終活や遺品整理に…『メルカリ教室』にシニア世代が続々「“物捨てるのは罪悪”で育った。次の人へ渡せたら」
個人が簡単にモノの売り買いが楽しめるフリマアプリ「メルカリ」。不要なものを誰かに販売できるこのアプリの使い方を教えて入れる「メルカリ教室」を取材すると、終活や遺品整理などのためにメルカリを始めようとする多くのシニア世代の姿がありました。
■「ちょっとしたお小遣いになったら」…不用品を誰かに売りたいシニア世代に人気の「メルカリ教室」
ソファにアイシャドウ、オーブントースターなど…。売りたいモノをスマホで写真撮影し、自由に販売できるフリマアプリが「メルカリ」です。
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その購入や出品のやり方が学べる「メルカリ教室」は、全国およそ1200か所で開かれています。この無料講座が今、シニア世代に人気となっています。
名古屋市中区の地下街「サカエチカ」にある携帯ショップでは週に2~3回、メルカリ公認の講師が教えてくれます。参加者の多くは、スマホが少し苦手というシニア世代です。
一人暮らしの女性(60)は、断捨離のため学びに来たといいます。
女性:
「(売るのは)着たいけど着られないもの。汚れたものは思い切って捨てられるけど、まだ着られるって思うとなかなか昭和の人間は捨てきれないのよ…」
自宅に眠っている何年も前に購入した服の情報や写真を登録し、希望価格を設定します。
女性:
「お値段どうすればいいんだろう」
講師:
「安く出して売れちゃったら高くしとけばよかったという方も結構いる」
女性:
「高くして売れなかったら安くする方がいいもんね」
黒のパンツは、1450円で出品しました。
女性:
「生活の中に楽しみが増えるじゃないですか。ちょっとお小遣いがあったら高級なカバンでも。オシャレしたい、マッサージ行ったりネイルしたり」
ちょっとしたお小遣いは、自分へのご褒美です。
■コロナ禍でリアルのフリマは中止に…趣味で収集したアイドルグッズをメルカリで販売する母娘
教室では、お母さん(60)と娘さん(22)が商品撮影の練習をしていました。何を売るのでしょうか。
娘:
「グッズを売ろうと。売るために練習しに」
母:
「年齢の割にアニメが好きなんです。キャラクターのグッズがいっぱいあるので、前はフリマでやっていたんですけど、ドームとかでもうやらなくなったので」
趣味のポケモンカードやアイドルグッズの収集には、100万円以上をつぎ込んだといいます。コロナ禍で、フリーマーケットが中止になり、売る場を失ったためメルカリを始めます。
母:
「(売れたら)ごはん食べに行きたい。お肉」
娘:
「ご飯と、ライブあったときの足しになったら」
娘さんは、スマホケースとアイドルグッズの計3点を出品。3500円で売れました。
■子供は手を離れ夫と2人暮らしに…不用品の整理を始める人たち
2013年にサービスを開始した「メルカリ」には、8年間で累計25億点が出品されました(2021年12月時点)。1か月の利用者数は約2000万人と多いため、売れやすいといいます。
3世代前の「Apple Watch」は、出品からわずか10分で、1万円で売れました。
思わず捨ててしまいそうな「ゲームの空箱」や、「瓶の蓋」まで買い手が見つかるといいます。リユースという点で、SDGsにも一役買っています。
また最近は、“ある目的”での利用が増えているといいます。
50代の女性:
「年齢を重ねていくと身の回りの物を片付けていきたいので、夫婦2人だけになったので身の回りの物を少しずつ…」
子供は手を離れ、夫と2人暮らしの女性は、最近不用品の整理を始めました。
同・女性:
「今住んでいる家に永住することがほぼ決まったので。主人も定年を迎えて第二の人生、新しいもので揃えられたらいいですし、いらないものはまず捨ててと…」
しかし、ある悩みが…。
同・女性:
「例えば入社式とかお友達の結婚式とかに買ったお洋服とか、20代に初めてのお給料で買ったスーツとか…。イベントごとに買ったものは、断捨離しようか残しておこうか悩みます」
■「これくらいの歳になると断捨離」…大切にしていた母親の遺品の処分を決めた75歳の男性
思い出を振り返る人がいる一方…。
中臣さん:
「そろそろ断捨離ということで。これくらいの歳になるとそういうもんよ」
20年付き添った奥さんは施設に入り、今は一人暮らしの中臣さん(75)は、「終活」の一環で、断捨離を始めようと教室を訪れました。今回初めて出品するのが…。
中臣さん:
「宝石箱。オルゴール付きの」
高級感のある「宝石箱」は、母親の遺品で、大切に保管してきましたが1万円で出品することに決めました。
中臣さん:
「思い出を全て捨て去ろうと、それが断捨離。僕らは物資のない世界に育っている。焼け野原だった名古屋は。その時代に生まれているわけで、物を捨てるのは罪悪だという教え。それで次の人に渡せれば…」
こうした終活や遺品整理などのニーズから今、メルカリを始めるシニア世代が増えています。
■「安くでも買ってもらえたら」…使用している音楽機材を売っては新しいモノを購入する男性
メルカリ教室には、様々な人が訪れます。
男性:
「子供が乗らなくなった自転車。小学4年生くらいの時に買って、海外に引っ越していたので、置きっぱなしになって新品同様。子供が大きくなっちゃったので。今、中学3年生」
自転車もお手軽に出品です。
出品した商品の梱包・発送のためにやって来た男性も…。
男性(42):
「送った後に壊れたとかトラブルがあったらお互いによくないので。ちゃんと梱包してもらえるプロの方にお願いした方がいいかな」
趣味でバンドをやっているという男性は、使っていた音響機材を売っては、新しい楽器を買っているといいます。
同・男性:
「安くでも買ってもらえたらありがたい。これ(メルカリ)があるから新しいものを買いやすくなっている」
モノを捨てずに誰かに使ってもらう…。シニアの間にも、メルカリのサービスが広がっています。