インタビュー

高橋克典さんインタビュー

――本作の感想をお聞かせください。

台本を読んで、そこにひと味、ふた味足すドラマ作りが栗原美和子プロデューサーの味であり、ノンママやワーママというキーワードになる言葉があって、話を展開させていく感じに、かつて僕が出ていたようなドラマの匂いを感じました。それに、子供を作らず働いてきた50歳を前にした女性たちのかなりきわどいセリフとシチュエーションがおもしろいですね。80年代、90年代の意識を踏まえつつ、当時青春を過ごしてきた土井のような世代がアラフィフになりどう生きているのかを描くことが、うまく出来ているように思います。それに中心となる会話劇もエグくて、好き嫌いが分かれるところかもしれません。

――この作品を手掛ける栗原プロデューサーとは長いお付き合いだとか。

デビュー当時からお世話になっていて、今回もすごく栗原さんっぽさを感じますね。『こういうところが』というより、いろんな意味で。その栗原さんらしさが僕には懐かしいし、頑張っている姿も強く感じられます。鈴木保奈美さんの相手役を務めさせてもらえるのも、光栄ですし、おもしろいです。

――鈴木さんとの共演はいかがですか?

ものすごくしっかりした"主役"の方ですね。お芝居に安定感があるし、アイディアも豊富で、一つ一つの芝居の選び方がおもしろい。昨年、1度共演したことがありますが、改めて器の大きさを感じました。土井役は保奈美さんしかいないですね。テレビとして"この辺りじゃないか"というギリギリのラインを分かって役を演じているので、物語がシリアスになり過ぎない。明確な答えを持ってお芝居をしている保奈美さんを見ていると、とても勉強になります。

――高橋さんは本城をどんな風に演じていますか?

デビューしてすぐの頃、栗原さんの作品の数々で、女性から見た理想の男性像を体現しているキャラクターを演じたことがありました。あくまで女性目線で描かれた人物で、キャリアのない自分にはそういう役柄をどう落とし込めばいいのか分からなかったし、ある種、ファンタスティックなポジションをドラマというエンターテインメントの中でどう担えばいいのかも分からず悩んだものです。無我夢中で演じるだけで正直、当時はしんどかった(笑)。本城に求められているのは、かつての役割と近い部分もありますし、こういう役柄が懐かしくもあり、土井に何を言われても『いいよ』って言う役割をアップアップしないで演じています。今改めて、トレンディドラマを楽しんでいる感覚もありますね。

――高橋さんは本作のどんなところにおもしろみを感じていますか?

土井の職場の場面は、演じていてもかなりえげつなく、でも現実的でもあると聞きます。この番組の女性スタッフが、『どこの会社でも女性は多かれ少なかれ、土井さんみたいな経験をしていると思います』と言っていたんです。女性の上司に部下がズケズケものを言うところなんかは、今の時代を逃げることなく直視していますよね。それに比べ、僕は本当に甘やかされた環境で仕事をしているな、と身が引き締まりました(笑)

――視聴者の皆さんには、本城のどんなところを楽しんでいただきたいですか?

ここぞ、という場面で土井のために出てきますので(笑)。僕自身、格好つけた演技からいかに離れるか、ということをテーマにここまでやってきましたが、今回は初心に戻っています。若かりし頃、本城のようなポジションの役で顔を覚えてもらったので、あの頃の気持ちを思い出しているし、当時、応援してくれた皆さんがこのドラマの中の僕を見て、懐かしくなるような演技が出来たら、と楽しみながら演じていますが...

――第3話で土井が通勤途中で本城に会う場面のお二人はとても素敵でした。

本当に?結構恥ずかしかったですよ。あの場面は、まさに"THE トレンディドラマ"だったでしょ。保奈美さんが本城に問いかけたセリフのところでは、頭の中で小田和正さんの曲がかかりました(笑)。僕たちは大まじめにやっていますけど、ああいう場面にクスッと笑えるような楽しみもあるかもしれないですね。

――アラフィフの恋愛の行方も注目ですね。

放送が土曜の夜遅くて、"オトナの土ドラ"ですから。大人の恋愛を描いているのもいいですよね。でも、この二人の気持ちの表し方って、全然大人じゃない気がします(笑)。それが、逆にいいかもしれません。

――最後に、土井を支える本城を演じる高橋さんから、土井と同年代の女性にエールをお願いします。

50代って、"終末"がおぼろげに見えてきて、これからどう生きるか具体的なことを考え始める世代だと思います。そこに僕はおもしろみを感じているし、年齢を重ねることもいいなと思っているんですよ。その中で、いろんなことがどんどん変わっていくから、どう順応していくのか。若かった頃の自分や、変わらないことに固執する必要なんてないはずですから。