
名古屋高裁は2025年3月7日、同性婚を認めない民法の規定は「憲法違反」だとする判断を下した。岐阜県関市で暮らす同性カップルの2人は、国の法的保障の不十分さを感じながらも、『誰もが自分らしく生きられる社会』を願いながらLGBTQ+への理解を広げる活動を続けている。
■同性婚認められないのは「憲法違反」 全国に続き名古屋高裁が判決
2025年3月7日、名古屋高等裁判所前に集まっていた多くの人から、歓声と大きな拍手が上がった。この日、同性婚を巡る裁判の判決が言い渡されたからだ。
裁判所に集まった人:
「高裁でも違憲とりました!」
愛知県に住む同性カップル(30代)が、同性婚を認めないのは憲法に違反するとして国を訴えていた裁判で、名古屋高裁は7日、「同性カップルに結婚が認められないのは憲法に違反する」などとして、一審と同様に『憲法違反』の判断を示した。
【動画で見る】同性婚認めずは『違憲』高裁判決相次ぐ中…LGBTQ+当事者への理解の現在地「誰もが自分らしくいられる社会へ」

訴訟は、LGBTQ+の当事者らによって各地で起こされている。これまで全国5カ所、6件の訴訟が起こされ、すでに2審判決が出ている札幌、東京、福岡高裁は、いずれも「憲法違反」の判断だった。
7日、名古屋高裁も続く形となった。

谷村祐樹(たにむら・ゆうき 37)さんと中村文亮(なかむら・ふみあき 37)さんは、原告ではないが、LGBTQ+の当事者として判決を見守るため、裁判を傍聴した。
谷村祐樹さん:
「良かったですね。違憲って言ってもらえました」
中村文亮さん:
「寄り添った言葉で『違憲』と言っていただけましたので、“婚姻できるんじゃないか”っていうのが本当に見えた内容だったなと思います」
谷村祐樹さん:
「自分自身のことを大切に思える価値観が広まっていくキッカケになるんじゃないかなって」

同性婚を巡る裁判で相次ぐ「憲法違反」の判断。社会でも、性の多様性を受け入れようとする動きが出てきている。
■自治体による制度はすすむも…立ちはだかる「法の壁」
パートナーになって7年の谷村さんと中村さんは、岐阜県関市で7匹の保護ネコと共に家族として暮らしている。
中村文亮さん:
「この子たちで7匹になるね、2匹同時に保護したので」
谷村祐樹さん:
「メープルちゃんです」

2016年、関市は「LGBTフレンドリー宣言」を表明していて、そんな街に魅力を感じ、2人は2024年に移住した。
谷村祐樹さん:
「岐阜県内で同性同士のパートナーシップ制度ができるのが、関市だけだった時期があったので。制度だけでも家族って認めてくださっているところに、できれば住みたいという気持ちはありました」
中村文亮さん:
「自分たちのことを、ちょっとでもやってくださっている市町村にっていうのは話して」

2人は2023年、岐阜県の「パートナーシップ宣誓制度」の第一号として認められた。
制度では、LGBTQ+などのカップルがパートナーシップ関係にあることを自治体が証明する。互いを「家族同等」の存在として、公営住宅の入居や、パートナーを医療機関からの緊急連絡先に指定することなどができる。

すでに450を超える自治体が導入していて、多くのカップルが証明を受けるなど全国に広がっている。
もちろん、この制度だけですべての課題が解消されるわけではない。

中村文亮さん:
「法的な面で言うと、遺言とか」
谷村祐樹さん:
「税金のことも扶養控除も財産とかも、お金に関することとか病気になった時のもしもの事とかについてのバックアップはほとんどない状態。制度の面からも、人の意識の面からも、どっちからのアプローチも大事なんじゃないかなと思います」
■LGBTQ+へ理解広げるために…隠し続けてきた自身の経験もありのままに伝える
中村さんは、関市への移住をキッカケに、市役所に勤めている。
関市の職員として、当事者として、市のバックアップも受けて、中村さんは学校など様々な場所でLGBTQ+への理解を広げるための講演をしている。
カミングアウトした状態で働くことは初めての経験で、これまでの職場で一番気楽だという。
中村文亮さん:
「前は、“異性愛者が前提”だったので、それに合わせないといけないみたいなのがあって。飲み会とか、前の職場だと『結婚しないのか』ってよく言われていたので。“そうじゃないよ”という環境がすごく新鮮というか」

