愛知県の2024年の交通事故死亡者は10月16日時点で109人、東京都と並び全国最多です。その半数以上を占める65歳以上の高齢者の事故を防ごうと、こんな実験が行われました。

■高齢者に多い「横断中の死亡事故」

 愛知県の運転免許試験場で、70代から80代の高齢者が集まり、安全に道路を横断するための実験が行われました。

【動画で見る】「まだまだ元気」→油断禁物…本人が思うよりかかる『高齢者の道路横断時間』警察の“実験”で分かった危険性

 愛知県内では2023年の1年間で、29人の高齢者が道路を横断中の事故で死亡しました。

 2024年も10月10日に、岡崎市で道路を横断していた80歳の男性がはねられ死亡する事故がありましたが、現場に横断歩道はありませんでした。

 愛知県警が「横断歩道を使わないことがある」という高齢者に危険性を認識しているか尋ねたところ、8割近くが「注意すればよい」や「いつも横断しているので大丈夫」、「車が止まってくれる」などと答えました。

■道路の横断にかかる時間は「1.5倍」?

 まだまだ元気と思っていても油断は禁物です。

 実験では、まずは警察官が幅13メートルの道路を横断するのにかかるタイムを測定します。30代から40代の警察官の平均タイムは7.85秒。

 一方、70代から80代の高齢者の平均は11.75秒と、およそ1.5倍かかりました。

 もし、実際に車が走ってきたらどうなるのか?70メートル先から時速40キロで車が来た想定で、無事道路を横断できるか実験が行われました。

 見た目では余裕があるように見えますが、実際に歩いてみると、車が来る前に渡り切れない高齢者がいました。

 時速40キロで車が接近する想定では、5人中2人が間に合わず。さらに時速60キロになると、5人全員が横断できませんでした。

85歳男性:
「車は思ったより速いなと実感しました」

81歳男性:
「歩幅が狭いから、若い時みたいに渡れるという意識でいると危ないかもしれない」

■夜間の横断には「反射材」や「LEDバンド」

 日没の時間が日に日に早くなる秋、夕暮れ時から夜間にかけて、死亡事故が増加します。

 黒い服を着て、反射材やLEDバンドをつけた状態と、何もつけない場合を比較する実験をしました。何もつけていない人、反射材をつけた人、LEDバンドをつけた人の3人に40メートル先に立ってもらいライトを当てると、何もつけていない人の姿はほとんど判別できません。

 死亡事故を防ぐために、高齢者自身も命を守る行動が大切です。

愛知県警交通総務課の松井拳警視:
「近くに横断歩道があれば、必ず横断歩道を利用していただきたいと思います。横断歩道がなく、どうしても道路を横断しなければいけない時でも、中央付近まで行った時、もう一度左右の確認をしていただいて、交通事故に遭わないように気をつけていただきたい」

■命を守るために…高齢者の意識向上を

 高齢者の多い道路横断中の死亡事故ですが、愛知県警が65歳以上の高齢者で「横断歩道を使わないことがある」という人に理由を聞いたところ、「遠いから」が46%、「いつも使う道だから」が32%、「待つのが嫌」7%などの回答がありました。

 横断中の死亡事故を減らすためには、ドライバーだけでなく歩行者側の高齢者も、交通安全への意識を高める必要があります。