10歳を目安に引退…視覚障害者を家族として支えてきた『盲導犬』女性が迎えた“最後にハーネスを外す時”
視覚にハンデがある人をサポートする盲導犬は、10歳を目安に引退します。引退する盲導犬と、数年間一緒に暮らした視覚障害者との別れの時を取材しました。
■10歳で“引退”…日常生活でも精神面でも支えとなる盲導犬
住宅街を犬と連れ立って歩く女性。
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三重県名張市に住む、井上スズ子(いのうえ・すずこ 69)さんです。
井上さんに寄り添っているのは、盲導犬・ドリーム(10・メス)。
井上さんは60年前、緑内障で視力を失い、それからは白杖(はくじょう)を使って生活しています。
夫に先立たれ、週に3回ヘルパーの助けを借りながらの一人暮らしです。
ドリームとは7年前から生活を共にしています。
井上スズ子さん:
「一歩(外に)出ると本当に行動ができない。物を落とした時とか探すとか、そういうような時が一番困るかな」
その生活を変えたのが、盲導犬でした。ドリームは、井上さんにとって2頭目の盲導犬です。
井上さん:
「散歩行くとか日常生活もそうなんですけど、すごく精神面では生活の張り合いというか、生きがいをもたらしてくれた子だなって、本当に思っています。ドリームの排せつやらご飯やらの、何か世話をしてあげるというところも、やっぱりなんとなく自分一人じゃないんだっていうような気持ちでいられますしね。1つの家族になっていますね、ドリームは」
しかし盲導犬は、人間の年齢で70歳近くにあたる10歳を目安に引退します。
井上さん:
「そうグッドグッドよしよし。ポスト行くよ、ドリーム」
「『ポスト行くよ』って言ったらパッと若い頃は反応があったんだけど、今はちょっと反応が鈍いかな」
ドリームも、2023年1月で10歳になりました。
井上さん:
「正直言って辛いです。普通のワンちゃんとして預かってそこでみていただくので、その方がドリームも幸せかなって、だんだんと自分に言い聞かせているんですけどね」
■「元気で幸せに」7年暮らした盲導犬との別れの時
2023年2月、井上さんは現役を引退する盲導犬・ドリームとの別れの日を迎えました。
井上さん:
「ドリームは普通の犬に戻ってもらって、ゆっくりと過ごして、幸せにいてくれたらいいなと思います。『ありがとう』と、『元気で幸せに』っていうのが、やっぱり最後の言葉ですかね」
名古屋市港区の中部盲導犬協会で、ドリームを職員に引き渡します。
職員:
「ドリームは、この後ゆったりと引退して余生が過ごせるように」
井上さん:
「本当に正直に言ったら…。本当に穏やかないい子だったもんで、私もゆったりと何も困ることなく、精神面で助けてもらいました」
職員:
「このあとハーネスを外して終了になりますので、ハーネスを外して頂けますか?」
井上さん:
「ドリさん、ちょっと待って…はい」
職員:
「じゃあ、ドリームね」
井上さん:
「元気でな…元気でな…。ありがとうございます」
ドリームと別れた井上さんは、3頭目の盲導犬との暮らしを始めました。視覚にハンデがある人たちにとってかけがえのない盲導犬ですが、育成するための資金不足などで、2022年度は過去最少の約850頭になっています。
2023年2月28日放送