インタビュー

山本圭さん(神楽辰夫役)

「かぐらや」で志乃が大女将として思う存分仕事が出来るのも、夫であり、旅館の板長である辰夫の支えがあるからこそ。そんな辰夫を演じる山本さんに、役についてだけでなく、ご自身の“夫婦感”なども伺いました。

――志乃役の野際さんに話をうかがったところ、志乃と辰夫の関係がとても素敵だとおっしゃっていました。
「旅館の場面を見ると、辰夫は寡黙で、“デンッ”と志乃の後ろに構えてますよね。だからこそ志乃は自分の思う通りに大女将の仕事に打ち込めているんですよ。傍目から見たらこの夫婦は奥さんのほうが強いように見えるけれど、決してそうじゃない。皆と一緒のときは志乃に主導権を預けつつ、二人きりになったときはお互い、包み隠さずいろんなことを話し合っています。こういう場面で二人の関係性が伝わればいいな、と思ってます」
――野際さんとはこれまでにもご共演の機会はあったんですか?
「僕は野際さんとは今回が初めてだと思っていたんですよ。ところが…。最初の顔合わせで『初めてですが、よろしく』と挨拶したところ、ずいぶん前に映画で共演したことがあると言われちゃいましたよ、それもかなりしっかり共演していると(笑)。恥ずかしながら、しっかり忘れていました」
――山本さんの奥様、小川誠子さんもプロの囲碁棋士として活躍されていらっしゃいますが、辰夫と志乃夫婦と、山本さんご夫妻で通じるところはありますか?
「ともに仕事を持つ“同士”という点は同じでしょうが…。辰夫と志乃は仕事場が同じですよね。ただ、職場で受け持つ仕事がそれぞれ別ですが。僕たちは同じ世界を共有しつつ、別々の世界も持っているわけですよ。自分の話になってしまうけれど、妻が自分の世界を持ってくれていたからこそ、結婚から30年以上たちますが、一緒に暮らしていけたんだと思ってます。辰夫たちの場合は、夫と妻が同じ職場でともに戦ってきたからこそ、ここまで夫婦として絆を築けてきたのかもしれないですね」
――ところで旅館の板長役は初めてだそうですが。
「時代劇で料理人の役をやったことはありますが。最初は料理場のシーンをどうしようかと思いましたよ。僕自身は必要に迫られたとき、簡単な料理“もどき”のものを作るぐらいなので。料理に対してちゃんとした経験がないから、撮影初日にすぐ料理をしている場面があったんですが、指導をして下さる料理人の方の包丁さばきをよく見るようにしていました。そのとき、『こんな風に包丁を扱える雰囲気は昨日今日、包丁を触っただけで出るものではないな』と思いましたが、そこで、それならせめて気持ちだけは一流の料理人の心意気を持って辰夫を演じよう、と思ったんです。ただありがたいことに、話が進むにつれ、旅館だけでなく、自宅の場面も増えてきたし、この作品の場合は家族の会話を何より大事に演じればいい、ということが分ったので、少しほっとしましたよ(笑)」
――辰夫の視点で、この作品のどんなところを視聴者の皆さんにご覧になっていただきたいですか?
「とにかく女性が元気なドラマですよね。実際、野際さんだけでなく、奈緒子役の羽田(美智子)さんも元気なんですよ。でもそんな女性陣を支えているのは男性なんだってことを知ってほしいし、そんな演技をしているつもりです」
――志乃は奈緒子に対して、旅館を手伝うことは認めているけれど、息子の嫁としては認めていません。辰夫は奈緒子に対して、どんな心情だと思いますか?
「最初から認めていると思いますよ、辰夫は奈緒子さんを。息子が“えんじょもん”と結婚したい、と言い出したとき、若干の諦めもあったと思いますが、『息子が選んだ嫁なら大丈夫だろう』という気持ちもあったんじゃないかな、と。今後も、志乃と辰夫の奈緒子に対する温度差を要所要所でしっかりと表現していきたいと思っています」