――連ドラ出演へのレギュラー出演は約30年ぶりだという服部さん。さまざまな人生経験を経て、演技の世界に戻ってきたと語る服部さんに、みどりという役柄や演技そのものに対する想いを語ってもらいました。
撮影に入る前、スタッフの皆さんに「みどりさんはどういう人ですか?」と話を聞く機会があったんです。そうしたら、「尊敬する所長のためなら何でもします!という気持ちを持った女性だ」と言われました。「あまりに所長のことを思うが故、周りの人にツンケンすることもあるから、根は善人なのにその良さがなかなか伝わらない」とも。でも話が進むにつれ、彼女の人情深いところが垣間見えたりしましたし、涙を見せたりもしました。みどりさんは、“手に負えないおばさん”の部分が強いかもしれませんが(笑)、さくらさんのような素晴らしい方を支えていることにプライドや誇りを持ち、心の中にある確固たる想が揺らぐことのない生き方は素敵だと思います。
みどりさんはものすごくしっかりしていて、いろいろな人のことを同時に見ることの出来るタイプで、私も多少はそういうところがあるつもりです。日本舞踊をやっていて、たくさんのお弟子さんを一度に見る機会も多いですから。私は基本的に真面目過ぎるところがあり、いい加減なのがとにかくダメなんです。こんなに性格じゃなかったら苦労しないで済むのに、とよく思いますが、みどりさんもそういうところがあるでしょうね。ただ、基本的には私自身とまったく違って、彼女は“上から目線”でものを言いますが、私にはそれが出来ないです。今回は自分と真逆の性格の人物を演じていますが、実はそれはそれで良かった気もしています。自分と重なる部分が多かったら、演技に迷いや戸惑いが出てしまったかもしれませんから。
衣装合わせのとき、いかにも事務員というスーツを着たんですが、いざ撮影に入ったら衣装さんがきれいなベージュのスーツを用意してくださり、着てみたら「これもありかも」ということになりました。そこから衣装さんがものすごく頑張ってくださって(笑)。もともと私はモデル出身で、当時は与えられた衣装は何でも着こなさなければいけなかったし、子供の頃、母がありとあらゆる色や形の服を私に着せたんです。そういうこともあってか、どんなファッションも抵抗がないし、洋服に負けない気持ちもあると思います。
私と同世代だと、着たい服はあるけれど“諦めモード”に入っている方もいるかもしれません。私は21歳の娘がアメリカに留学していることをいいことに、「これ借りちゃおうかな」と彼女の服を着ることもあります。そろそろ年相応にしなくてはいけないかしら、と思うときもありますけれど、「私はこれ!」と執着するのでなく、いろいろな顔を持っているほうが楽しいと思うんです。
私はこうしてテレビに出演する仕事をしていますから、頑張っている姿を通して同世代の皆さんを応援できたらいいな、と思っています。応援団の班長さん、みたいな存在になれたら、と。だから体型を維持するための地道な努力もしております(笑)。テレビに出る上での責任も感じていますし、何もしないで体型をキープするのはもう無理でして…(笑)
10代からモデルの仕事を始め、その流れで女優業にも挑戦したのですが、その後、海外でのレポートの仕事が増えて、再び演技をすることなど考えてもみませんでした。それでも演技の基礎がないことがコンプレックスだったので、アメリカで暮らしていた頃、アクターズスクールで演技を学び、ハリウッドスターにインタビューするときも「ハリウッドと日本ではスケールが違うかもしれないけれど、私だってこの人たちと同じことをしてきた」という思いを持って話を聞くと、相手が大スターでも委縮せずに出来たんです。
演技に対して中途半端なまま終わってしまった、という思いが心の中にずっとあったと思います。そんな気持ちに気づかないふりをして生きてきましたが、子育てが一段落して、いろいろな経験をして、いろいろな人と接して、いろいろな人生を見てきて、私の中に“引き出し”が出来ていたんです。自分の得たものを演技で表現できたらいいな、と思っていたところ、今回、「大山みどり」との出会いがありました。今は女優業を再開したばかりですから、さびているところもいっぱいありますし、そこは頑張って磨かなかれば、と思ってます(笑)。
この作品に主演している(白石)美帆ちゃんとは2年ほど前から親交があって、彼女は私の日本舞踊の教室のお弟子さんでもあります。まさか彼女の連ドラ初主演作で共演できるとは思ってもいませんでした。今回の共演は本当に偶然なんです。美帆ちゃんは台本をもらい、そこに私の名前を見つけたときとても驚いたそうで、「あまりにうれしくて思わず電話しちゃいました」と夜遅くに連絡をくれたんです。不思議なんですけど、この作品への出演が決まる前、ドラマで美帆ちゃんと共演する夢を見て、目が覚めたとき「何だ夢か」とがっかりしたんです。それが実現するなんて。こんなこともあるんですね。
この現場では若い共演者の方もたくさんいて、(草刈)麻有ちゃんを見ていると、演技を始めた頃の自分を思い出しますね。彼女が何か困っているときは、気持ちをほぐしてあげたくなっちゃうんです。美帆ちゃんをサポートしたい気持ちもあるし、若いスタッフさんたちも頑張っているから、私ができることは何でもしたくて。久々にドラマの現場に戻ると、若いときとは思うことや感じることが違うんですよ。そんな内面の変化にも、新鮮な気持ちで向き合っています。
人生、上を見たらきりがないし、下を見てもきりがありませんが、私は今日の自分より明日の自分を輝かせるために、女優業も他の仕事も、それにプライベートももっと頑張るつもりです。昨日できなかったことが今日できるようになったらうれしいものですよね。私と同じ世代、さらに上の世代の方は何かやりたいことがあっても年齢を理由にためらってしまうことがあると思います。「ちょっと時間ができたから」でいいんですよ。やりたいことがあればどんどん始めましょう。私は常にそのつもりでいますから(笑)。
「笑顔」です。怒ったり、悲しい顔をしたりしていると、そういう気持ちが寄ってきてしまうものだから、そうならないよう笑顔でいることを子供の頃から心掛けてきました。幸せはどれだけ人に分けても減らないし、自分がハッピーなときは、その気持ちを皆さんにお裾分けしたくて。もう一つ、年齢を重ねて浮かぶ言葉は「感謝」。この作品に出会えたこともそうですし、何事も当たり前だと思ってはいけないんですよね。