
東日本大震災から2025年3月11日で14年となった。能登半島地震でも大きな被害をもたらした液状化現象は、南海トラフ地震でも広い範囲で発生すると予想されている。専門家は大地震で液状化が起こりやすい地域を把握し、対策する必要性を呼びかけている。
■液状化で“ゆがんだ”町…復旧のめど立たず
2024年の元日に発生した能登半島地震で、石川県内灘町は液状化の大きな被害を受けた。
【動画で見る】南海トラフ地震でも想定される“液状化の恐怖” 疑似体験では一瞬で足が沈む 80年前の経験者「地面から泡がブクブクと…」

内灘町では住宅などあわせて3690棟の建物に被害が及び、1年以上が経っても液状化で浮き上がったマンホールや、傾いた電信柱、隆起した家の土台などが残されたままだ。

西荒屋地区の蛭児(ひるこ)神社は、かつて祭りにも使われ、町の人が集う場所だったが、能登半島地震で地下水が湧き出し、ゆがんだ鳥居や階段などは撤去せざるを得なかった。

ひび割れた階段の下には、地震で地面から湧き出した水があふれ、泥だらけになっている。現状ではすぐに復旧できず、神社として使うのは難しいという。

他にも、地面が押し出されて使えなくなった児童公園など、液状化による被害の爪痕は、いたるところに残されている。
内灘町民の男性:
「(液状化に)なったときからあんまり変わってない。路盤も直らないし、下水もまだ。解体が進んだり道路の仮復旧はしているけど、これからだと思う」
別の町民の男性:
「見ての通りこんな状態やで。わしらの時代にはもうここは直ると思っとらんから、うちの子供たちがここで暮らせれば、それはそれでいい。みんなで我慢するしかない。天災やもん」
■砂の粒は沈み水が上昇…液状化現象のメカニズム
液状化現象は2011年の東日本大震災や、2018年の北海道胆振東部地震などの大地震でも発生した。映像には泥に足を取られ、歩くこともままならない人の姿が残されていた。

一般的に地盤は、砂の粒と水が混ざり合ってバランスを保っている。しかし地震で揺れると、砂の粒と水が分離して砂の粒は沈み、水は上昇する。

その結果地盤が弱くなって、地上にあったビルや家屋が沈下し、地中にあったマンホールが隆起するなどの被害が発生する。

これが液状化現象のメカニズムだ。
■名古屋の都心部も…巨大地震で液状化の危険
液状化現象に詳しい名古屋大学大学院工学研究科の野田利弘教授は、砂地盤でゆるくて、地下水が豊富な場所で、液状化が起きやすいという。

愛知県の液状化の危険度を示したハザードマップでは、赤で示されるエリアが最も液状化の危険度が高く、名古屋市の都心部も含まれている。

野田利弘教授:
「名古屋駅のところを見てみますと、非常に液状化の可能性が高い場所ということができます。地表面に砂がゆるく堆積していて、河川があって、非常に水が潤沢にある場所だと。濃尾平野も、岡崎平野も、豊川平野も過去に液状化が起きています」
■80年前でも忘れられない…液状化を体験した女性
液状化現象は、過去の南海トラフ地震でも起きていた。1944年12月7日に発生した昭和東南海地震では、三重県などで最大震度6を記録し、東海地方を中心に1200人以上が犠牲となった。

三重県桑名市に住む伊藤さなゑさん(88)は、当時、実際に液状化現象を経験した。長島村国民学校(現在の長島中部小学校)2年生だった伊藤さんは、授業中にそれまで経験したことがないような大きな揺れを感じた。
伊藤さなゑさん:
「裸足で飛び出したわけですが、足が入っていくの。割れちゃって地面がね。ずーっともうひっきりなしに割れちゃって、泡ブクブクブクブクと吹いて、本当にあんなの初めてだった」

80年以上も昔の記憶だが、伊藤さんがきのうのことのように何度も繰り返したのは「怖かった」という言葉だった。
伊藤さん:
「(グラウンドへ)全員集合。その間ずっと泡は吹いていました。沈まないように足を動かしてね。とってもまあ怖かったです。よく『三つ子の魂(百まで)』というけどね、あの時の怖かったことは本当に…。またあのような地震が起きるかもわからない。みんなが常に頭の中に、いつ起きてもいいように、気構えだけはしておいてほしいなと思います」
■足が沈んで抜け出せない…液状化現象を”疑似体験”
液状化現象の恐怖を実際に体験できる施設がある、福岡県北九州市の観光施設「関門海峡ミュージアム」だ。

この施設には、2024年から液状化した状況を作り出せる装置が設置されている。

砂浜のような細かい砂に下から空気を送り込むことで、地面が液体のように変化する。バスケットボールを置いても、液状化すると水に浮いたようになり、手で押すと簡単に沈んでしまう。

ゴーグルをつけ、ゲリラ豪雨で道路が冠水した想定のAR映像を見ながら歩くことで、液状化現象を疑似体験する。

液状化が始まると、踏みしめても沈まなかった砂に一瞬で足が沈んでしまった。体験した記者は「急に地面に落とし穴が空いたような感覚で、砂が足を締め付け、急に海に放り出されたようだった」と話す。

液状化が止まると、砂にはまった状態になり、抜けだそうとしても体を倒すこともできなくなった。地面が固まってしまい、片足を抜くだけで精いっぱいだった。

実験装置の担当者:
「体験していただいた方には(恐怖を)理解していただけると思うんですけども、なかなか自分ごとにならないと思うんですよね。人ごとと絶対思わないでいただきたい。自分ごとと考えていただいて、災害に対する備えを進めてほしいと思います」
東海地方には、大地震が発生すると液状化現象の危険度が高い地域が広く存在する。液状化による影響は、建物・道路の傾きだけではなく、通行が妨げられることによる避難の遅れや被災者の孤立のほか、復旧に時間がかかることで、被害が長期化するおそれもある。

名古屋大学の野田教授は、過去に液状化現象が発生した地域は、特に注意するべきだと指摘する。
野田利弘教授:
「1回起きた場所でも同じ程度の揺れがやってくれば、再び液状化するということができます。自分が住んでいる所がどういう場所かということを(ハザードマップで)確認しておく。余裕があればやはり対策をして、家の耐震化とセットでする必要があると思います」
2025年3月11放送