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オトナの土ドラ「限界団地」クランクアップリポート

佐野史郎さん「全シーン神経を張り詰めて、心神喪失のような状態に…始めての経験でした」

主演の佐野史郎さん演じる、最狂の老人・寺内誠司の情熱と悲哀を描いた心理サスペンスドラマが、先日クランクアップを迎えました。撮影は、寺内と江理子(足立梨花さん)があやめ町団地の幽霊部屋で、まさにふたりの将来を暗示するシーンで終了。スタッフからの大きな拍手と心から「お疲れ様でした」の声援が送られ、思わず涙ぐんだ足立さん、そして佐野さんにも安堵の表情が…。そんな感動的なクランクアップの中、キャストの皆さんにドラマを終えての感想を伺いました。

佐野史郎さん「団地を通してこれからの時代をどう生き抜くかという思い」

――寺内誠司役、お疲れ様でした。

「何より無事終えられたことが嬉しいですし、本当に素晴らしいスタッフ、共演者のみなさんに恵まれ、心より感謝しております。全シーン神経を張り詰めていたので、一度、心神喪失のような状態になってしまい、撮影していて記憶がおぼろげなシーンが1、2シーンありました。こんなことは始めての経験でした。言い訳になりますが、連日の撮影で出演シーンもかなりあり、限界ギリギリだったのかもしれません。ですが、連ドラ初主演はそういった過酷さも含めてとても楽しかったです」

――改めてこのドラマの感想をお聞きしたいです。

「寺内のセリフに、“この団地をより良い住まいにして、次の世代に引き継いでいってもらいたい”(最終話)というのがあるのですが、僕も60歳を過ぎ40年以上俳優の道を歩んできたなか、それでも大先輩たちから見ればまだまだ小僧ですが、先輩たちから学んできたことを若い世代の俳優さんたちに伝えておきたいという気持ちが正直あります。ただ、それはセンチメンタルでノスタルジックな想いではなく、それぞれの時代の俳優さんたちの立ち姿、声の出し方などを手がかりに、なぜそうだったのかを紐解きながら、ならば今の僕らはどうしてこのような取り組み方をしているのかを皆さんと分かち合いながら現場にいたかったんです。佐野は現場でいつもしちめんどくさいこと言ってたなと、いつか思い出してくれたら嬉しいですね。それは、団地とはどうあるべきか?という、ドラマを作る過程とも重なっていたはずですし、これからの時代をどう生き抜くかという問いかけともなっていたと思います。ドラマ、団地を通して、僕ら自身がどう生き抜くかという思いが込められた作品だったと思います。特に江理子とのラストシーンでは、僕も足立梨花さんも、そのことを強く意識させられていたような気がします」

足立梨花さん「私の芸能生活のターニングポイントになった作品」

――とても充実した2ヶ月間だったと思います。お疲れ様でした。

「長かったような、短かったような…です。撮影している最中は、まだまだあるなと思っていたのが、後半は本当に短く感じました。考えなくてはいけないこともたくさんあり、とても大変な役ではありました。題材的にも重く、シーンが終わるごとに佐野さんと一緒に“はーっ”と、深いため息をつきながら乗り越えた記憶もあります。でも今は本当に無事に終われてよかったという気持ちでいっぱいです」

――佐野さんとの共演はいかがでしたか?

「今回初共演だった佐野さんとは、お会いするまで勝手ながら、“無口で怖そう”というイメージがあったんです。でも実際は、佐野さんの方からたくさん話しかけてくださいましたし本当になんでも相談に乗ってくださったので、佐野さんのおかげで無事、江理子という人物を演じ終えることができたと思います」

――今までの足立さんのイメージを壊すような鬼気迫るシーンもありました。

「江理子を演じたことで、世間の皆さんが思う、私のイメージがかなり変わるのではと思っています。でも、それをとてもいい風に仕上げてくださったのは佐野さんです。私の芸能生活のターニングポイントとなった役だと思います」

迫田孝也さん「ふり幅のあるキャラクター、今年挑戦してみたかった」

――桜井高志役、波乱万丈な役どころでした。

「高志は今年挑戦してみたかったような役どころでした。とてもふり幅を持っていたキャラクターだったので、やっていて本当に楽しかったですね」

――佐野さんとの共演、いかがでしたか?

「佐野さんはお話好きな方で、さっきまで殺し合うぐらいの対峙をしていたシーンの後でも、急にトーンが変わって話されるんです。やっぱり座長だから、常に皆に気を配っていらしたと思います。『限界団地』の中心には、必ず佐野さん演じる寺内がいたという感じでした」

――高志は不倫をするシーンもありましたが…。

「畳の部屋でワインを飲んで、昭和を感じさせるような不倫のワンシーンでした。色恋と言うよりちょっと滑稽にも思えてきて、心で笑ってしまって(笑)。でもやっぱり不倫はいけないから、寺内に懲らしめられても仕方はなかったですね(苦笑)。でも、高志の不倫は物語にはなくてはならなかった必要不可欠なピースだったと、自分では自信を持って言えますよ!」

山崎樹範さん「佐野さんとのお芝居は、心が震えるものがありました」

――金田哲平役、お疲れ様でした。

「正直、この現場を離れるのはとても寂しいです。特に佐野さんとお芝居しているときは近年まれに見るような感覚といいますか、佐野さんのお芝居からもらうものがたくさんあって、そこに返せるかどうかという気持ちの連続で、久しぶりに心が震えるものがありました。例えると、ボクシングをやっているみたいな感覚、真剣勝負でした(笑)」

――佐野さんと空き時間にもよくお話されていた様子ですね。

「音楽や舞台の話とかいろいろですね。とにかく博学でいらっしゃいますし、台本の読み方も凄くて、僕が考えている先の先というか、裏の裏というか、そういう風に本を読むんだ!! と、聞いていて勉強になりました」

――思い出に残っているシーンはありますか?

「第4話の白骨死体を金田が見つけて、寺内に追い詰められるシーンです。そのあたりから完全に自分の中でスイッチが変わりました。映像の表現とはこういうものだと思っていたつもりはなかったけど、佐野さんのお芝居を見てどこか自分の中で狭めていたんだなと気付かされたんですね。こんなに自由な表現でいいんだというのを感じさせてくれたんです。でも全体的に皆さんとも楽しく、いい現場に参加できたと思っています」