「真珠夫人」や「牡丹と薔薇」など、数々の話題作、ヒット作を手掛けてきた脚本家の中島丈博さん。「さくら心中」にかける想いをたっぷり伺いました。
- ――本作のテーマの一つ、心中にはどんなイメージがありますか?
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「近松門左衛門の印象が強いかな…。決して美しいものではないです。もっとドロドロした男女の感情の末の出来事というか。今回もまだまだ心中が登場しますが、どれもこれも違うパターンの心中にしたいと思っています。結構怖い心中も出てきますよ」
- ――物語は中盤に突入しました。
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「3月上旬まではうわ~と話がものすごい勢いで展開していきます。上がりっぱなしで加速度を増すジェットコースターのように(笑)。桜子(笛木優子)と比呂人(徳山秀典)の仲を裂こうとする明美(中澤裕子)の行為もどんどんどぎつくなるし、それにつけて“H度”も増しますので(笑)」
- ――“愛の歴史ケーキ”なるものも登場しますね。
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「第43話(3/4放送)ですね。明美が比呂人にあるお祝い事をして欲しくてケーキを用意するんですけどその中に…、という展開です。中盤のハイライトの一つです。もし10年間尽くした男が自分を捨て、違う女に行こうとしたら…。明美の比呂人を愛しているからこその執着ですね。でもそんな行動がとっぴに見えてはいけないので、そこに至るまでの心情は丁寧に描いていきます。断っておきますが、あくまですべて想像の産物です。僕はそんな怖い女性との恋愛経験はありませんから(笑)」
- ――中島作品といえば、強い女性が数多く登場すると思います。
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「確かに意思ははっきり持っている女性が多いですね。あと、ヒロインの敵になる女性に関しては、ヒステリックな性格として書くとき、僕が参考にしているのはおふくろなんです。これがまあ我の強い人でした。もう亡くなっていますが、子供のころは本当にこき使われたし、腫れ物にさわるように接していましたよ。怖い女性の源泉はおふくろかな(笑)」
- ――今回の作品では、勝の桜子に捧げる愛も印象的ですね。
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「いつも桜子の側にいますが、子供の頃に桜子に出会い、最初は兄のような感情を抱き、そこからずっと愛し続ける。何かにつけて桜子をフォローしていきますが、ものすごくピュアですよね。演じる松田(賢二)くんが『勝はとても好きなキャラクターです』と言ってくれて嬉しかったです。僕は勝のように献身的にはなれないですよ。エゴが強いから(笑)。できるなら唯幸(神保悟志)になりたいくらい。勝のような純粋な想いは、自分にないものだから書くのが楽しいんです」
- ――中島作品にはものすごく激しくて、「ありえない」と思いつつ、なぜか見る側を説得させる力も非常にあると思います。
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「キャラクターだけを頼りに物語を構築してないからだと思います。書き進めていく中で、つい展開のスピードを速めてしまうときもありますが、“まずいっ”と思ったら、そこにたどり着くまでワンエピソード盛り込むんです。そういうところで手を抜くと、キャラクターが薄っぺらくなるし、観てくださる方の共感も得られないんですよ。きちんと書き込むと展開がうまくいくし、視聴者の皆さんも『もしかしたら、こんなことってあるよね』と思ってくれるリアリティが生まれるんです。時には登場人物が乗り移ったように書きますが、それだけじゃダメ。客観視しないと。セリフの吟味、ドラマの流れの吟味。冷静に見極め、推敲していかないと、ドラマとして高度なものになりませんから。ドラマは所詮フィクション、嘘の世界だけれど、そこに“本当”のものを描いていかないと。僕はそれが書けなきゃ脚本家として失格だと思うし、それが出来ないと視聴者との“対話”が成立しないと思います。実は僕は時代性というものも大切にしていて、当時どんな物が生活の中で使われていたか、当時の流行歌は何か。気にして取り入れるようにしています。作品を書く上で、歴史的なリアリティも忘れちゃダメ。大切な要素なんですよ」
- ――中島作品には熱烈なファンの方も大勢います。皆さんにメッセージをお願いします。
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「この作品を通し、さまざまな愛の形と愛そのものが持つパワーを見て欲しいし、感じてほしいですね。僕も愛の多面性を最後まで描いていくつもりです。それこそ“十一面観音”みたいに、愛の表情を豊かに描いていきますので。愛にはこんないろんな表情がある、ということを皆さんに知ってほしいと思います。昼の帯ドラマってそれだけのことが書ける時間がたっぷりとあるから好きなんですよね」