歌手として、また俳優として精力的に活動を続ける松下さん。「音楽と演技の世界はまったく別物」と語る松下さんですが、どんな想いで蓮を演じているのでしょうか。
――最初に蓮の役柄を聞いたときの感想は?
「20歳を過ぎている身としては、単純に“高校生かー”と思いました(笑)。ただ、役として抱えているもの、大切な人を殺された過去がある、という部分にはものすごく惹きつけられました」
――「たんぽぽ農場」のメンバーを演じる皆さんの中には、役柄の過去を深く知らされぬまま撮影に入る人もいるそうです。松下さんは違ったんですね。
「そうですね。蓮は最初の段階で、過去が明らかになっていますから。一見、どこにでもいる普通の高校生なのに、実はそうでないところに、この役を演じる上でのやりがいを感じました」
――では、どんな風に蓮を演じようと思いましたか?
「最初に監督から、『高校生という設定はあまり意識しなくていい』と言われたんです。松下くんの、等身大のまま、感じたまま蓮を演じてくれればいい、と。だから台本を読んで、自分が感じたことや思ったことを大切に、自分らしく蓮を演じています」
――蓮を演じる上での“松下さんらしさ”とは?
「こういうところが松下優也らしいです、というのはまだ分らないですね。ただ、10人の役者が蓮を演じれば、全員が全員別の蓮になると思うんです。だから今、僕が演じている蓮が松下優也らしい蓮だと思うんですけど…。蓮を演じているとき、常に今は松下優也でなく蓮なんだ、と強く意識しているんですけど、そのあたりは僕らしいのかもしれないですね」
――松下さんは松下さん。蓮は蓮だと?
「基本的に僕と蓮はまったく似てないですね。性格の面だけでなく、育ち方とか置かれた環境とかも含めて。でも、“演じる”という意味では、自分と共通点のない役のほうが演じることに集中できるからありがたいです。自分に似ている役だと、自分のパーソナルな部分が出過ぎてしまいそうになり、それは良くないと思っています。役の“想い”を伝える上で邪魔になる気がして。とはいえ今だって、蓮が素の自分とまったく違うキャラクターと言っても、現場で自分の演技をVTRでチェックすると、まだまだ蓮の感情や気持ちを伝え切れていない、と思うときがあります」
――辛い過去があるだけに、蓮として伝えたい感情や想いは、とても大きいものがあるでしょうね。
「蓮のいろんな気持ちを演じるのは簡単なことではないです。やっぱり好きだった女の子が殺されてしまったという過去が影響しているんでしょうけど、蓮って感情の浮き沈みが激しいから、その幅を表現するのは大変な作業ですね」
――蓮は自分とまったく似ていないとのことですが、蓮を演じる際、役へのスイッチが入る瞬間はありますか?
「現場に入ると自然に蓮になれてますね。キャストの皆さんに囲まれていると。毎日、蓮を演じることに集中しているなら、今のままでまったく問題はないんですけど、僕の場合は音楽活動もしつつ、こうして演技もしているので、ライブなどをした後でまたこの現場に戻ってきたときは、自分なりに意識してスイッチを切り替えてます。そうじゃないと、自分でも何をしているのか、蓮のどんな気持ちを演じているのか理解しないまま1日の撮影が終わってしまうので。『今、俺は蓮なんだ!』とまではいきませんが(笑)、歌手から俳優に意識を変える感じですね」
――改めて蓮はどんなキャラクターだと思っていますか?
「“等身大”という言葉が似合う役ですよね。年齢の割に大人びた考えを持っているところもあるけれど、まだ高校生だから思ったことをすぐ行動に移してしまうところもあるんです。大人だと、たいがいの人はまず頭で整理して、それから行動に移すと思うので、パッと行動するところは、『蓮ってまだまだ若いな』って思ってます(笑)」
――松下さんの学生時代のことを思い出したりは?
「そもそも音楽の勉強をするためアメリカに行ってしまったので、僕は高校に行ってないんです。だから今回、部活のシーンを撮ったとき、ものすごく新鮮でした。中学生のときも音楽に夢中だったので、部活をやっていなかったので。サッカー部の場面は僕個人としてもすごく楽しめました。“THE 部活”という感じがして(笑)」
――松下さんは音楽活動をとても大切にしているそうですが、演じることはどう捉えていますか?
「演技の経験を積む中で“芝居”という表現方法も好きになってきました。僕の中で音楽と芝居ってまったく別物なんです。だから両方を同時にやって、いろいろな形で表現していくことに意味があると思ってます。僕の中では“歌手であり、役者であり”と最初に歌手の部分が来るのは確かですけど、だからといって演技をしているとき、『俺は歌手だから』なんて気持ちを持ったことは一度もないですよ。それは何度も言いますが、歌手と役者はまったく別の次元の話だからです」
――ドラマの冒頭では蓮のどんな部分を視聴者の皆さんに観てもらいたいですか?
「まず“蓮として”視聴者の皆さんに観ていただけたらうれしいです。演技をしているときはいつも、松下優也の部分は出してないつもりなので、蓮として存在していられたらいいな、と思っています。それで、この作品の世界を楽しんでいただけたら」
――松下さん自身は、この作品の世界感ってどう思いますか?
「キラキラと輝いている青春ドラマでなく、登場人物たちがそれぞれに重いものを抱えているところが日常に近いと思うし、子供たちをメインにして、こういう題材を扱っていることに意味があると思います。子供たちの犯罪って、自分とかけ離れた世界の話、と思っている方も多いと思うんです。でもニュースなどではよく報道されてますよね。だから身近な話とも言えるし、ドラマだからフィクションはフィクションですけど、このドラマの中で起きている事件は決して“作り事”ではないと思うので、今世の中でどんなことが起こっているのか、多くの人に知ってもらいたいですね」
――視聴者の皆さんの中には、蓮と希望の恋愛に注目している方も多くいると思います。
「蓮と希望ってまさに背中合わせの二人ですよね。本来なら、あまりに違う世界にいるから出会うはずがなかっただろうし、そんな二人が出会ってしまったことでどうなるのか、ハラハラドキドキしながら見守ってもらいたいです。二人とも純粋だから、お互いを思う気持ちに観ているだけで幸せになるときもありますが、それぞれが背負っている過去があまりに重すぎますから…。いろいろな葛藤を抱えた二人がこの恋をどう進めていくのかにも注目してほしいです」
――最後に、松下さんにとって“光”とは?
「“夢”ですね。僕は夢って生きる原動力だと思っています。目標という言葉に言い換えられるかもしれませんが、夢を持っているほうが人は楽しく生きられると思います。もちろん、夢があることで辛くなるときや苦しくなるときもありますけど、僕にとって夢はとても大切なものです。あと、このドラマだと光があるということは、その周りには影があるということで、子供たちの影の部分はすごく色が濃いですよね。その分、光も思いっきり明るいはずだから、蓮やほかのメンバーが物語の最後でつかむ光は、まぶしいくらい明るいものになればいいな、と思っています」