- ――勝はTHE男の子
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中島(丈博)先生がお書きになる作品に出演するのは、これで3度目です。1回目(偽りの花園)、2回目(麗わしき鬼)とそれぞれに反省点があり、今回はそれを克服したい、と思っています。最初の作品のときは、とにかくセリフに追われペースをつかむことが出来ませんでした。おかげさまで今のところはそこまで焦ることはないので、「少しは成長できたのかな」とうぬぼれているんですけど(笑)。
ドラマの序章は、何だかとても切なかったですよね。桜子と比呂人の恋の始まりをリアルに見せたいがために、これまでの中島作品に比べると若干静かな展開なのかな、と思いました。勝を演じるにあたり、僕はプランというものを持たず、現場に入ったんですが、最初に勝の部屋のセットを見たとき、ひらめくものがありました。その時点で勝は20代半ばなのに、プラモデルが置いてあったりして、まさに“THE男の子”な部屋だったんです。僕も決して精神年齢は高いほうではないので (笑)、勝の人物像がつかめた気がして楽になれました。そこからは桜子への想いを、シンプルにピュアに、ブレることなく演じています。また勝の根本は“男の子”なんだけど、ときにものすごく大人な振る舞いをすることがあります。それは桜子も同じで、基本はとても純粋だし、優しい娘だけど、ときに「え、何でこんなことをするの?」というような身勝手な行動を取ることもあるんです。でも人間って決して単純な生き物ではないから、意外と思わせる一面を見せられるもの楽しいし、素敵なことだと思っています。
ドラマの最初のところでは、高校生の勝も演じましたが…。放送後には知り合いから多数の苦情メールをいただきました(笑)。もともとは衣装合わせのとき、プロデューサーさんから「ちょっと制服も着てみない?」と言われ、着たところ「イケてますよ」とお褒めの言葉をいただきまして。内心、「本当かな~」と思いましたけど(笑)、僕が高校生のシーンも演じたらそれはそれで面白いだろうし、視聴者の皆さんも突っ込みを入れつつ楽しんでいただけるのではないか、と思い回想シーンにも挑戦しました。
- ――役者としての成長、新たな挑戦
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先ほど、中島先生のぼう大なセリフに何とか対応しています、と語りましたが、もう一つ自分なりに成長を感じていることがあります。中島作品と言えば、「何で急にこんな展開に!?」と思うシーンが多々登場して、『偽りの花園』のときは頭の中が“?”でいっぱいになりながら演じたんです。でも今回はそうじゃない。先日も、これぞまさしく中島ワールド、昼ドラ! という場面を撮って、そのありえなさを楽しめたんです。「お、来たな」と思ったし、神保(吾志)さんも中島先生の作品への出演経験がありますが、「キャラの一貫性は捨てろ」とおっしゃっていたんですよ。これって名言だと思いませんか(笑)?
今回はナレーションも担当させていただいてますが、これはもう光栄の至りですね。最初にナレーションを録ったときには、正統派のナレーション口調でしゃべったんですけど、そうしたらプロデューサーさんから「今回はナレーションのルールはいらない」と言われまして。あくまで勝のセリフとして言ってほしい、とリクエストをいただいたんです。今までにもナレーションの経験はありますが、これは新しく、また楽しい挑戦でした。だからナレーションも勝の見どころの一つだと僕は思っているし、勝については一貫して桜子への想いをまっすぐに演じていきます。小細工なしに愚直に表現していきますので、最後までどうぞお付き合いください。
- ――純愛の定義
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この作品は“純愛”がテーマですけど、純愛について、僕なりに思っていることを語ってもいいですか? 僕は100%汚れのない愛なんて、この世に存在するのか疑問に思っています。というのも、桜子にしても比呂人にしても、お互いを思う気持ちは確かにものすごく純粋です。でもそれは、二人の仲を邪魔するものや障害があるからこそ、際立ち素敵に見えるもので、もし二人に何の問題もなかったら、単調でしかないんじゃないでしょうか。桜子と比呂人の関係が美しいのは、周りにドロドロとした感情が渦巻いているからこそで、桜子や比呂人、それに勝にしても、自分の愛を守りたくて、時には誰かを傷つけもします。だからこそ人生はおもしろいんですよ。純愛を守るためのエゴ。そこがしっかり描かれているから「さくら心中」は魅力あふれる作品になっているんだと僕は思っています。