10月9日、衆議院が解散し、事実上の選挙戦に突入しました。野党は裏金問題で逆風の自民党を切り崩したいところですが、勢力を結集する野党共闘はなかなか難しいようです。“勝手に野党共闘”と銘打って支援を呼びかける新人候補もいます。

■難しい「野党共闘」…3年前の事態へのアレルギーも

 衆議院が解散し、あわただしく突入した事実上の選挙戦。三重県四日市市の一部や、鈴鹿市などが選挙区の三重2区では、解散前から立候補予定者たちが活動を進めていました。

自民党の前職 川崎秀人さん:(10月6日)
「新たな自民党を打ち出していかなければいけないというところの使命感は今、ものすごく感じています」

自民党の前職、川崎秀人(42)さんは、曾祖父の代から衆院議員を務め、祖父、そして父の川崎二郎さんも大臣経験者という政治家一家の“4代目”です。

【動画で見る】“勝手に共闘”進める新人も…27日投開票の衆院選『野党共闘』の行方 3年前の前回とは異なる背景と事情

川崎さん:
「世襲世襲って呼ばれたり、あるいは『父の背中を見て育った』みたいなことを言ってくださる方もいらっしゃるんですけど、全然そんなことなくてですね。1人の政治家として模索、試行錯誤しながら立っているという感じです」

強固な地盤を引き継ぐ自民党候補。野党は、その牙城を崩したいところですが、立憲から下野幸助さん(新人 47)、維新から森口あゆみさん(新人 59)、共産から山本里香さん(新人 66)の3人が立候補を予定していて、“野党共闘”とはなりませんでした。

維新の森口あゆみさん:(10月6日)
「政党の都合はあるかもしれませんけれども、基本的にはそういうこと(野党共闘)であってもらいたくないというのが私の考えですね」

共産山本里香さん:(10月6日)
「(野党共闘は)政治を変える大きな力になっているのは確かなんですけれども、(政策など)一致点があって、共通の物事ができれば、それはやぶさかではないです」

立憲の下野幸助さん:(10月7日)
「いろいろな政党が出るということは、票は割れると思うんですが。私の思いや政策を訴えて共感をしていただける方を1人でも…」

野党が乱立すればするほど票が分散し、与党候補のプラスに。それぞれジレンマを抱えていますが、その背景にあったのは、前回2021年の衆院選です。

立憲の枝野幸男元代表:(9月1日)
「そもそも目指す社会が違うのに、あまりガッチリと組むということは、我々が目指すものが見えにくくなるという状況を作ってしまったという意味では、ものすごく“反省”しています」

3年前は野党共闘が実現し、共産党を含む5つの野党(立憲・共産・国民・れいわ・社民)が多くの選挙区で候補者を一本化。

しかし立憲は、議席を14も減らし「野党共“倒”」と揶揄されました。

今回「裏金問題」で自民党に逆風が吹くなか、野田代表は野党候補の一本化を呼びかけました。

立憲の野田佳彦代表:(10月3日)
「裏金議員の選挙区については、なるべく候補者を絞っていた方が野党側が勝てるチャンスが出てくるので、そういう協力をしませんかと」

愛知県の場合、前回、事実上の与野党一騎打ちとなった選挙区が8つありました。しかし3年前に招いた事態へのアレルギーもあり、今回はこれまでのところ1つもありません。

■愛知10区では“勝手に野党共闘”の異常事態

 そんななか、一宮市と岩倉市が選挙区の愛知10区では、異常な事態となっていました。

立憲の藤原規真さん:(10月4日)
「私は立憲民主党の所属です。しかしこの地域で、日本共産党さんや社会民主党さんとこうして一緒にマイクをとらせていただいています」

共産と社民の地元市議らとともに街頭に立つのは、立憲の新人で、弁護士の藤原規真さん(46)です。

自民の新人候補も立候補を予定している愛知10区で“難しい”野党共闘が実現、と思いきやその胸元には“#共闘しすぎ”と書かれていました。

藤原さんは2023年11月、名古屋市内で共産の立候補予定者と街宣車に乗って街頭演説をしたことが立憲の党内で問題になりました。

岡田克也幹事長(当時)から注意を受けましたが、『共闘しすぎで立憲民主党が新人を注意』と報じた東海テレビのニュースを見た藤原さんは…。

藤原さん:
「(ニュースを見て)ぴったり合致しました、(共闘)しすぎて悪いかみたいな感じで。東海テレビさんの許可も頂かず使っているのでちょっと、あとで謝ります(笑)」

