中部国際空港=セントレアは2025年2月17日、開港から20周年を迎えた。インバウンドの伸び悩みで「1人負け」との指摘もある中、発酵食を中心とした『愛知の食』で巻き返しを図ろうと、新たなプロジェクトが動き出した。

■開港当時は大フィーバーも…新型コロナで大打撃

 愛・地球博の開幕をおよそ1カ月後に控えた2005年2月17日、中部国際空港、通称セントレアが開港した。

【動画で見る】“1人負け”との指摘も…インバウンドの回復伸び悩む中部国際空港 切り札は愛知独特の「食文化」

開港初日は新しい空港を一目見ようと、朝早くからファンが殺到した。

記念すべき一番機は、弾丸ツアーのチャーター機で、前日の夜に県営名古屋空港を出発し、サイパン経由でセントレアに降り立った。

ツアー客の男性:
「感じいいね、やっぱり。何でも一番」

ツアー客の女性:
「滑走路が見えてきましたら感動でした。本当にいい思い出ができました」

“名古屋めし”などが味わえる飲食店や、みやげ物店が集まるスカイタウンも連日大混雑で、セントレアには開港からわずか3日間で25万人以上が訪れた。

あれから20年、2020年には新型コロナウイルスの感染拡大で、一時は国際線がゼロになるなど、大きな打撃を受け、その後も回復が遅れている。

2024年度の国際線利用者数は約354万人で、コロナ前のピークだった2019年度の約620万人だけでなく、開港直後の2005年度の約533万人も下回った。

インバウンドの回復で、国内の空港がにぎわう中、セントレアは“1人負け”の状態となっている。

■インバウンド増加へ…切り札は「味噌」!?

 開港20周年を迎えた2月17日、国際線の到着ロビーに、直径およそ2メートルの大きな木の桶が設置された。地元、愛知県の「桝塚(ますづか)味噌」で、90年以上前から使われている味噌樽だ。

『発酵王国』とも呼ばれる愛知県は、味噌煮込みや味噌カツに欠かせない「豆味噌」や、豆味噌の製造過程から生まれた「たまり醤油」、さらに三河地方の「みりん」や、香り豊かな「日本酒」など、古くから豊かな食文化を誇ってきた。

インバウンド需要が伸び悩むセントレアでは、これらの「発酵食」を世界にアピールしようというプロジェクトが進められている。

プロジェクトの仕掛人は、中部国際空港に入社し18年になる森勇樹さんだ。中部国際空港では2025年1月、インバウンドの増加を目指す「地域ブランド共創室」が新設され、森さんもメンバーに選ばれた。

森さんは、まず空港で働くスタッフに発酵食について知ってもらおうと、豆味噌づくりの体験会を企画した。

中部国際空港 森勇樹さん:
「この地域に住んでいる以上、しっかりと自分の言葉で、魅力を語れるようになるべきだと思っていまして、それが我々が目指している訪日外国人・インバウンドを誘致する取り組みにつながってくると思ったので、まずは体験してそれを知っていただきたい」

リーマンショックや新型コロナなど、数々のピンチを経験した森さんは、地域ならではの個性を打ち出す必要を感じていた。そして、インバウンド獲得へ巻き返し策を探る中で、愛知独特の『食』に注目した。

森さん:
「海外の方からみた愛知とか名古屋というのは残念ながら知名度が低くて、そこが課題の1つかなと思っています。そういうところに『名古屋といえば○○』みたいなものをしっかり作らないといけないなと思っていますし、それを地域の方と作っていく、今は発酵食文化に注目している」

■“無形文化遺産”を追い風に 「愛知の食」を売り込め!

 セントレアに、韓国のLCC「エアロK」が新たに就航した1月31日。

森さんは発酵食をアピールするため、来日したエアロKのカン・ビョンホ社長らとともに、常滑市で177年続く老舗の酒蔵「澤田酒造」を訪れた。

澤田酒造 澤田薫社長:
「出来上がった麹です。日本の伝統食品の秘密とでもいうものでしょうか。カビの一種。毒を出さない、いいカビを日本人は古来から醸造食品に使ってきました」

日本の伝統的酒造りは2024年12月、ユネスコの無形文化遺産に登録されることが決まった。

常滑焼のおちょこは、酒の個性を活かすよう、それぞれ形や大きさが異なっていて、味の違いが楽しめる。

エアロK航空のカン・ビョンホ社長:
「おいしいです。韓国で経験できないことをきょう、ここで経験できてよかったです。お酒や日本の文化について韓国の人もとても感動して、気に入ってくれると思います」

■味噌樽に込めた思い…インバウンド増加と地域活性化の両立を

 魅力あふれる愛知の醸造文化をどう発信するのか。森さんは豊田市で木桶を使った伝統的な味噌づくりを続ける「桝塚味噌」を訪ねた。

味噌蔵に並んでいた、100年以上使われるという伝統的な木桶の味噌樽を見た森さんは、その光景に惹かれ、セントレアに展示することを決めた。

桝塚味噌には、見学に来た子供たちや外国人にセントレアを好きになってもらおうと、オリジナルキャラクター「なぞの旅人 フー」もおいてもらった。

桝塚味噌の野田好成さん:
「愛知県の味噌とかたまり醤油って、木桶に支えられているというのがありまして。たくさんの方が来るセントレア、海外の方も来られるので、見ていただけるのは非常に嬉しい」

インバウンド増加への願いを込めて、国際線の到着ロビーに展示された味噌樽は、外国人には物珍しく映ったようだ。

韓国からの観光客:
「信じられない。とてもかっこいい」

スペイン出身の男性:
「この味噌の造り方をまだ続けているの?今も?素晴らしい!」

中部国際空港の犬塚力社長:
「発酵食の一番の目玉であります、お味噌とともに我々はさらに成長して、多くのインバウンドに来ていただくような、セントレアになっていきたい」

セントレアならではの魅力を発信したい。インバウンドの誘致と地域の活性化を目指し、森さんは「発酵食」で世界に挑む。

森さん:
「われわれの会社の中で『いい空港』になりたいねという言い方をしているんですね、地域の皆様それぞれにとって、『いい空港』になっていけるといいなと思いますし、インバウンドの方から見た『いい空港』でもいいなと思っているので、そんな『いい空港像』を自分の中で考えながら、この先も20年働くんだろうなと思っています」

2025年2月17日放送