名古屋市西区の「ホテルナゴヤキャッスル」は、全国でも珍しい、お城の目の前にあるホテルとして親しまれてきました。このホテルが建物の老朽化などに伴い一時休館し、4年後の再開を目指します。
一旦、51年の歴史に幕を下ろす名門ホテルを訪れた人たちの思いを取材しました。
■休館まであとわずか…別れを惜しむ人たちで賑わう「キャッスル」
名古屋城の目の前にあるホテルナゴヤキャッスルは1969年、名古屋の超一流ホテルとして開業。
上皇・上皇后さまが名古屋にお越しの際に利用されたことから、皇室御用達のホテルとしても一躍脚光を浴びました。
しかし、建物の老朽化などに伴い、建て替えのため、9月いっぱいで一時休館に。休館前に取材をすると、連日別れを惜しむ人たちで賑わっていました。
ホテルのロビーいたのは、記念撮影をする家族。
家族で来た男性:
「妻と挙式したのがこちらのホテルでして、最後の思い出に来ました。建物がなくなるのは寂しさはあります。新しい建物になる4年後楽しみにしてます」
■「絶対キャッスルで挙げたかった」…2人にとってそこは特別な場所
この日、キャッスルには結婚式を挙げる一組の新郎新婦がいました。
阿南健人さん(30)と郁穂さん。当初は、今年5月に予定していましたが、新型コロナの影響で延期に。4か月遅れての結婚式です。
会場のモニターには<法律順守とコロナ予防を誓った結婚披露宴>の文字。
法律順守…実はこの2人、職業が「検事」です。
健人さん:
「司法修習生の時に、私が一目ぼれをして、猛アプローチをして今日に至るという形です」
郁穂さん:
「この人といたら楽しいだろうなっていうのは、その時に思っていました」
幸せオーラ全開の2人にとって、このホテルでの挙式は“夢”でした。
健人さん:
「絶対ナゴヤキャッスルで挙げたいというのは、最初から決めていたこと」
郁穂さん:
「成人式の時にここで写真を撮らせてもらったりとか、お祝い事があったら両親が連れてきてくれた思い出深いホテルでした。司法試験に受かったのが人生でピークかなと思ってたけど、こうやって皆さんにお祝いしてもらって、今日が人生で最高の一日になりました」
■一家団欒の場所…特別な日に訪れるホテル
午後、ランチのお客さんで賑わう最上階のレストラン。名古屋城を眺めながら乾杯するご年配の姿がありました。
女性客(80):
「私が80歳になったので、兄弟でお祝い。長女、次女、長男、次男、夫」
4人兄弟とその家族でした。皆さん、お元気です。
長男の妻(67):
「お姉さんね、80歳にとても見えない。若い」
次女:
「みんなと一緒に食べられるのが楽しみでね。(ホテルが)新しくなるまで4年間元気でおれるかな」
家族の特別な日は必ずこのホテルで…。一家団欒の場所でした。
■開業当時から働くホテルマン
ロビーでは、お客さんを見送るホテルマンがいました。尼子訓さん(69)。51年前の開業当時から働く一人で、休館と共に引退します。
尼子さん:
「この建物自体がなくなるのが寂しい。ホテルマン人生このホテルと一緒にありますので」
大学生の時、ホテルマンに憧れてアルバイトとして働き、そのまま入社。フロントや夜間の統括などを務めてきました。
中でも思い入れのある場所が、披露宴会場の待合室だそうです。
尼子さん:
「ここから見上げる名古屋城が非常にいい。私が働き始めたころから変わりません。全国でもこんなにお城に近いホテルはここしかないと思っています」
51年間のホテルマン人生。尼子さんにとってキャッスルで働くことは誇りでした。
尼子さん:
「楽しいことの方が多かったですね。お客様からありがとうという言葉が聞けるのが一番うれしいことです」
開業当時から働くホテルマン3人が引退。スタッフにとっても、特別な場所でした。
■1000枚以上寄せられた「感謝のメッセージ」
日が暮れ始めると、宿泊客が続々と訪れます。ロビーには、ホテルへのメッセージを書く女性が。
女性客(60):
「34年前に結婚式をあげ、そのあと節目の時にお世話になったので。心のこもったおもてなしに感謝しています。他にはない温かいホテルだったと思います」
ロビーには客から寄せられたメッセージが掲示されています。その数1000枚以上。
(寄せられたメッセージ)
<パパとママの10回目の結婚記念日にごはんを食べておいしかった>
<大好きなホテルです。又会う日まで>
夜、宴会場で開かれていたのは、「最後の晩餐会」。ホテルのフィナーレを彩る料理。総料理長が、休館までのラスト3日間限定で、フランス料理のフルコースを振舞いました。
男性客(64):
「41年くらい前に結婚式をさせていただいて、その後も思い入れがあって、娘もちょうどこの部屋で結婚式をやらせていただいて」
一旦、51年の歴史に幕を下ろした「ナゴヤキャッスル」。世代を問わず、多くの人の心に刻まれた場所です。
ホテルが休館の間、スタッフらは系列のホテルなどで業務に。ホテルは同じ敷地に建て替えられ最高級ホテルとして4年後の開業を目指します。