関市にある板取川中学校での講演では、自らのありのままの思いや体験を生徒に伝えた。中村さんは中学生の時、同性に惹かれていたというが、隠し続けていた。
中村文亮さん:
「同性の友人に惹かれることがでてきて、どこにもそういうことが書いてなかった、教科書とか。周りの人にもそういう話を聞くこともなくて。これは“隠さないといけないことなんだ”とすごく思ったんです。皆さんと同じくらいの年だったと思うんですけども。誰か家族ってどんなイメージか答えてくれる人いますか?」
学生:
「自分が心細いなって時とかの、支えになってくれるイメージがあります」

中村さんは他にも、「多様性が尊重される職場づくり」をテーマに、企業などを対象にしたセミナーで講師を務めている。
関市ビジネスサポートセンター 古川恵里さん:
「関市でもまだまだこういうLGBTQ+に関わっている企業さんがどうしても少ないので、そういう職場づくりをしていくために、実体験というか当事者である中村さんに、実際の生の声とか。経験者からお話聞くのが一番早いというか」
中村文亮さん:
「身近にいるんだなとか、自分の職場でカミングアウトがあったらとか、もしかしてしていないけどいらっしゃることがあるのかなっていう疑問や余地が、セミナーの中で生まれたらいいなって思います」

自治体も、性の多様性を受け入れ、環境づくりに向けて動いている。
■“ブームだから”“短期的”ではなく…継続的な取り組みが「意識改革」を生む
性の多様性を受け入れる取り組みは、企業の間でも広がっている。
愛知県瀬戸市の運送会社「大橋運輸」では、就業規則に「多様性に理解の無い差別」を禁止する項目を追加し、エントリーシートの性別欄をなくしたほか、独自の証明でパートナーも福利厚生などが受けられるようなった。

また、男性トイレは「誰でもトイレ」へと変更した。

取り組みを始めたのは2010年頃からだ。トランスジェンダーの当事者が面接に訪れたことをキッカケに、「誰でも働きやすい環境づくり」に力を入れてきた。
大橋運輸の鍋嶋洋行社長:
「すぐに職場の意識って変わらないと思うんですよ。ブームだからやるとか、短期的に集中してやれば終わりというものではなく、継続的に色んな情報を届けることで、少しずつ社内の意識は変わっていったと思います」

いち早く取り組みを進めてきたからこそわかる「意識改革」の難しさ。「当たり前」という意識に変わるまで長い時間が必要だったという。

LGBTQ+の当事者でもある社員の岡田悠志(おかだ・ゆうし 37)さんは、多様性を受け入れる会社に魅力を感じ、2024年9月に入社した。

岡田悠志さん:
「ダイバーシティにすごく力を入れていますっていうのがあったんで応募してみようと思って。結構探しましたね、やっぱり。やっているよっていうところはいっぱいあるんですよ。ただ実際働いてみるとやっぱり全然何もなかったりとか、死のうかなって思ったこともありますし。仕事してて辛くて、もう辞めたいなってこともあったんですけど、この会社来てからはみんな普通に接してくれる」
■「目には見えない“生き辛さ”があった」同性カップルが願うこと
岐阜県関市でパートナーとして暮らす中村さんと谷村さんが願うのは、「誰もが自分らしく生きられる包摂性のある社会へ」ということ、ただ1つだ。
中村文亮さん:
「当事者としてすごく生きやすかったかというと、そうじゃないんじゃないかなって。目には見えない生き辛さみたいなものがあって。今戦われている同性婚・婚姻の平等が、いい結果になるといいなと思っていますし。今、日本でいうと変わっていく時期だと思うんです」
谷村祐樹さん:
「すごい漠然とした言い方ですけど、誰もが自分らしくいられる社会であってほしいなとはすごく思いますね。自分で自分のことが好きで、自分を大切にできる人たちで溢れてる社会になってほしいなと思います」

2025年3月7日放送