42年続く専門店の疑問「あんかけスパはなぜ全国区になれないのか…」見えてきた“クリアすべき3つの課題”

02月24日更新

名古屋市名東区にある“あんかけスパゲティ”専門店の社長から「42年間あんかけスパの専門店を営業しています。名古屋名物を自負していますが、全国区になれません。味付けは良いのに名前が受け入れられないのか理由がわかりません」と投稿がありました。

手羽先やひつまぶしなど全国進出を果たす名古屋めしが相次ぐ中、なぜあんかけスパは全国に広まらないのか。調べてみると「PR不足」、「コショウ風味が強すぎる」、「うま味不足」と3つの課題が見えてきました。

■様々な店が関東に進出も撤退…スパイシーに味付けした名古屋のソウルフード

名古屋市名東区の「からめ亭本店」の志智(しち)均社長(67)。

志智さん:
「名古屋にある『あんかけうどん』の色がとても似ているから、そこからヒントを得て『あんかけスパゲッティ』と自分が思って、いつの間にか広まった」

志智さんは、今から40年以上前に、あんかけうどんからヒントを得て「あんかけスパ」とネーミングした名付け親です。

タマネギやニンジン、ジャガイモなどを牛肉とじっくり煮込んでコショウでスパイシーに味付けした“あん“を、もちもちの極太麺にかけた”あんかけスパ“は、名古屋のソウルフードです。

地元の女性:
「スパイシーな感じがまた食べたくなる。やみつき」

地元の男性:
「ちょっとクセがあるけど、それがまたいい」

名古屋で人気の“あんかけスパ”を全国に広げるべく、志智さんは2010年に千葉県市川市に「からめ亭」を出店しましたが…。

志智さん:
「(店を)出したが、実際には根付かず閉まってしまうという。どうしても広がりを見せないから、かなり焦っていた」

これまで自身の「からめ亭」も含め、様々な「あんかけスパ」の有名店が全国進出を試みるも撤退。

志智さんは、全国に広まらない理由が「あんかけスパゲッティ」という名前にあるのか、美味しさが正確に伝わっていないのか、理由を知りたいと話します。

■広まらない理由はPR不足か…県外の観光客の多くが知らない「あんかけスパ」

そもそも“あんかけスパ”は名古屋めしとしてどれほど認知があるのか。名古屋城に来ていた観光客に聞いてみました。

埼玉から来た女性:
「(名古屋名物といったら)ひつまぶし。味噌煮込みうどん、きしめん」

神奈川から来た男性:
「名古屋コーチンとか」

香川から来た男性:
「ひつまぶし。手羽先」

名古屋名物と聞いて“あんかけスパ”と回答したのは、25人中わずかに2人。“あんかけスパ”の写真を見せてみると…。

大阪から来た女性:
「全然知らない、ラーメン。味噌ですか?」

東京から来た女性:
「ちゃんぽんの味噌バージョン」

「あん」を「味噌」と勘違いしている人も多くいました。こんな意見もありました。

別の東京から来た女性:
「お土産ショップとかも『手羽先味』とか『ういろう』とか前面に出ているから、旅行客は(あんかけスパに)気付かない。固定観念で調べる時もインスタとかで、「#ひつまぶし」になってしまう」

このインタビューを見た志智さんは…。

志智さん:
「いっぱい食べるものがありすぎて、隠れてしまう。以前『キヨスク』とかに商談持ちかけたこともありますけど、やはりバイヤーではないからうまく伝わらなかった」

“PR不足”が、広がらない原因の1つかもしれません。

■県外出身者「コショウ辛い」…特徴であるスパイシーな味付けに抵抗感

北は福島から、南は福岡まで、あんかけスパ未経験の県外出身者5人に試食してもらいました。“初あんかけ”の感想は…。

福島出身の男性:
「コショウ辛いインパクトがグッとくる。その第一印象は強すぎる」

子供:
「コショウが多くて辛い…」

東京出身の男性:
「パンチがありすぎる。少し味をマイルドにする方が、一般受けしやすいかな」

多くの方が、特徴の1つでもあるスパイシーな味付けに抵抗があるようです。さらに…。

兵庫出身の女性:
「もうちょっとうま味がほしい。うま味を感じると美味しいと思う」

関西で受け入れられるためには、うま味が必要という意見も…。

志智さん:
「その地方で慣れ親しんだ味があるから、名古屋の味を無理やり持って行こうとしても…。何か工夫しなければ全国の人たちに理解してもらうことは難しい」

「PR不足」に「強すぎるコショウの風味」、そして「うま味の不足」。あんかけスパの全国進出に向けてクリアすべき課題が見えてきたようです。

■かつお節と昆布でダシをとったソースを考案…関西向けの新メニュー「カンサイマイルド」

一週間後、志智さんは息子の栄児さん(41)と厨房にいました。

息子の栄児さん:
「あんかけスパゲッティに近いものを家でも。動画と写真」

PR不足を補うために、“肉じゃが”を素にした“あんかけスパ”のアレンジレシピをSNSで公開。

肉じゃがにした理由は、試食会で東京出身者から言われた「あんかけとパスタって合うの?食わず嫌いの人は手を出しづらいと思う」という言葉からでした。

志智さん:
「皆さんが『あんかけソースって何でできているの?」って。素になるものがこの中(肉じゃが)に入っている。見た感じは、まさか野菜や肉が入っているとは想像しにくいと思うので…」

タマネギやニンジン、ジャガイモを牛肉に合わせて煮込む“あん”と似た“肉じゃが”を材料にすることで、あんかけスパの味がイメージしやすくなるのではと考えました。

さらに“あん”そのものにも新たな工夫を…。

志智さん:
「関西風のあんかけソースを。昆布ダシ。辛すぎるということと、うま味が効いていないというので関西風の味付けに」

試食会で出た「コショウ辛い」、「うま味がもっとほしい」という意見を踏まえ“かつお節と昆布”でダシをとったソースを試作。

志智さん:
「優しい味。辛さを抑える意味もあって、うちの独自のあんかけのソースとこのマイルドソースを一緒に合わせて、カタカナで「カンサイマイルド」」

ダシのうま味を生かした新メニュー、その名も“カンサイマイルド”で、まずは関西から攻略です。

■関西出身者「ダシが効いて好きかも」…辛さを抑えうま味を効かせた新ソース

志智さんは早速、関西出身者に集まってもらい試食会を開催。果たして、“カンサイマイルド”の評価は…。

大阪出身の男性:
「これ結構好きな味かもしれない、おいしい」

京都出身の女性:
「意外とマイルド」

兵庫出身の女性:
「ダシが効いていて関西の人は好きだと思います。2回、3回と(食べに)行きそうな感じが」

馴染みのあるダシの味に皆さん好感触。前回に続いての参加で「うまみが足りない」と辛口評価だった女性は…。

兵庫出身の女性:
「もうちょっとガツンとうま味の方が好みだけど、前回よりは美味しくなっている」

どうやら及第点がついたようです。他にも、お客さんからはこんなアイデアも出ました。

京都出身の女性:
「かつおと昆布やったら、いっそのこと甘辛いきつねの揚げとかの方が美味しいんちゃう。甘辛でもいいと思う」

志智さん:
「勉強になりました。想像だけで物事を進めようと思っても難しいですから…。喜んでいただけるよう一生懸命勉強していこうと思います」

試食会で出た「油揚げ」を使ったメニューも考えてみたいと志智さん。あんかけスパ全国進出への挑戦は続きます。

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