新型コロナウイルスの影響で、東海地方の多くの学校が臨時休校となり、その余波は給食にも。一斉休校によるキャンセルで頭を悩ませる業者がいる一方で、給食用の食材がお買い得品として出回って人気を集めています。

 東海地方の多くの学校で臨時休校が始まった、2日。

愛知県一宮市では、市内の中学校の学校給食に使う予定だった野菜や果物の一部を市民に販売。

「もったいない精神」と安さから、次々と売り切れました。

客:
「大根にリンゴとか人参とか。(全部で)500円!いいことだわね。もったいないわ、ほかるの」


 学校給食が無くなった影響はこんなところにも…。

(リポート)
「こちらのお肉屋さん。学校の給食で提供する予定だった食材が、臨時休校のため余ってしまったそうです」


 三重県津市にある、松阪牛などを取り扱う精肉店。

津市内の学校が臨時休校となり、すべての学校が給食をキャンセル。

そのため用意していた食材が、大量に余ってしまったといいます。

津ミート 佐野光穂専務:
「一カ月給食が休みといきなり言われまして。いつも買っていただいているところにもお願いをして、いつもの倍取ってもらうとかして頂いたんですけど、さすがに100キロという量は多すぎるので…」


 頭を悩ませた店が考えたこと、それは…。

<店のツイート>
「全ての給食がキャンセル トンヒレを大量に用意していたのに。そんな訳でいつもは100g324円が216円。一口カツに、ピカタに、お買い得な一品です!」


 2月28日に自社のツイッターで今の状況をそう投稿。すると、翌日の午後から1人、2人とお客さんが増え、わずか数分でお店は大混雑。

佐野専務:
「いや、びっくり。こんなに全部売れるとは思っていなかったんですけど。20~30人の人が来ていただいて、年末くらいしかそんな状況は見たことがないくらいだったので、本当に感謝しています」


 さらに、町のスーパーマーケットでは、買い物客が足を止めて品定めをしていました。

視線の先には…豚肉100グラムで98円。

 名古屋市中区・大須商店街にあるスーパーマーケットでは、豚肉の値段を通常の2割引きで販売。その理由はやはり…。

松浦和久店長:
「(休校で)学校給食もなくなるということで、その辺ぐらいから豚肉の生産者さんが困っていると」


 学校給食がなくなり、大量に余った豚肉をスーパーが仕入れて安く販売していました。

小学生など3人の子供を持つ母親は…。

母親:
「お昼ごはんね…お昼は、大変です。3人分作ります。必需品かなと」

松浦店長:
「(給食がなくなり)食事の用意とか、そういう部分で家計が圧迫される見通しになってきているようなので。『家計応援』という形で、お値打ちに出したいなと」

 キャンセルされた食材がお買い得商品として販売される一方で、悲鳴を上げるのが給食用の牛乳を生産する酪農家たちです。

小林牧場 小林雅明さん:
「牛を止めるわけにはいかないので、餌をあげないわけにもいかないし、毎日(乳を)搾らなくてはいけないし、今後が心配です」

 給食で出されるはずだった牛乳はキャンセルされたものの、乳牛は搾乳をやめると病気になることもあるため、量を調整することはできません。

 毎日決まった量の牛の乳が届けられる加工工場では…。

(リポート)
「現在1リットルの牛乳の生産が行われているんですが、こちらの給食用の200mlの牛乳の生産レーンは止まったままになっています」


 岐阜県内の50以上の酪農家から生乳を入荷し、県内の半数以上の小中学校に給食用の牛乳を出荷している美濃市の酪農組合。

1日に集まる生乳の量はおよそ50トン、そのうち20トンを毎日の給食用として加工して出荷しています。

 しかし、臨時休校によって給食が無くなったことで毎日入ってくる、給食用の牛乳10万パック分の生乳が行き場を失うことになってしまいました。

美濃酪農農業協同組合連合会 和田幸治部長:
「普通に売るといってもなかなかできませんので、加工工場の方で処理をしてもらうということをお願いしています」

 バターや粉ミルクとして加工することを決めましたが、加工食品用の生乳は、牛乳用と比べ販売単価は3分の2程にしかならず、組合の損害はおよそ1億円に上るといいます。

 今後の状況次第では、生産農家が負担を背負う可能性も…不安は募るばかりです。