名古屋の「大須演芸場」は、あの明石家さんまさんやビートたけしさんもかつて舞台に立った名古屋のお笑いの殿堂ですが、新型コロナウイルスの影響で今年3月から寄席を中止し、閉館状態になっています。
存続が危ぶまれるなか再起を目指す演芸場と、舞台を失った地元芸人たちの今を取材しました。
名古屋市中区の「大須演芸場」。名古屋を中心に活躍する落語家などが出演していた大須演芸場。
55年の歴史のなかで、若かりし頃の明石家さんまさんも、当時の芸名「笑福亭さんま」として舞台にあがった名古屋のお笑いの殿堂です。
東海地方唯一の常設の寄席ですが、新型コロナウイルスの影響で、3月から公演を休止にしていて、静まり返っています。
落語家の独演会などに演芸場を提供する「貸し席」も3月に1度開催できただけで、延期や中止が続いていて、売上もゼロです。
大須演芸場は、多くの集客が見込める東京や大阪の有名な芸人を呼ぶことが難しく、2014年には、一時閉鎖に追い込まれるなど、もともと綱渡りの経営が続いていました。
家賃や人件費など最低でも月に100万円以上かかる固定費がのしかかります。
大須演芸場の矢崎支配人:
「生で見ることが醍醐味の劇場なので、人を集める作業ができないのが非常に苦しい」
一方、活躍の舞台を失った芸人たちも苦境に立たされていました。
客がいない席の前で落語や講談を披露する名古屋の芸人たち。
雑居ビルのイベントスペースで毎月開いている寄席も中止になり、YouTube用にビデオ収録していました。
登龍亭幸福さん:
「(Q.お仕事はどんな状況ですか?)ゼロです。豊田でラジオやっているから、それだけ。ラジオも電話出演ですから」
旭堂鱗林さん:
「電話がかかってくれば、キャンセル。3,4,5月と、犬の散歩ばっかりしていた。(Q,講談師としての収入は?)ないです」
インターネット配信でなんとか芸を披露する場を作っていますが、芸人ならではの悩みもあります。
登龍亭獅篭さん:
「笑いのキャッチボールがないとね…やりづらいですね。この期間に何をやるか宿題を与えられた感じはしますね。芸人はゲームで言うとソフトなんですよ、大須演芸場はハードで、あそこのハードでやるための内容を考えているので」
客の反応をみてあらたな笑いを生み出す、それができず、やりづらさを感じています。
演芸場側も再開に向けた準備を始めています。
矢崎支配人:
「何度も(再開の)シミュレーションしているが、席と席の間隔を開けて少しでも密を避けるという…」
満員の演芸場は「3密」になるうえ、お客さんの多くはリスクが高い高齢者。寄席を再開するとしても、当面は179人の定員に対し、100人ほどしか収容できないと想定しています。
半世紀以上にわたって何度も経営の危機を乗り越え、「奇跡の寄席」とも呼ばれた大須演芸場。
再び襲った苦境からの「復活劇」に期待がかかります。
矢崎支配人は、「演芸場としては何とか体力を持たせて元の状態に戻したい。(新しい演芸場になって)5年間、皆の力でやってこられたので、また必ず再起できると思っている」と復活を誓います。
大須演芸場では4月下旬から寄付を募っていて、HPで呼びかけています。