働き控え増える恐れも…生涯現役目指す高齢者に“年金50万円の壁” 専門家は「就労意欲と人手不足の双方に負の影響」
12月13日は、2024年の最後の年金支給日です。国会ではいま「年収103万円の壁」が注目されていますが、もう1つ知っておきたいのが『年金50万円の壁』です。
■半額が差し引かれる…悩ましい『年金50万円の壁』
Q.年金暮らしはどう?
76歳:
「全然大変。現役時代にもらったものはみんな使っちゃったから」
Q.何歳まで働きたい?
販売業の63歳:
「働けるうちは。一番はお金だよね。コロッと死ねればいいけど、そうじゃなければお金かかるでしょ」
街で高齢者に話を聞くと、「老後のお金」について心配している人が多くいました。生涯現役で働きたい、しかしそんな人々を悩ませる「年金の壁」があります。
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石破首相(11月29日):
「いわゆる『103万円の壁』については、令和7年度税制改正の中で議論し引き上げます」
今、国会では「年収103万円の壁」が議論されていますが、他にも106万円などさまざまな壁が注目されていて、その1つが『年金50万円の壁』です。
『年金50万円の壁』とは、65歳以上で1カ月の厚生年金と賃金の合計が50万円を超えた場合、超えた額の半分が差し引かれることです。
例えば、厚生年金が20万円で賃金が40万円の場合、超えた10万円の半分、5万円が年金の支給額から減らされます。
保険業の64歳:
「(来年)私も超えちゃうんで。壁はない方がいいですよね」
販売スタッフの50代:
「年金だけの生活って、物価がすごく上がっているこのご時世じゃ無理ではないですかね」
■再雇用拡大しても働き控え増える恐れ
高齢化が進んでいますが「人手不足」も深刻です。トヨタ自動車も2024年8月から、65歳以上の再雇用を全職種に拡大しました。
しかし、内閣府の調査では「年金が減らないように調整して働く」と答えた人が44.4%にのぼり、「働き控え」が増えるおそれがあります。
愛知県西尾市の自動車部品メーカー「オティックス」では3年前、60歳以降も再雇用で働く人の給与を、退職前の年収の8割から9割になるよう待遇を改善しました。
66歳の安藤伸明さんは、自ら工作機械の組み立てをしながら若手への指導もしています。
安藤さん:
「楽しいですよ。好きなことをやっているもんで。年金だけだとなかなか生活も厳しいもんで、働いて収入も必要かなと」
従業員は約1350人で、60歳以上の従業員は現在およそ50人ですが、2040年には170人に増える見込みです。
オティックスの中村守道総務人事部長:
「われわれは『60歳の崖』という表現をしていたんですけど。『なんで同じ仕事をやっているのに給料が下がるんだよ』というのに対して、59歳の時と同じとまではいきませんけど、他社さんと比べても遜色ないように設定させていただいています」
■専門家「50万円の壁は高齢者と企業双方に負の影響」
待遇を見直しても懸念されるのが「年金の壁」です。現在63歳の菊永弘幸さんは夜勤なども行っていて、年金の受給が始まると50万円の壁に達する可能性があります。
菊永さん:
「やっぱり(壁は)なくしてほしいなと思いますけど。(再来年は)考えちゃうかも分からないですね。働いて年金がカットされるなら辞めようかなとか。(時間の)融通が利くなら、上の人と相談してやりたいなとは思いますけど」
中村守道総務人事部長:
「組織運営をする上では(50万円の壁)廃止もしくは引き上げについて、どちらかというと賛成ですかね。65歳以上でも技能を持った方、元気な方に働いていただこうと会社が舵を切った時に、今の『50万円の壁』は越えてくる可能性がありますので」
高齢者の働き控えを防ぐため、見直しが検討される年金50万円の壁。専門家は…。
第一生命経済研究所の谷口智明研究員:
「『年金50万円の壁』というのは、高齢者の就労意欲と企業の人手不足、双方に負の影響を与えているのではないかと考えられております。そういった背景から、今回この見直しをしようという動きにつながっていると思います」