――隆平は中盤に入っても、その人物像が深く描かれていませんでした。
第7話から隆平がどんな男かわかりますので(笑)。最初は僕もどう演じればいいのだろう、と悩みました。それでクランクイン前にプロデューサーさんや監督さんと相談させていただき、物語の後半、隆平にどんなことが起こるのか確認しましたし、プロデューサーさんからは『演じていてモヤモヤすることもあると思うけれど、終盤で隆平のこともしっかり描くので、それまでは大変でしょうが、ついて来て下さい』と言われたんです。
――前半では、未芙由に「嘘がうまいね」と言う場面(第3話)で隆平がどんな風に人を観察しているのが伺えました。
リハーサルでは割とキツイ感じであのセリフを言ってみたんです。そこで監督さんから『もう少し優しい感じで』とリクエストされました。『こんな純朴に見える子が嘘なんてつくんだ。へえ~』という単純な驚きを出してほしい、とのことでした。
――クランクイン直後、上杉さんと監督が話す姿を見かけました。隆平の久子への優しい態度から、上杉さんは「隆平って優しい男ですよね」と話していたのが印象に残っています。
未芙由に対しても、基本的には優しかったですよね。ただ演じていくうち、鹿島田家のような家庭で育った隆平が、気遣っても何の“メリット”もない未芙由に見返しもなしに優しくするのだろうか? と思うようになって。そこで自分なりに感じたのは、隆平って、人に関心がないんじゃないか、ということです。他人なんて実はどうでもよくて、関心がないから冷たくするでもなく、適当に距離を持って、淡々と接しているのかも、と思ったんです。
――仁美役の国生さゆりさんも、仁美が人に関心のない人物と語っていました。とはいえ、隆平と仁美は人への接し方が違いますね。
ふたりの置かれている環境の差だと思います。仁美さんはボランティアをしているとはいえ主婦なので、行動範囲も決まっています。隆平は大学生で社会との接点は仁美さんより多いでしょうし、人から好感を持たれる術に長けているじゃないでしょうか。隆平は何より自分が大事で、優しさも保身から来るもの。常に好青年という“鎧”をつけている感じですね。
――そんな隆平が、金銭トラブルを起こしていることが発覚しました。
相当、深刻な問題を抱えていますし、そこに未芙由がどう関わってくるのか。これまできっと孤独だった隆平が、未芙由と接することでどんな感情が湧き上がってくるのか、ここから描かれていくので、ご覧ください。
――隆平は未芙由をどう思っているのでしょうか?
人は誰もが自分の手で大きな輪を作ったとしたら、その“テリトリー”にあるものを守りながら生きていると思うんです。輪の外にあるものを取るのはリスクがあるので、無理して手は伸ばさない。僕だってそんな風に生きているところがあるから鹿島田家を始め、このドラマに出てくる人たちの生き方を否定はしません。未芙由はその“輪”さえ持っていないので、なんの迷いもなく人それぞれの輪の中に入り、欲しいものを奪っていく。隆平にとって未芙由は、自由の象徴かもしれないですね。
――上杉さんの未芙由に対する印象は?
隆平役を演じているからか、ふたつの見方をしています。もし、彼女に自分の家族を壊されてしまったら、『助けてあげたのに、なに勝手なことをしているんだよ!』と思うだろうし、客観的に見ればもともと鹿島田家は壊れていて、遅かれ早かれダメになっていたかもしれないし。未芙由が現れたことはきっかけにしか過ぎなかったのかも、と。“反発と納得”って感じですね。個人的には、未芙由の生きることに必死な姿はすごいと思います。ただ、ああいう生き方が幸せかどうかは別です。未芙由は何か手に入れても、そこで満足できないタイプじゃないか、という気がするんです。
――上杉さんは“ウツボカズラ女”ってどう思いますか? またご自身の中にウツボカズラな要素ってありますか?
“ウツボカズラ女”ですか…。無理です、無理。逃げます。翻弄されるなんてごめんですから。でも…、一目ぼれしたらどうなるか分かりませんね(笑)。僕自身は、ウツボカズラの要素を持っていると思います。いや、良い意味で、ですよ。これまでいろんな人からいろんな影響を受けてきたし、人からエネルギーをもらうには、自分から飛び込まなきゃいけません。あ、それはウツボカズラの袋の中に自分が飛び込むってことですかね(笑)。