新型コロナウイルスの感染が確認された愛知県蒲郡市の男性が、自宅待機の要請を無視して飲食店を訪れていた問題。
その後の取材で、この男性は「ウイルスをばらまいてやる」と家族に告げて自宅を出て、居酒屋とパブの2軒を渡り歩いていたことがわかりました。なぜこんなことが起きてしまうのでしょうか。
その驚きの事実は、5日の蒲郡市の会見で明らかに。
Q.昨夜、盛り場に行ったのではといううわさが出ていますが?
市長:
「外出はされたとお聞きしておりますが、ルートを把握しておりまして消毒等を終えているところであります」
Q.消毒したのは飲食店ですか?
市長:「ええ」
蒲郡市の50代の男性が検査で陽性と判定され、受け入れ先の医療機関が見つかるまで自宅待機を要請されていたにもかかわらず、無視して、市内の飲食店を訪れていました。
そして、さらに驚くべき事実が、警察や市の関係者への取材で明らかになりました。
<50代男性の発言>
「ウイルスをばらまいてやる」
男性は自宅で家族に対してそう話した後、そのまま外出したといいます。
(リポート)
「男性はタクシーに乗って自宅を出ると、市内の飲食店を訪れました。しかも2軒の店を渡り歩いていたということです」
感染を告げられた後、4日夜の男性の行動を、取材をもとに振り返ります。
タクシーで自宅を出た男性は市内の居酒屋に立ち寄りました。さらにその後、男性は歩いてパブに向かいました。その店内でも…。
<50代男性の発言>
「自分は陽性だ」
新型コロナウイルスに感染していることを自ら周りに打ち明け、通報を受けて防護服を着た警察官が駆け付ける騒ぎになりました。
当の男性は警察官の到着前に店を出てタクシーで帰宅し、翌日、愛知県内の医療機関に搬送されました。
保健所は男性が立ち寄った飲食店の消毒をして営業の自粛を要請し、濃厚接触した従業員や客には自宅待機を求めています。
市長:
「県の指導によっての自宅待機の状況が守られていなかったのは大変遺憾でありますけれども、きのうの夜は、市民に感染の危険があったということは遺憾に思っております」
市民からは戸惑いの声が…。
蒲郡市民の男性:
「非常に困ります、ちょっと常識を外れているような気がします」
別の市民の男性:
「無茶だね、家族もいるんだし、考えにゃいかんね」
感染が分かった男性の外出。なぜ止めることができなかったのでしょうか。
実は住民の感染が確認された場合でも、自治体ができるのはあくまで『外出自粛の要請』であり、強制力はありません。
政府が成立を目指す新型インフルエンザ特別措置法の改正案で、盛り込もうとしている「緊急事態宣言」。
学校や劇場など人が集まる場所の使用停止を指示したり、医薬品や食品の強制収容も可能にしたりするなど経済活動などを強制力をもって制限する内容が含まれていますが、この中でも住民の外出についてはあくまで「自粛要請」に留まっています。
憲法・行政法が専門の中京大学法学部、皆川治廣教授は外出の制限について、「憲法22条では、『居住移転の自由』という人権を保障しているので、それを制限するには相当明確な基準が必要になる。感染症にかかった人が、現在かつ、明白な危険があるかというと必ずしもそうではないということになるので、人権を保障するという意味では『自粛』にとどまるのではないか」と話しています。