三重県鈴鹿市出身の藤井美穂さんは、平均よりも大きなサイズの服を着こなす「プラスサイズモデル」としてアメリカで活躍している。見た目でいじめられた過去を乗り越えて気付いた、本当の美しさとは。

■Googleやインスタの広告モデルまで…アメリカで活躍する “プラスサイズモデル”の日本人女性

 鈴鹿市出身の藤井美穂(ふじい・みほ)さん、29歳。

【画像で見る】見た目でいじめられた過去乗り越える…海外で活躍する『プラスサイズモデル』気付いた“本当の美しさ”

少し待っていると、赤のタイトな衣装を披露してくれた。

藤井美穂さん:
「お仕事で着たり、パーティーみたいなので着たりしますね、こういうのを。(仕事は)俳優とコメディアンとプラスサイズモデルです」

“プラスサイズモデル” は、平均よりも大きなサイズの服を着こなすモデルのことだ。

日本ではあまり馴染みがないが、欧米ではファッションショーにも出演するなど、広く認識されている。

藤井さんは身長163センチ・体重80キロ。アメリカのロサンゼルスを拠点に「プラスサイズモデル」として活躍中だ。

Instagramのフォロワー数は、約6万7000人。GoogleやInstagramの広告モデルを務めたこともある。

今は世界を股にかけて活躍する藤井さん。

しかし、過去には「死にたい」と思うほど“辛い経験”をしていたという。

■「真後ろで悪口言われたり『ニキビがすごい』とか…」中学に入り容姿に対するいじめで過食に

 体重2924グラムで産まれた藤井さん。

幼い頃から目立ちたがり屋の活発な子供だったという。

藤井さん:
「(小学校では)演劇部に入ったりとか、人前に立つのがすごく好きだったので、自分でも将来はそうなりたいとずっと思っていた」

しかし、進学した私立の中高一貫校で待ち受けていたのは容姿に対する、同級生からの「いじめ」だった。

藤井さん:
「陰湿なことを言われたり、真後ろで自分の悪口言われたりとか。嫌でしたよね。『ニキビがすごい』とか『(肌が)汚いよね』とか、そういうこと言われるんですよね。中学の時に急に友達がいなくなって、喋れなくなったりして」

中学1年の冬には、学校に行けなくなっていた。

藤井さん:
「不登校で昼夜逆転していたんで、すごい夜中に食べたりとか、過食状態でしたね。(体重が)すごく増えちゃって、親戚とかに驚かれるぐらい。(体重が)増えたっていうのは自分で気にしたりしていましたね」

ストレスによる過食で、体重が増えていった藤井さん。追い込まれていた娘に、父・弘保(ひろやす 65)さんは…。

父の弘保さん:
「(体型も)気にはなっていましたけど、それより優先順位は引きこもりをなんとかする方が先かなと」

■環境が変われば自分も変わる…アメリカで出会った「自分らしさを分かってもらえる」場所

 中高一貫校だったが、別の高校に進学したことが、藤井さんの転機になった。

藤井さん:
「環境が変わったら、全然世界って違うんだなと思って」

“環境が変われば自分も変わる”

幼い頃の夢だった「人前に立つ仕事」を追いかけ、短大で演劇を学び、21歳でアメリカへ。

そこで、藤井さんの人生を変える出会いがあった。

藤井さん:
「日本で体型が大きめだと辛い思いをして、アジアはすごく外見差別みたいなものが厳しいっていう話を(友人に)したら『美穂の体型良いと思うから、プラスサイズモデルみたいな仕事したら絶対いいよ』って言われて」

アメリカでは広く知られている「プラスサイズモデル」に挑戦。

YouTubeの番組の藤井さん(日本語訳)
「(アメリカでは)いろんな人から『いい脚してるね』と言われて『は?』って思った」

YouTubeの番組に出演したことで、仕事が舞い込むようになった。

藤井さん:
「日本にはないんだったら他の場所にはあるかもって、もっと自分らしさを分かってもらえるような場所があるんじゃないかって思いました」

美穂さんの父・弘保さん:
「何年か前までは痩せてほしい、もうちょっときれいになってほしいっていう思いもありましたけど、個性ならいいのかなって」

藤井さん;
「私が頑張ってきたから、お父さんも気持ちが変わってくれたのかな」

■母校の小学生に動かす特別授業「外見が中身を決めるわけじゃない」

 アメリカから6年ぶりに帰国した藤井さんはこの日、母校の鈴鹿市立郡山小学校を訪れていた。

藤井さん:
「すごく懐かしい、よく遅刻したりしていましたよ」

学校から、特別授業の依頼だった。

藤井さん:
「意外と子供の前でやることってそんなにないんで、大人はある程度自分と同じ言葉とか考え方共有できるけど、子供は全然違う。行ってみて感じを見てって感じですね」

教室には、まもなく中学生になる6年生の子供たちが集まっていた。

藤井さん(特別授業):
「中学生って体も心も変わってくる時期で、それを楽しく乗り越えるにはどうしたらいいのかなっていうお話をしていきたいと思います。自分の見た目気になったりとか、ニキビめっちゃできとるとか、めっちゃ鏡見てしまうことあるの、すごい長い時間。鏡ってすごい便利やん、自分のこと見れるの、呪いみたいになるのよ」

辛く、苦しんだ過去。当時の自分へ言い聞かせるように、力強くメッセージを伝えた。

藤井さん(特別授業):
「自分が思う、自分の良いところを好きになろうね。自分を大切にする人が、他人を大切にできるんやね。体は体でしかない、人は見た目が美しい事だけに価値があるんじゃない。あなたの外見が、あなたの中身を決める訳じゃない。だから、いつも自分の見た目のことを愛せなくてもいいという考え方。自分のこと、最高カワイイと思うのしんどいなと思ったら、こっちでもいいの。足は細くなくても自分が歩いて遠くまで行くのを助けてくれたら全然ええやんな。自分の事、カワイイとか最高って思うのしんどいなと思ったら『いやいや、ちゃんと今日歩いているやん』って思ったらそれでいいよ、それも最高、いいと思う」

児童:
「超ポジティブ」

藤井さん:
「そうよ、超ポジティブ」

藤井さんは90分にわたって、子供たちに語りかけた。

女子児童:
「身長が高い所がそんな好きじゃなかったけど、身長が高かったら色んな服が着られるとか良いところがあるので、自分の好きなところにしていきたいなって思いました」

別の女子児童:
「藤井さんはコンプレックスとか、いじめられたりしたけど、自分の輝ける場所を見つけていたので、自分の意見はちゃんと突き通そうかなって思いました」

男子児童:
「太っていることが、中学校とか高校とか行ったらいじめられそうやなって思って困っています。『気にしなくてもいいよ』みたいに言われたので、自分の心もほっとして元気になりました」

藤井さんの言葉は、あの頃の自分を変えたように子供たちの心を動かしていた。

藤井さん:
「自分を好きになるっていうのは、コンプレックスを受けいれていくみたいなところもあって、それが時間が経っていくと『これって自分の良いところなんじゃない』って思えるようになってきたりすると思う」

藤井さん:
「自分らしさを消さなくてもいいような、キラキラを自分で保っていけるように育って欲しいなって思います」

2023年3月2日放送