この日は朝8時から撮影開始。羽田さんは旅館の仲居の衣装でさまざまな場面を撮影していきます。小林さんはワイシャツ姿ですが、ただのワイシャツではありません。なんと友禅染が施されたもので、通常のワイシャツの数倍、数十倍という値段(10万円ほどだそうです)だとか。白いワイシャツに美しい絵柄が映えます。小林さんは「着心地も最高で、着れば『これは高価だろうな』と実感できと思います。スタッフさんから『何かあったら大変なので、取り扱いはくれぐれも注意してください』としっかり釘を刺されました(笑)」と。
撮影では次から次へと、実際に旅館で出している料理が登場。どれも繊細な飾り付けが施されており、もし今お腹が空いていたら…。かなり辛い状況だったでしょう(笑)。
2日目のお昼はチャーハン。味はチャーハンのようなピラフのような…。日本人の味覚には微妙に馴染みのないもので、新鮮でおいしかったです。
この日の撮影には「日勝生加賀屋」の徳光支配人とお嬢さん二人も参加(第6話、7話)。徳光支配人にはセリフもあります。徳光支配人が登場する場面をまずリハーサルしたところ、徳光支配人は優しい笑顔とおだやかな口調がとても素敵。しかし奈緒子に台湾の言葉を聞かれたところで緊張からか少し早口に。そこで監督からは「もう少し肩の力を抜いて、ゆっくり話してください」とリクエスト。また徳光支配人自身からも、「普段、私の声は低いと言われることが多いので、もう少し高いトーンで話したほうがいいですか?」との質問が。
支配人のお嬢さん二人は浴衣姿で登場。「日勝生加賀屋」では宿泊している方々に浴衣の貸出をしていますが、お二人が着ている浴衣も旅館のものです。
館内では琴や三味線の生演奏を聴くことが出来ますが、演奏しているのは当然、現地の方々。琴を演奏していた女性に話を聞くと、「もともと中国琴を習っていましたが、日本に興味があり、10年ほど前から日本の琴も習っています」とのことでした。
撮影の途中には、羽田さんから旅館内の喫茶室で出しているシューアイスの差し入れがスタッフの皆さんにありました。バニラアイスが品のよい甘さ。これでもうひと頑張りできそうです。
エントランスで仲居役の皆さんが奈緒子を出迎える場面(第9話)が撮影されたときのこと。「日勝生加賀屋」ではお客さまを出迎えるときのポーズも決まっているとか。当然、仲居役の皆さんもそれにならい、決められたポーズを取っています。実は手の組み方やおじぎの角度、時間までもしっかり統一されており、現地の皆さんも“形式美”とも呼べるこの出迎いに感心しきりだそうです。
ここからはキャストの皆さんのコメントを紹介します。まずは「日勝生加賀屋」で台湾人客室係りの教育係を務める圭子役中村綾さんです。
「以前単発物で、まったく仕事のできない仲居役を演じたことはありますが、圭子のようにバリバリ仕事の出来る仲居役は初めて演じます。普段から、敬語や丁寧語を使ってこなかったしわ寄せが今来ています。圭子のせりふをはっきり言おうとしても舌が回らなくて(笑)。敬語や丁寧語って普段から訓練しなきゃダメなんだな、と痛感しています。着物も普段、ほとんど着ないなので…(苦笑)。本当はもっと貫禄を出したかったんですが、そこが圭子を演じる上での課題ですね。
圭子の状況はきついですよね。全力で頑張っているのに空回りしている、というのは。それが奈緒子さんとの出会いでどう変化していくのか。奈緒子さんとの出会いでうまく歯車が回り、周りと合わせられるようになるんでしょうね。とは言え、言葉の壁とか国籍とか、大きいですよね。台湾での週は、日本と台湾の文化の違いの中で日本の文化の中で育まれた“おもてなし”の心がはたして通用するのか、注目して欲しいです。」
次に圭子に反発する台湾人仲居の王(ワン)を演じる香椎凛さんです。
「王さんを演じるにあたり、『発音はどうすればいいんだろう』というところから入りました。日本人の私が台湾人を演じる上で、どこまで発音を日本人風に近づければいいのだろうか。そんなことも考えました。多分、日本旅館に勤めているだけでも、相当日本に興味があるはずですよね。今回は実際に『加賀屋』さんで仲居をしている台湾の皆さんに台本を読んでもらい、演じる上で参考にさせていただきました。ずっと普段と違う話し方をしているので『私は何人なんだろう?』という気分にもなったりして(笑)。
実はこうして台湾に来るのが初海外です。お仕事で初海外、それがすごくうれしいです」
最後に台湾人メンバーから仲居頭役のゼン アン チーさん。ゼンさんには日本と台湾のドラマ撮影現場の違いなども教えてもらいました。
「まずこの作品に出演できたことが本当にうれしいです。私は台湾の言葉以外で演技をするのが大好きなので。これまでも、シンガポール、中国、香港、韓国などで女優のお仕事をしたことがあって、母国の言葉以外で演技をすることにやりがいを感じています。もともと私はニュージランド育ちで、現地の大学で日本語を勉強していたんですが、日本語でのお芝居も頑張ります!
撮影現場の雰囲気自体は台湾も日本も変わらないと思います。ただ、日本の皆さんのほうが穏やかだし、きっちりしていますね。それに皆さん、本当に優しいです。そこは台湾のスタッフも参考にしなくてはいけないところではないでしょうか。もちろん、台湾のスタッフもプロ意識はすごく高いですよ。役者だって、たとえ10分前に台本をもらっても、そこからリハーサルなしで一気に撮影に入れますから(笑)。この効率の良さは自慢できるところでしょうか。
台湾にはお昼に連ドラを放送する習慣はありませんが、その代わりに夜の8時台に月~金で1時間の連ドラを放送しています。それが日本でいうところの昼ドラのようなものでしょか。週1の作品でも1回の放送時間が90分なので、スピーディーに撮っていかなければ間に合わないんです(笑)。この現場では事前に台本をいただけましたが、やっぱり撮影直前にもらうよりいいですね(笑)。役作りをしっかりできますから。
私が演じる仲居頭は、もともとは圭子さんと台湾人仲居のみんなの仲を取り持つ良く出来た女性だと思っていました。でも仲居のみんなが圭子さんへの文句を言う場面で、仲居頭も中国語で文句を言うように、と監督さんから指示を受けたんです。そこで心には圭子さんへの不満がある役なんだな、と気づきました。撮影期間は短くともいろいろ役について考えることができて、すごく楽しかったです。
以前、日本の旅行番組に出演させていただいたことがあり、大阪に行ったことがあります。そのときも着物を着ましたが、気を抜くと“うっ”と胸が苦しくなります(笑)。日本の女性は素晴らしいです。エライです。尊敬しています」
この日の撮影は午後8時前に終了。今日はゆっくり休んで明日に備えましょうか。