名古屋の小さなフレンチ店が、ひとり親家庭にテイクアウトの料理を無料でプレゼントする取り組みをしています。
新型コロナウイルスの影響で客足が遠のき、お店も苦しい状態が続いていますが、こんな時だからこそと腕を振るうシェフの思いは…。
名古屋市東区にある小さなフレンチ店「一穀一枝」。
店内はテーブル席とカウンターの、合わせて24席。白を基調にした、洗練された雰囲気です。
オーナーシェフの片山健史さんが厨房で作っていたのは、フランスの家庭料理です。
いろいろな食材を、組み合わせたコース料理を提供する片山さんのお店。
この日は、普段作らないものをパックに詰めていました。
片山さんはこうして用意した料理を、新型コロナの影響で外出の機会が減っているひとり親家庭に無料でプレゼントしています。
片山シェフ:
「私の家もそうなんですが、もともと母子家庭だったのもあり、母が朝から晩まで働き詰めだったこともあります」
一人奮闘する母親の姿を、間近で見てきた片山さん。今の状況の大変さは、容易に想像できます。この日のメニューは、甘みのある玉ねぎをたっぷり入れた、フランス家庭料理の定番キッシュ。
豪快にイノシシ肉を使ったプロバンサル煮込み。
バジルソースがポイント、稚鮎のマリネ。
地元の食材をふんだんに使った、彩りの良い6品です。
週末限定の“無料フレンチ”。用意したのは20食分。事前に予約した10組の親子に提供します。夕方、お店に親子連れがやってきました。
母親:
「全然食べる機会ないので。お弁当ばかりだったのが、本当に大変でした」
別の母親:
「楽しみです、すごく。やっぱり、母子家庭になってしまってから、食べる機会もなくなってしまったので」
子ども:
「じゃがいもとサツマイモの、グラタンみたいなのが美味しそうです」
子どもも親も、普段とはちょっと違う特別な夕食に、心が躍ります。
このテイクアウトを受け取った眞野さんが、子供たちと一緒に囲む食卓にお邪魔しました。
眞野さん:
「すごく楽しみにしていたので、うれしいです。2、3週間前から、今日フレンチだねって言っていました…」
眞野さんは、高校1年生の娘と、予備校生の息子との3人暮らし。学校も予備校も長い休みが続き、2人の子供もずっと家にいました。
眞野さん:
「給食があったりで、朝昼晩3回つくることがなかったのでそれも大変だし。ずっとみんな家にいるから、食事だけが楽しみなんだけど、お金もケチって、あんまりいいものも食べられないし」
仕事を抱えながら3度の食事の支度。外出自粛は、親子の食卓に大きな影響を与えていました。
茜さん:
「おいしいし、こんな華やかなご飯びっくりです」
空さん:
「フレンチはなかなか食べないんですけど、久しぶりに食べるとすごくおいしいし、これが家庭で食べられるのは、いいなと思います」
風さん
「毎日、単調な生活なので、その中でも家で楽しめるものがあると、一日が充実したなという感じがします」
親子で囲む食卓に、片山シェフのフレンチが提供した、心和むひと時です。
片山シェフ:
「より多くの方に、食事を楽しんでもらうという、一つのきっかけが作れたのではないかなと思っています。お金ではない喜びというのを、改めて感じることができました」
この取り組みは、6/13(土)、6/14(日)、6/20(土)、6/21(日)も、それぞれ10組限定で行われる予定されていて、お店に事前の電話予約が必要です。