愛知県東浦町で11月10日、自宅で倒れていた男性を救急隊員がすでに死亡していると判断し、病院に搬送しないミスがありました。男性は当時まだ生存していましたが、その後死亡しました。

■救急救命士が死亡確認も…「指の動きが」

 12日午後に会見を開いた知多中部広域事務組合消防本部によりますと、10日午前9時半ごろ、東浦町にあるマンションの管理人から「新聞が溜まっている」と119番通報がありました。

【動画で見る】ミスはなぜ起きたのか…救急救命士が生存男性を「死亡状態」と判断し搬送せず 警察官が気づき搬送も死亡

救急隊が出動し、20代と30代の救急救命士が部屋に入り、浴室の洗い場で倒れている70代の男性を発見しましたが…。

半田消防署の小林満署長:
「意識の確認の時に、胸骨の所に痛み刺激を与えても反応がなかった。続いて呼吸の確認をして、呼吸が感じられなかった。明らかな死亡状態と判断しましたので、10時05分、救急隊以外の隊は順次、引き揚げを開始しております」

しかし、男性は死亡していませんでした。

現場検証をしていた警察官が「指の動きがある」と消防に通報しました。男性は最初の通報からおよそ2時間後に病院へ搬送されましたが、その後死亡しました。

■慎重さ求められる「死亡確認」 医療現場では…

 あってはならないはずの判断ミスは、どうして起きてしまったのでしょうか。

中川区にある名古屋掖済会病院。多くの患者が運ばれてくる救命救急センターでは、死亡確認を慎重に行っています。

名古屋掖済会病院の小川健一朗医師:
「まず、首の横に頸動脈という動脈がありますので、触って脈を確認します。また胸の動きを見たり、鼻と口辺りの空気を感じて呼吸がないかをみる。これをみる時に、基本的には『10秒かけろ』となっています。心臓がとてもゆっくりであったりとか、呼吸がとてもゆっくりな場合、2~3秒みただけだと、間違って死んでいると判断してしまう可能性がありますので」

死後硬直が疑われても、持病によって体の一部だけが硬くなっている場合があるなど判断は難しく、聴診器や心電計などの機器を使うほうがより確実だといいます。

小川医師:
「(救急隊員の死亡確認は)かなり厳しい項目数になっているとは思うんですけれども。脈の確認、呼吸の確認というのが少し甘かったとか、何かの確認が甘かったことによってすり抜ける可能性はあるのかもしれないかなと思いますけど」

■死亡確認後に呼吸…過去にも判断ミスが

 前代未聞にも思える今回の判断ミスですが、6年前にも大阪市で救急隊員が70代の男性を死亡したと判断し、その後、警察官が呼吸に気付いたケースがありました。

総務省消防庁はこのとき、「明らかな死亡」の判断基準を示したうえで、先入観を持たず、迷った場合は医師に連絡することなどを求めていました。

消防は、判断ミスと死亡との因果関係は答えられないとしていますが、遺族に謝罪し再発防止に努めるとしています。