党本部が “共闘”に慎重な姿勢を示す「共産党」などと、まさに“勝手に野党共闘”を進めています。

Q立憲の議員とよく飲みに行ったりしますか
藤原さん:
「しているみたいですね…僕は誘われないですけど。(党内で)結構浮いているんですよ」

党内で“浮いている”と自認する藤原さん。党の執行部に抜擢された重徳和彦政調会長に対しても…。

藤原さん:
「重徳さんから電話かかってきたときに『お前国民とはやってるんじゃないかよ、国民民主は良くて共産とはダメっていう論拠示せよ』って言った。ベテランで4期やっている人に対して『弁護士(の自分)が納得するようなこと言ってみろよ』って。その日以来電話かかってこなくなりました(笑)」

■“勝手に野党共闘”を進める理由…共産党員も「寂しさはあるが…」

 なぜ、そこまでして“勝手に野党共闘”を進めるのか。

藤原さん:
「前回の反省っていうのがすごく大きかったんですね、共産党さん、れいわ新選組さん。 票を足したら、(前回)当選された自民党さんの票を上回る」

前回の選挙で野党統一候補が立った選挙区が多くみられたなか、愛知10区では、藤原さんを含む4人の野党候補が乱立。

自民の現職が勝利したものの、立憲・共産・れいわの候補が得た票を足し合わせると自民候補の得票を上回っていました。

10月6日、藤原さんのチラシを配っていたのは、共産党員や市民団体のボランティアです。そのホンネは…。

共産党員の男性(80代):
「(共産党の)党勢は弱いよ、本当に。しかも高齢化しているしね。僕らが現役ではね。多少はプラスになるかもしれんけど、あくまでも立憲民主党の藤原さんだからね。気持ち寂しさはあるにしても、それよりも本当にこのままでいいかという思いのほうが強い」

■「勝ち切らなければ…」“共闘ダメじゃないか”と印象与える可能性も

 まさに“大同小異”で、自公政権に勝負を挑みますが“勝手に野党共闘”のハレーションは大きいようです。

藤原さん:
「風当たりは強かったですね。相当強かった。愛知は連合さんがやっぱり日本で有数の強いところなので、連合さんの支援を受ける政党として、支部長の藤原のやり方はどうなんだっていうのはすごく俎上に上がったみたい」

立憲の最大の支持母体である「労働組合」。その中央組織「連合」の組織的支援は選挙に欠かせませんが“勝手に野党共闘”を進めている藤原さんは、その理解を得られないと判断。

前回と異なり、今回は「連合」に推薦の依頼をしないという、異例の選択をしました。

連合愛知の可知洋二(かち ようじ)会長に話を聞きました。

連合愛知の可知洋二会長:
「藤原さん自身の考えのもと、連合の方針と異なるということであろうと思いますので、そこに対して私たちから『ぜひ推薦を要請してくださいよ』という話をする必要性はないと思います」

Q共産党などとの野党共闘について
「端的に言えば、目指す社会が異なるという、単純に政策も異なってくるはずです。私たちは目指す社会が異なっている団体から支援を受ける候補者を推薦しない、支持しない、支援しないと決めていますので」

藤原さん:
「当然互いに相いれない面っていうのはどうしてもあるんですね。ただ、 最大公約数は取れると。共闘っていう形でこれだけ大々的にやっているので、こだわっているのはやっぱりどうしても小選挙区で、比例の枠に頼らずに勝ち上がりたいっていう思いはすごく強い。ここまでやったからには勝ち切らないと、皆さんが見ている中で『市民と野党の共闘ダメじゃないか』という印象すら与えかねない勝負だと思っています」

愛知10区にはこのほかに自民党の新人、若山慎司さん(51)、日本維新の会の前職、杉本和巳さん(64)の立候補が見込まれています。

“野党共闘”の行方は…。衆院選は10月15日に公示され、27日に投開票です。

2024年10月9日放送