インタビュー

内田朝陽さん(藤沢良樹役)

加賀友禅の職人・良樹とは、内田さんから見てどのような男性なのでしょうか。また、奈緒子に好意以上の感情を抱く一方で、瑠璃子からは想いを寄せられ…、良樹の恋愛模様も気になるところです。

――寡黙だけれど、良樹は人に対してちゃんと心配りが出来ます。女性にとっては、こういう男性って理想的ですよね。
「もしかしたら原作・脚本の小松江里子さんの理想の男性って、良樹みたいなタイプかもしれませんよ(笑)。演じていて思うんですけど、良樹って話を聞くのがきっと上手なんですよ。人から相談を受けたとき、『それは○○じゃない』なんて断定はしない。『こうなんじゃないかな』とか、『僕はこう思うんだけど、どうかな?』 とかいう感じで、話し方にも人を包み込むような優しさがあります。その反面、どこか甘えたがりなところもあるんですよね。そういういろいろな面が良樹の魅力に繋がり、人を引き付けるように見えればいいな、と思っています」
――良樹の職人気質なところは、女性だけでなく男性から見ても魅力的だと思います。
「撮影に入る前、加賀友禅の職人の方にいろいろと教えていただいたんですが、すごく“静”の世界でした。絵柄を描くときや、色付けの際には、神経を研ぎ澄まさなければいけなくて、誰一人話もせず、黙々と作業をしていたんです。そこに身を置いていると、厳しいときもあるかもしれませんが、良樹の生きる世界の一端を見ることが出来て、役を作る上ですごく助かりました。もともと役を演じるにあたり、何かしらの指導を受けたり、稽古をしたりするのって、僕は大好きなんですよ。今回も加賀友禅を学んだことで、『早く良樹を演じたい』っていう気持ちがより強くなりましたね」
――文句のつけようのない良樹ですが、あえて“ダメ出し”をするとしたら?
「鈍感なところかな…。瑠璃ちゃんの気持ちにはまったく気づいていませんもんね(笑)。実は以前、小松さんに『朝陽くんは鈍感なところがない?』って言われたことあるんですよ。だから良樹を通し、僕自身のダメなところを小松さんに指摘されているのかな、と思うときがあって。結構、ドキッとするセリフもあります。今回は良樹を演じることで、内田朝陽としても成長できれば(笑)」
――良樹は奈緒子に好意以上の感情を抱いているようですが、一方で瑠璃子からは想いを寄せられています。内田さんご自身は恋愛に関して、愛したい? それとも愛されたい?
「どちらも素敵なことですけど、愛するより愛されたい、ですかね。報われぬまま愛し続けるのは辛すぎますよ。こういう話をすると、いかに良樹が瑠璃ちゃんにひどいことをしているのかが分りますね(笑)。あ、そうか。良樹は鈍感だから、愛されていることに気づかないんだ。まず人として、そこを改めなければダメですね」
――ここまで良樹を演じてきて、何か印象的なことはありましたか?
「実は最初に良樹が登場する場面はかなり難しかったです。奈緒子さんが浅野川で携帯を落としてしまい、『もったいないですよ、携帯ばかり見てちゃ』って言いましたけど、初対面の人に対してのそういうセリフって、言い様によってすごく失礼に聞こえるじゃないですか。決してそんな風に聞こえるのではなく、金沢の良さを知ってほしい、という思いが伝わらなくてはいけないし、良樹の人柄も伝えなきゃいけない。さんざん迷いましたが、金沢のロケで浅野川の川面を見ながら言えて良かったです。とてもナチュラルな気持ちで言えたので。あと、この作品に出演して改めて思うのは、“旅館物”ってやっぱりいいなっていうこと。登場人物の世代に幅があって、旅館側の人たちがお客様のために懸命になる姿って人を引き付けるものがありますよね。まあ今回は残念なことに、僕は旅館側の人間じゃないですけど(笑)」