2022年は歴史的円安と長引く物価高騰で生活にも大きな影響があった。今年の景気をどのように実感していたのか。

■1ドル115円台から150円台まで…急激な円安に振り回された生活

 名古屋市東区の「加藤珈琲店 栄店」。

【動画で見る】加速した歴史的円安と物価高騰…生活にも大きな影響あった2022年の景気

加藤珈琲店栄店の店長:
「お待たせいたしました。ヨーロピアンクラシックブレンドでございます」

テイクアウト用のコーヒーの価格を「1杯1ドル」と円相場によって決める、ユニークな店だ。そのドル円相場が、2022年は歴史的な「円安」に。

加藤珈琲店栄店の店長:
「驚きですかね。為替に振り回されるような1年でした」

そこに物価の高騰が重なった。

女性(39):
「野菜が高かった」

女性(41):
「トイレットペーパー上がっていて、一番衝撃」

「円安」や「物価高」と「戦」い続けた2022年。街で「今年の円安」を思い返してもらった。

就職・転職支援業の男性(28):
「円安の一年でしたね。自分でちょっと投資したりとかあるんで、ドル建てで積み立てていくやつになるんで、1万円…2万円くらいは(保険料が高くなった)」

銀行員の男性(34):
「お客さんからいろんな相談受けるんですけど、為替が動いたら『為替大変だよ』とかって感じで、いろんな業種の方がその時々で、この時はこの業種大変で、この時はこの業種大変でっていうことで、いろいろ慌ただしかった」

急激に動いた、2022年の円相場。1ドル=115円台からみるみる「円安」が加速し、10月には150円台を突破。32年ぶりの「円安水準」となった。

東京商工リサーチが10月に行った調査では、1ドル=143円前後の円安局面が、経営に「マイナスになる」と回答した企業が54%を超えていた。

政府・日銀は、円を買ってドルを売る「為替介入」で強制的に「円高」へと導こうとしたが、その効果は限定的だった。

■円安で輸出企業には追い風も エネルギー価格高騰で「すごく潤ったかと言われると…」

「円安」が追い風になった企業もある。自動車のドアや窓枠部品の「金型」を主に手掛ける、愛知県清須市の「エムエス製作所」。

「円安」の恩恵を受け、海外向けの「輸出」が好調で、直近の売上高は、前年2021年の110%だった。

社長も喜んでいるかと思ったが…。

エムエス製作所の迫田邦裕(さこだ・くにひろ)社長(44):
「輸出するってことに関しては、いい影響はありました。海外の現地の子会社が喜んでますよね。ただそれで、すごく潤ったかと言われると決してそうではなく…」

迫田社長に「2022年の景気」を振り返り、「景気の波」を描いてもらった。

後半は好調のようだが、夏場に大きく「波」が下がっている。

迫田社長:
「これが主力の設備になるんですけど、金属の鉄の塊から金型の部品を削る設備になっています。空調もかけますし、機械も動きますし、そういった中では、『うわっ』というような電気代でしたね」

「景気の波」が下がった要因、それは「高額な電気代」だ。

高騰が続くエネルギー価格。2022年は円安やロシアによるウクライナ侵攻などが、更に拍車をかけた。この工場では、昼夜問わず機械を自動運転しているが、この夏の電気代には本当に驚いたという。

迫田社長:
「詳細はなかなか言えないんですけど、(電気代に)ウン百万円という費用がかかっています。それが1.5倍とかになると、固定費のインパクトは大きいですよね」

それでも、一年の後半は気持ちも景気も上向きになっていた。

迫田社長:
「(夏以降は)コロナの影響が緩和されて、少し仕事もやりやすくなりましたし。コロナの1年目、2年目よりはいい年だったかなと。来年(2023年)は今年以上にいい年にするっていうところで、気持ちを込めて上向きで頑張っていきたい」

■節約術の達人も物価高騰に嘆く「テンション下がっています」

 身近なモノの値上げも相次いだ。

スーパーの女性客:
「めちゃめちゃ上がってます」

別の女性客:
「全体的になんでも高いなと思うので…」

帝国データバンクによると、2022年は食品だけで累計2万品目以上が値上げ。1世帯当たりの負担は年間7万円ほど増えると試算され、「値上げラッシュ」が家計を圧迫し続けた。

スーパーマーケットで物価高騰を嘆く大塚さん(66)。

大塚さん:
「(高いのは)卵、牛乳、乳製品。前はね(お肉)100グラム、もっと安かったんだけど、ちょこっとずつ上がっていくんだよね」

2022年9月、自らを「ケチ」と言い切り、節約冷凍術を披露してくれていた。

大塚さん(2022年9月取材時):
「(月の食費)8000円いくかな…いかないかもしれない。ケチだもん、めちゃケチだもん、私。もったいないから冷凍しとけば、使う分だけ出して」

あれから3か月、「値上げラッシュ」をさらに実感。電気代も高騰しているため、帰宅後も暖房は極力使わず、こたつで暖をとっていた。

大塚さんに、「1年の景気」を聞いてみると、夏以降、景気の曲線はするするとマイナスに。12月は1年のどん底だ。

大塚さん:
「(9月から)食料品がみるみる上がるんだよね。買いに行くたびに『今度これあがっている』『あ、これほしかったのにな』って思って…。(12月は)物価の値上がりと生活費やね、電気・ガス・水道の値上がり。テンション下がっています」

■焼き鳥店の女将「今見えてるもの全て値上がり」来年こそは明るい年に

 飲食店にも、値上げの波が押し寄せた。名古屋市中区の老舗焼き鳥店「鳥勢」。

鳥勢の女将:
「今見えているもの、ほとんど全てが値上がりです。火も、キャベツもそうですし、炭もそうですし、電気もそうですし、全部です」

鳥勢の女将:
「(炭が)ものすごく上がりました。月に換算すると(値上げ額は)もう1万くらいいく感じ、そのレベルです」

7月の取材時には…。

鳥勢の女将(2022年7月取材時):
「(電話を切って)会食の禁止が出たからキャンセル」

記者:
「キャンセル?」

鳥勢の女将:
「キャンセルです」

コロナに加えて物価高。支出は、去年2021年より2~3割ほど多かったという。

鳥勢の女将:
「悩みが消えたかと思うと、いろいろな物価高だったりコロナだったり、悩むこと多数で、本当に毎月毎月ため息がでて、苦悩の年でした」

ため息は出るものの、描いてもらった「景気の波」は上向き。

忘年会の予約も戻り、売上はコロナ前の7割ほどまで回復した。

苦しかった1年も、終わりを迎えようとしている。

全員:
「かんぱーい」

保険代理店業の男性(55):
「輸入するものがめちゃくちゃ高くなったりとか、ちょっと面食らっちゃいました」

別の保険代理店業の男性(47):
「リーマンショックの時に一度、私たちみんながそのあおりで苦労しているところもありますので、『こういう時こそ頑張らなきゃな』ってみんなで励まし合って」

鳥勢の女将:
「この12月は、みなさま本当に陽気に頼んでくださっているので、本当にうれしいです。『来年こそは』という思いはあります。今年の12月、なんとか乗り切って、来年こそは明るい年にしたいなという思いです」

2022年に加速した「歴史的円安」に「物価高騰」。新しい一年の経済は、上へ上へと向かうのだろうか。

2022年12月20日放送