで、孤立した住宅から助け出される人の姿もありました。

救出された住民:
「ここに40年ぐらい住んでいますけど、ここまで(水が)上がってきたのは初めてです。東川から越水して水が流れ込んだということが今までにもありますけど、ここまでひどいのは初めてですね」

 この影響で、杭瀬川の流域に住む人など33世帯75人が避難。2日午前、池田町の浸水被害があったエリアには、川から大量の草木が道に流れ着いていました。

 こうした被害が出た理由について2日、浸水被害のあった池田町で、岐阜大学の原田守啓准教授に聞きました。

原田守啓准教授:
「まさに目の前に水路がありますけれども、目の前の一番低いポイントに最後、水が全部集まっていって排水されるようにうまいこと作ってあるんですよ。ただ今回は遊水地に水が入り始めて満杯になって、さらにそこから1時間に70ミリぐらいのとんでもない雨が降りましたから、とても川の中にため切ることができずに、川から外に水があふれ出してしまった」

 池田町に設置された雨量計によると、8月31日午前11時20分までの1時間に降った雨は、73ミリと時間雨量としては過去最大を更新しました。

原田守啓准教授:
「杭瀬川だけではなくて、降った雨が低い土地に集まってしまって浸水する『内水氾濫』も同時多発的に起こっています」

 原田准教授は、記録的な大雨により町内を流れる杭瀬川と東川の合流点付近で氾濫が起き、さらに同時多発的に『内水氾濫』が起こり、被害が拡大したとみています。

 今回浸水被害が発生した西濃地域は、山と川の堤防などにはさまれ、緩やかな勾配がある土地が低い地域でした。

 川の水位も上がるなかで、1時間に70ミリ近い大量の雨が降ったため、雨水が川に排水できずにあふれる内水氾濫も同時多発的に発生したといいます。

 この浸水被害、原田准教授は「雨雲の動き次第で、他の地域でも同様の被害の可能性があった」と話します。

原田守啓准教授:
「今回の雨が仮に少し東の方にそれていたら、例えば岐阜市や羽島市、木曽川の向こう側の愛知県の方にもし雨雲がかかっていたとすると、同様の大きい浸水被害が起きたとしても何ら不思議はない、非常に激しい雨の降り方だった。今回たまたまこの地域に雨が降りましたけれども、同じような被害やもっとひどい被害が愛知県の方で起こっていても、何ら不思議ではなかったと考えています」

 愛知や岐阜に広がる濃尾平野では、堤防や自然堤防に囲まれた低い土地が多く、降った雨がはけにくい特徴があるといい、同様の浸水被害がどこで起きても不思議ではないといいます。

原田守啓准教授:
「今回被害が発生してしまった岐阜県の西濃地域は、今も水田や農地が多く残る自然豊かな地域です。それだけ雨水が染み込んだりたまったりする場所が比較的多いエリアであっても、これだけの被害が出てしまった。もし同じ雨が、より開発が進んだ愛知県の都市部に降った時には、よりたくさんの水が一斉に川や排水路に集まってしまい、浸水被害もより大きくなることが予想されます」