新型コロナウイルスの検査で、ウイルスの存在を確認する「PCR検査」と並んで、「抗体検査」という言葉がよく聞かれるようになりました。
愛知県の藤田医科大学病院では、院内感染を防ぐための「切り札」として、手術患者に抗体検査を始めました。
■院内感染防止のため始めた「抗体検査」 判定までの時間は“約20分”
車いすの男性らが入って行くのは、抗体検査のために作られた特設の検査施設です。
5月11日から院内感染を防ぐため、一部の患者に「抗体検査」を始めた藤田医科大学病院。
臨床検査部の杉浦さん:
「この辺りを刺しますので、アルコール消毒大丈夫ですか?」
抗体検査では、指先から採取したわずかな血液を検査キットにたらして、特殊な薬を注ぎます。
岩田救命救急センター長:
「陽性だった場合には、2週間前ぐらい前までには、新型コロナウイルスに感染していたであろうなと」
血液採取から判定までに必要な時間は、およそ20分。
■PCR検査より“リスクもコスト”も低い抗体検査
検査の仕組みはこうです。新型コロナウイルスが体内に侵入した場合、ウイルスから体を守ろうと体内に抗体が作られます。
キットにある、IgGの表記の部分が反応すれば、過去に感染していたことを示しますが、IgMが反応すれば、現在、感染の可能性あり、いま罹っているかどうかもわかるといいます。
一方で、抗体検査と並んで耳にするPCR検査は、鼻などの粘膜を採取し、ウイルスの存在を確認する検査。
抗体検査は、わずかな血液を採取するだけなので、飛沫を浴びる可能性があるPCR検査と比べて、検査の時の2次感染が起こりにくく、さらに費用も5分の1ほどで行うことができます。
1日に2000人以上の患者が訪れる藤田医科大学病院。入口では検温などの感染対策をとっていますが、新型コロナは症状がなくても感染しているケースがあり、別の病院では、感染に気付くことなく治療を行い、院内感染を起こした事例も報告されています。
岩田救命救急センター長:
「今回(抗体検査を)お願いしているのは、全身麻酔の手術を受けられる方。その中で病状として(潜伏期間とされる)2週間自宅待機しても大丈夫だろうという、そういう判断がされた方」
藤田医科大学病院で、全身麻酔が必要な手術の件数は月に1000件ほど。全身麻酔が必要な手術では、気管に麻酔の管を出し入れする際に反射でせき込み、ウイルスが空気中に放出される可能性があるからです。
臨床検査技師の男性:
「こういう(陰性の)証明があることで、安心して手術に挑むことができると思いますので。とても重要な検査かと思います」
■抗体検査のもう一つの目的は「地域の情報把握」
藤田医科大学病院が抗体検査を始めた理由は、院内感染を防ぐほかにも、もう一つ大きな役割があります。
岩田救命救急センター長:
「今回の検査をさせていただくことで、この地域の方が、実はどれくらいの方が抗体を持っていらっしゃる、感染した可能性があるのかという、そういう情報もある程度把握できた時点で、また次のステップを考える」
藤田医科大学では、系列の岡崎医療センターと名古屋にあるばんたね病院でも抗体検査を行っていて、地域の感染状況を把握するとしています。