- 原作を読んだときの感想は?
- すぐに引きこまれました。でもあまりに衝撃的な話だったので、読み終えたとき固まってしまって。それほどの恐ろしさを感じました。今回、それだけ面白い作品をユースケ(・サンタマリア)さんと一緒にドラマにしていけることが本当に楽しいです。
- 実際、撮影に入っていかがでしたか?
- ドラマは全9話ですが、登場する一人一人の人物像がより深く描かれているのが面白いと思いました。特に伊武(雅刀)さんが演じるお義父さん。原作だと何があってもどっしり構えている印象だったんです。でもドラマだといろんなことに翻ろうされて、そこで動揺したり、思い悩んだり。人間としてより血が通った感じがして、ドラマにさらに説得力を与えている気がします。雪見もそんなお義父さん同様に、人間性が掘り下げられて描かれているんですよ。
- 雪見は梶間家で最初に武内に対して疑念を抱きます。そういう“嗅覚”が鋭い人なのでしょうか?
- 最初は『武内さんってちょっとおかしな人だな』ぐらいだと思います。愛する娘や家族を近づけたくないなという程度で、そこまで深刻に捉えていなかったのではないでしょうか。それからどんどん武内への疑いが強まり、どれだけ『武内さんはおかしいです! 危険です!!』と家族に訴えても、すでに夫も義母も取り込まれていて聞き入れられず…。雪見は悔しいし、歯がゆいと思いますが、その心の動きがこの作品の魅力の一つになっていると思います。
- ある意味、雪見も揺れ動いていますよね。武内を怪しく思ったり、良い人のような気がしたり、やっぱり疑惑の目を向けたり…。
- 武内の発言に影響を受け、『この思いはもしかしたら、間違っているのかもしれない』とすぐ思いますから。100%ではないけれど、武内を信じてしまいそうになります。でも、それって普通にあることだと思います。強い信念や意思があっても、周りから何か言われると、『もしかして!?』と揺れちゃう。基本、雪見は芯が強いですが、周りの影響を受けやすいところは、かえって雪見という人間をリアルに感じます。
- 人間描写という意味で、リアリティがある、と?
- 人間というものを、しっかり描いている作品だと思います。その一方で、『こんな展開あるの!?』『こんな会話、しないよね』というところもあって、そのバランスが面白いですね(笑)。リハーサルで共演者の皆さんと笑ってしまうこともあります。
- 例えばどんなところで笑ってしまったんですか?
- 第2話の、俊郎さんが突然、弁護士になりたいと言い出す場面ですね。雪見が、『そんな簡単なものじゃないですよね、お義父さん』って言うと、お義父さんが『やりたいのか、分かった』と納得しちゃう。『そんなわけないでしょ!』って私なら言ってしまうかもしれないです (笑)
- 今回は雪見の母性が物語を動かしていく面もあります。“母性”をどう表現していますか?
- “母性”がどういうものか私にはまだ分からないですけど、この現場では常に(庄野)凛ちゃん(まどか役)と一緒にいるようにしています。そうすることで、生まれるものがある気がして。撮影現場は大人の男の人が多いですし、凛ちゃんぐらいの年齢だと、そういう人たちがいるだけで委縮してしまう場合もある気がして。それよりはお母さんに近い、私といることで少しでも安心してもらえたらいいな、と思っています。
- ユースケさんとの、ドラマでの共演の感想を聞かせてください。
- 武内の、何を考えているのか分からない感じを的確に演じていらっしゃいますよね。狂気を秘めた役柄がハマる方ということにも驚きました。こういう難しい役が似合うってすごいですよね。
- もし優香さんの近くに武内のような人物がいたら、どうしますか?
- それに関しては、答えって出ないですね。基本、逃げるしかない。当たり障りない距離を保てればいいですけど、気がついたときには、グッと近くにいるでしょうから。その時点ではもう拒絶できないので、常に逃げるしかない気がします。もし、武内と対等にやりあえる人がいたら、その人に助けを求めてしまうかもしれませんけど…。
- 優香さんは武内の人物像をどう見ていますか?
- 人から可愛がられたい人、“かまってちゃん”だと思っています。決して凶暴ではなく、相手に優しくしたいし、良かれと思って行動してますよね。ただ、ピントがどんどんずれていってしまうだけで。誰の心の中にも、もしかしたら私の中にも武内はいるかもしれない、と思います。“異常”とまではいかないけれど、優しさが大きくなりすぎて、ついやり過ぎて、それが相手にしたら迷惑になることってありますから。そういう誰でも持ち合わせている感情や衝動が、武内という人物に触れた人々に恐怖を与えるのではないでしょうか。
- 雪見のどんなところを視聴者の皆さんに見てもらいたいですか?
- 常識人の雪見は、視聴者の皆さんに一番近いのではないかと思います。武内を始め、個性的なキャラクターに囲まれる中、雪見の目線でこれから起こる出来事に恐怖を感じてもらいたいです。家族の中でどんどん孤立して、孤独を深める雪見に寄り添っていただけたら(笑) 雪見は普通の主婦ですが、武内と対峙することでどんどん強くなっていきます。その過程を最後までしっかり演じていきたいですね。
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