――連日の撮影で白石さんがドラマに対し、また夏希という役に対し、どう取り組んでいるのか。インタビューはさらに続きます。
実は、夏希の心の中には「母親の希望に添わなきゃ」という思いがあります。そういう気持ちは私も理解できるんです。夏希と私とでは置かれた状況は全然違いますが、私の母は仕事と家庭の両立を頑張っていた人でした。残業して家に帰っても、仕事のことで学ばなければいけないことがあり、少し休んで勉強、ということも。そういう姿を見ていたので、私も小学生の低学年の頃から家事を手伝っていました。自立心も早く芽生えていたかもしれませんね。夏希が少女時代、私と同じような気持ちを感じていたんじゃないかな、という気がしています。
夏希の立ち位置というのは実は難しさもあります。夏希は司法修習生、まだまだ見習いみたいなものです。とは言え、前職が教師だっただけに話すのは得意だと思うし、それに30代なので、それなりの社会経験もあるはずです。20代って成人しているし、年齢的にはもう大人だけれど、いざ社会に出るとまだまだ一人前扱いしてもらいないところがありますよね。30代は目の前で起きたことに対し、どう対処すればいいのか分かってくる時期なので、そういうところを持ち合わせながら研修生として未熟な部分をどう表現すればいいのか、まだまだ考えています。ただ、そんな中でも夏希は「とりあえずやっちゃう?」みたいなところもあるんですよ(笑)。演じていて、そこは私も近いかも、と思っています。夏希はとっても前向きでもあるので、私も彼女に負けず前向きな気持ちで撮影を乗り切りたいと思っています。
夏希は30歳を越えてから司法修習をして、裁判官になることを目標としていますが、この年齢でスタートするのは決して早くないそうです。それでも食い下がり、勉強して、こうして夢を実現させるため頑張っています。それもまた、夏希の強さですよね。今は裁判官志望ですが、彼女が桂木所長や弁護士の先生方、それに事務所のスタッフや同期の修習生たちと触れ合う中で考えが変わり、弁護士や検事を目指すのか、それともあくまで裁判官志望なのか。そのあたりがどうなっていくのかも、私自身、楽しみなんです。
放送では視聴者の皆さんにいろんなことを感じていただけると思いますが、私自身は、「この作品ってきっと“共有するドラマ”なんじゃないかな」と思っています。弁護士とか法律とかって、何の問題もなく過ごしていると自分には関係ないと思う方も多いでしょうが、いざ何らかのトラブルに巻き込まれ、弁護士の先生にお世話になると、そのありがたみが身にしみると思うんです。このドラマも弁護士事務所が舞台とは言え堅苦しい話ではないので、ドラマの中で登場するモメゴトにどう対処し、どう解決すればいいのか…。その知恵を視聴者の皆さんと共有できたらいいな、と思っています。
夏希にはモメゴトが次々に起こります。「何でこんなに!」というくらい、まさにモメて、モメて、いう感じ(笑)。家にいた見知らぬ男性が久保田先生で、「何で弁護士事務所にいるの!?」と思ったら、 “迷惑おばさん”がさくら所長で「さっきのおばさんがまさか!うそーっ!!」と(笑)。これからもジェットコースターのように話が展開していきますので、そのスピーディーさも楽しんでいただきたいです。
デビュー当時、失敗続きでいつも怒られていました。「本当に私ってダメだ」と落ち込む毎日でしたが、そんな時、スタッフさんからいただいた言葉が「千里の道も一歩から」でした。先が見えなくて、これからどうなるんだろうって分からない自分に、すごく響いたんです。この現場にいる自分はまさにそうで、台本を読んだ時、「まだまだ先は長いなー。台本、12週分あるんだよなー」と感じましたし(笑)。ただ、いったん現場に入れば、目の前にあることに集中し、日夜頑張っています。その中で、また心に響く新たな言葉との出会いがあるかもしれない、と思うと楽しみですね。