儲けは度外視…みたらし団子“1本30円” 教員退職した店主が未経験で開業「地域の人ふれあえる場所を」
愛知県一宮市に、1本30円の価格と昔懐かしい味で人気の団子店があります。程よく焼き色が付いた団子を、甘辛な餡にたっぷりと漬けたみたらし団子は、世代を問わずたくさんの人たちに愛されています。
■1日に1000本近く売れる日も…世代を問わず人気の1本30円の「みたらし団子」
青と黄色のキッチンカーが際立つ「五王製菓 五王木曽川店」は、愛知県一宮市木曽川町の住宅地にあります。団子メーカーのフランチャイズ店として、今年3月にオープンしました。
【画像20枚で見る】モチモチの団子に香ばしい醤油の餡が絡む 世代を問わず人気のみたらし団子
営むのは、生まれも育ちも木曽川町の川合明美さん(64)です。
団子は注文が入ってから焼き始めます。およそ3分焼いて表面を程よく焦がすと、醤油味の甘辛な餡にくぐらせたら出来上がり。モチモチの団子に香ばしい醤油の餡が絡みます。
女性客:
「おいしいおいしい。ふわんふわん」
別の女性客:
「(買ったのは)10本。1本食べて、おいしいなって2本食べて、残しといてもって(全部)食べちゃう」
世代を問わず人気な「みたらし団子」。一般的には100円程する中、1本30円で販売します。安い価格もあって、多くの客が10本、20本とまとめて買っていきます。
お小遣い片手にやってくる、子供の憩いの場にもなっています。
子供:
「タレの具合がちょうど良くて、もちもちでおいしいです」
別の子供:
「みたらし団子、ちょっと苦手だったけど、ここので食べられるようになりました」
地元の小さい子供からご年配まで、1日に1000本近く売れる日もあります。
■誰もが気軽に食べられるみたらし団子を…地域に愛されるため1本30円に設定
団子は、愛知県江南市にある「五王製菓」の工場で作られています。
厳選した米粉を炊きあげ、窯でついた餅を機械にセットすると、団子が串に刺さった状態で飛び出してきます。
蒸し器に入れて二度蒸しすることで、生の団子の食感が長持ちするといいます。団子のモチモチ感を損なわないよう冷凍はせず、毎朝その日使う分だけを作っています。
この団子の売値は1本30円。五王製菓の社長は「小さな子供が小銭を持って来てくれる。目の前の人を大事にすることが一番」と、価格の理由を話します。
「誰もが気軽に食べられるみたらし団子でありたい」。地域の人たちに愛されるために、30円という価格を先に設定し、その中でやれる限りのこだわりを詰めました。
■地域の人がふれあえる場所を提供したい…教員退職後に未経験ながら店を開業
川合さんがこの店を始めたのには、ある思いがありました。
川合さん:
「退職するんだったら家で閉じこもっているより、外に出てそういう場所を作っていけば、皆が寄ってくれるじゃないですか」
川合さんは、小・中学校の教員として30年間勤め、2021年3月に退職しました。60年以上生活してきた地元に「地域の人がふれあえる場所を提供したい」という思いと、団子を作る五王製菓の「誰もが気軽に食べられるみたらし団子を提供したい」という考えが一致し、川合さんは飲食店の経験はありませんでしたが、この店を始めました。
妻のその思いに賛同した夫も、店先で交通整理などをしてサポートします。
夫の國夫さん:
「嫁さんの理想というのが、金儲けよりもたくさんの人に会って、話をしたいというところだったので…。儲かる儲からないは関係なく、バックアップするのが私の務め」
■人と人とのつながりは宝…静かな住宅地が年齢問わず多くの人で賑わう
オープンしてから店の人気は口コミで広がり、静かな住宅地が年齢を問わず多くの人でにぎわいます。
女性客:
「20本買って、お友達のところへ寄る。みたらし大好きですもんね」
この常連客は、空き缶を使って手作りした風車を店にプレゼント。店は地域の人たちに愛されています。
川合さん:
「宝だと思うんです、人とのつながりって。儲ける気がないので、私も楽しめて相手も喜んでもらえるってことだったらここが一番かな」
一軒の店から今日もみんなの笑顔が生まれています。
みたらし団子の店「五王製菓 五王木曽川店」は、一宮市木曽川町の住宅地にあります。