桜の「老齢化」によって、春の花見のイベントが中止になるなどの影響が出ています。愛知県岡崎市では、桜の景色を次の世代へ受け継ごうと、クラウドファンディングなどを使って資金を集め、新たに植樹する取り組みも始まっています。

■「見に来ないで」と呼びかけ…約10万人が訪れる祭りが中止に

 三重県四日市市の桜の名所「海蔵川(かいぞうがわ)」では、およそ500本のソメイヨシノが植えられています。

桜の季節に毎年開かれる「桜まつり」には、およそ10万人が訪れてライトアップも行われます。

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しかし、2024年に樹木医が診断したところ、およそ250本の老木の4分の3に、木が倒れたり枝が折れる可能性があると指摘され、祭りの中止を決めました。

実行委員会は、2025年は仮設の駐車場やトイレを設置せず、桜を見に来ないよう呼びかけています。

■名古屋の名所でも「立ち入り禁止」の柵 花見の影響が桜にも

 桜の「老齢化」は各地で起こっています。

名古屋市昭和区にある鶴舞公園では、桜の下に「立ち入り禁止」の柵が設置されている場所があります。

鶴舞公園の担当者:
「宴会をやっていただく所と、桜の保全のために立ち入りを制限して、鑑賞用の桜林としている所を設けてあります」

花見で多くの人が立ち入ることで、桜周辺の土が踏み固められてしまいます。そうすると、根が伸びにくくなったり、土の中の酸素や水分が減ったりして、桜が弱ってしまうということです。

そこで、2024年からは立ち入り禁止エリアを変えて、花見客に楽しんでもらいつつ、桜が定期的に休めるようにしています。

■岡崎の桜を次の世代へ…クラファンなどで3600万円以上を集め植樹始まる

 愛知県岡崎市の岡崎城公園では、およそ150年前の明治時代から植樹が始まっていたため老齢化が進んでいて、2017年に199本あったソメイヨシノは、枯れるなどして174本にまで減ってしまいました。

岡崎市総合政策部企画課の担当者:
「植えられたソメイヨシノが、寿命の時期である60~80年を迎えてきている状況となっております。幹が空洞化してきたり、枝ぶりが良くなくなってきたり、花のつきぐあいも年を重ねるにつれて少なくなってきている」

そこで岡崎市は、桜の植え替えの費用をクラウドファンディングやふるさと納税などで募集し、目標の3000万円を上回る3600万円以上の支援が集まりました。

岡崎市総合政策部企画課の担当者:
「『桜花咲(おかざき)プロジェクト』と銘打ちまして、景観の復活に取り組んでまいりました。クラウドファンディングについては45日間、開催いたしました。90%近い方が、市内にお住まいの方や企業の方からいただいた結果となっております」

現在植えられているのは、伊勢湾台風で壊滅的な被害を受け、1960年以降に、地元ゆかりの企業や市民が寄付をして植樹してきたものです。

地元の支援で、桜の景色が次の世代に受け継がれようとしています。

市民:
「素晴らしいことだと思っています。みんなの力で、みんなが賑わえる場所があるというのはすごく大切なことだと思うので」

別の市民:
「ここの桜は圧巻なので、未来にずっと続いていってほしい」

2025年3月、集まった資金で早速12本のエドヒガンが植樹されました。今後は、品種を検討して150本の桜を植えかえていく予定です。

岡崎市総合政策部企画課の担当者:
「今年植えたエドヒガンの桜なんですけれども、花がつくまでには数年と思っていたところもあるんですが、早速つぼみがついているものもございます。過去から紡がれてきた桜の景色を、ぜひ子供たちに紡いでいきたいと思っております。10年後も20年後も、桜でいっぱいの岡崎城公園になるといいなと思っております」