クレジットカードを不正に利用される被害が後を絶たない。2023年1年間の不正利用額は、540億円以上で、過去最悪の被害で年々増加している。中には手元に届いたものの開封していないカードが使われているケースもあり、AIで不正を判定する業務を提供する企業も登場している。

■封すら開けていないクレジットカードが不正利用の被害に

40代女性:
「1285円とか半端な金額が明細の中にのっていたので、(夫に)『なにこれ?』と言ったら『知らん』と言うから、問い合わせたら『多分これ不正利用ですね』って」

20代男性:
「3万とか4万とか(使われていた)。ネットのショッピングと(問い合わせたら)言っていました。(心当たりは)全くない」

日本クレジット協会によると、クレジットカードの不正利用額は年々増加傾向にあり、2023年は、1年間で540億円を超え、過去最悪の被害となった。

【動画で見る】“未開封のカード”を使われるケースも…被害額は過去最悪の540億円超クレジットカード不正利用の実態と対策

50代のAさんは、カードの明細を確認していると、身に覚えのない引き落としを見つけた。

過去の明細を調べてみると“妙な引き落とし”は、7カ月間で総額46000円ほどだった。1つ1つの金額は大きくないが、Aさんにはさらに驚いたことがあった。

不正利用されたカードは、普段持ち歩いていないどころか自宅に届いてから封すら開けていない状態だったからだ。

一部のサイトでは、カード番号・有効期限・3~4桁のセキュリティコードの組み合わせでカードの利用が可能だ。

これらは数字の羅列のため「Bot」(ボット)という数字の自動入力ツールで、いずれヒットしてしまうことがある。

仮に厳重に金庫に入れていたとしても、被害に遭う恐れはある。

■企業が狙われるケースは「二重の損失」になることも

 狙われているのは、カードの「持ち主」だけではない。愛知県豊橋市にあるペット用品店「トムキャット向山店」は、店舗を構えるかたわら、ネット注文による販売も展開している。

トムキャットの担当者:
「短期間に3回。金額がどんどん上がってきている感じ」

まず42840円、次は68900円、その次が72400円。同じ名義のカードから数日の間、立て続けに入った高額の注文で、これらはすべて「不正利用」によるものだった。

トムキャットの担当者:
「名前見てもらうと『絵香』=(ふりがなが)『エコ』になっているんですよ。これで「エコ」って読まないですよね。普通で読むと。『不正でしたよ』という連絡がきて、高額だったりとか、同じ商品をいっぱい買うとか、そういうので気付けなかったのかなというのが反省ですね」

発送した商品は、総額18万円以上にのぼるが、戻ってこないという。

トムキャットの担当者:
「うちとしては送料分と商品代が、弊社負担になってしまう。損害になりますね」

ネット注文では、クレジットカードでの入金確認後、「購入者」の元へ商品を発送する流れだが、不正利用と判明すれば、事業者側が商品の代金と送料を返金することになるうえ、“謎の人物”に発送した商品は返ってくることがないため、販売側にとってはお金と商品の「二重の損失」になるという。

騙されたくはないものの、トムキャットが1カ月に受ける注文は、およそ2000件だ。1つ1つ確認するのは、時間も手間もかかる。

トムキャットの担当者:
「怪しそうな人の場合は、地図上で、ストリートビューとかで住所を確認したりとか。今まで配送先がビルのゴミ捨て場だったりとか、空き地だったりというのもあったんですよ。そういうところで目視で判断というのは限界があると思います」

■大切なのは「やっぱり明細確認」…AI使った不正検知サービスを提供する企業が指摘

 不正利用を人間の目で見破るのは難しいが、対策を打ち出し、実績を上げているのが東京都港区の「かっこ」という会社だ。

かっこの担当者:
「エンドユーザー様が注文したタイミングで、0.5秒以内に審査結果を返却して『NGでとっても怪しい注文です』と結果を返すと注文を受け付けなくして買えなくして頂いて不正注文を防ぐ仕組みです」

秘密は、自社で独自に開発した「AI技術」だ。通販サイトでの膨大な注文の中から「不正」を検知し、被害を未然に防いでいるという。

AIによる判定は、不正のリスクが高いとする「NG」、問題なしの「OK」、怪しいと疑われる「REVIEW」(レビュー)の3段階で、実際に「NG」と判定した注文者の情報を見せてもらった。

不審な住所の情報では、「埼玉県川口市」のあとに6桁の数字などが並ぶ。

かっこの担当者:
「ごまかすために部屋番号みたいなのをいろいろつけているような気がしますね」

かっこの担当者:
「けっこう不正を行うユーザーが日本人のフリをしているけれど、実は外国人ということがよくあって。「中山」という漢字を使っているけど、読めないので『チュウザン』とか。適当に『ア』とかフリガナ入れていることがあるので、そこは苗字とフリガナが一致していないという判定をしています」

本人であればまずありえない間違いだが、「非対面」のネット通販では、こうした注文でも決済まですり抜けてしまうこともあるという。

不正とみられる個人情報のケースはほかにもある。

かっこの担当者:
「電話番号とかメールアドレスが一致しているけど、住所が違っているとか、名前がカタカナのみとかいう要素もある。他の加盟店さんで不正と判定した取引情報と住所は一致しなかったが、電話番号が一致していたとか」

システムを販売しているおよそ11万のECサイトと提携し、注文した人の住所や電話番号などの情報を分析。怪しい部分がないかだけでなく、他のECサイトで『不正利用』と判定された注文者情報が含まれている場合も、AIが識別するという。

豊橋市のペット用品店「トムキャット」も、このシステムを導入して以降、不正利用による被害は一切なくなったと話す。

しかし、「Bot」のような不正利用のツールで活用されているのもAIで、悪事と対策は、常にいたちごっこ状態だ。

クレジットカードの国内での発行枚数は3億枚以上で、大人1人あたり3枚は持っている計算になる。不正被害防止には「手軽さ」の反面、リスクを背負っていることの自覚が必要だ。

かっこの担当者:
「やっぱり明細チェックですかね。使われると都度連絡が来るように設定できるかなと思うので、身に覚えのないタイミングで使われていたらよく確認することかなと思います」

スマホやパソコンで見つけた「欲しいもの」は、カード決済で簡単に買える便利な時代だからこそ、注意が必要だ。

2024年6月28日放送