2人をつないだ縁がパリで結ばれる…カヌー五輪代表の羽根田卓也と田中雄己 “15歳離れた師弟”が大舞台に挑む
日本カヌー界のレジェンド・羽根田卓也選手と、羽根田選手を師と仰ぐ田中雄己選手が、パリオリンピックの舞台に挑みます。田中選手を支えたのは、羽根田選手の言葉と、練習場所の確保に尽力してくれたもう一人の恩師の存在でした。
■「師弟」関係 レジェント・羽根田選手と新星・田中選手
愛知県豊田市出身の羽根田卓也選手(37)は、男子カヌースラロームで、5度目のオリンピックに挑みます。
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羽根田選手:
「東京終わってから3年間培ってきたものを全てぶつけて、皆さんの期待に応えられるように頑張りたいと思います」
羽根田選手を師と仰ぎ、初めてオリンピックの切符を手にしたのは、岐阜県中津川市出身の田中雄己選手(22)です。
田中選手:
「プレッシャーないですね。メダル獲得を目指して頑張ります」
2人を繋いだカヌーの縁が、パリで結ばれます。
■レジェンドに救われた過去 「もっと努力が必要だと」
田中選手は、メダルの期待もかかる新星です。小学生の頃にレジャーでカヌーと出会い、その楽しさにハマりました。中学・高校と、岐阜の揖斐川や木曽川で腕を磨きました。
しかし、田中選手は自分に自信を持てない時期が続いていました。
田中選手:
「本当にカヌーをいつまでやろうかと。カヌーでご飯を食べていく自信がなかったんだと思います、僕には」
転機は2021年に訪れます。カヌー界のレジェンド・羽根田卓也選手と一緒に練習をする機会に恵まれました。その時、羽根田選手に言われた言葉が、田中選手の心に刺さります。
田中選手:
「自分を変えてくれた言葉で残っているのは、『目標を持たずにやるのは、終わった後に何も残んなくない?もったいなくない?』みたいな。確かにと思って。ちょっと話しただけで、考え方が180度変わって」
目標を持つことの重要性を説かれた田中選手。そのときから3年後のパリオリンピックを目指して、羽根田選手に弟子入りし、考え方や技術を間近で吸収していきました。
羽根田選手:
「出会った当初はまだまだ粗削りで、僕なりにアドバイスをしていったらスポンジのように吸収していって。タイムや実際の成績に反映されていって。成長スピードの速い選手なので、今回のパリオリンピックも期待しています」
羽根田選手との出会いは、カヌーに人生をかけてみようと決断するきっかけになりました。
田中選手:
「羽根田選手の考え方だったり、競技に対する思いを聞いた時に、もっと努力が必要だなと思って、目標をしっかりもって活動するようになりました」
■市の担当者に頼み込み…田中選手の「もう1人の恩師」
地元の岐阜市で6月、岐阜県カヌー協会主催の壮行会が行われました。司会を務める加藤哲平さんは同郷の中津川出身で、もう一人の恩師です。
42歳の加藤さんは、現役時代に羽根田選手とも切磋琢磨した間柄で、引退後は岐阜でジュニアの育成に尽力しています。田中選手のことも中学生の頃から指導し、早くからその才能に気づいていた一人です。
田中選手は中学生の頃、市民プールにポールを張って練習を重ねていましたが、加藤さんは市の担当者にプールの使用を頼み込み、学校終わりに基礎技術を磨く環境を田中選手の為に整えました。
田中選手:
「当時は練習できる環境が木曽川はあったんですけど、そこには子供一人では行けない場所でしたし。夜暗くなってからの練習は、川は危ないのでできなかったので。あの環境があったからこそ、まわりの同世代の選手とも戦えていたと思っています」
そして、田中選手と羽根田選手を引き合わせたのも加藤さんでした。
加藤さん:
「卓也は本当に誰よりもカヌーに打ち込んでいたので。考え方もそうだし、トレーニングもそうだし、オリンピックのメダルを取ることに生活の全てを向けていたので。僕はオリンピックには出ていなくて、(田中選手に)説得力をもたせられなかった。本当に卓也には感謝している。卓也はオリンピックに出る意義について語れるので」
恩師がつないでくれた、運命の出会い。15歳離れた師弟関係の2人で、オリンピックに挑みます。
羽根田選手:
「これだけ歳の離れた選手と一緒にトレーニングをして、自分の励みというかエネルギーになっている場面もたくさんあるので、心強いパートナーです」
田中選手:
「卓也さんはカヌーを通しての歩みだったり、彼の人生の生き方っていうものが一番かっこいいなと思っています。パリオリンピックでは、メダル獲得を目指して頑張ります」