昨年に続き、物語の“要”ともいえるおっちゃんこと北山を演じる渡辺さん。1年ぶりに「たんぽぽ農場」に帰ってきての感想などをうかがいました。
――また元気な若手の皆さんとの共演ですが。
「役者さんによっては、若い俳優たちとの共演って大変だとおっしゃる方もいますけど、そんな風に感じたことはないです。そもそもこういう現場が好きだってことなんでしょうね。今回も『たんぽぽ農場』の最年少メンバー、あかりを演じている(西川)茉佑ちゃんはこれが連ドラ出演初めてで、芝居の経験自体ほとんどないんです。本番で彼女は、こちらが思いもよらぬ表情を見せてくれるから、おもしろいですよ。子供たち一人ひとりが見せてくれるものが新鮮な驚きに満ちていて、北山の気持ちをまさにライブ感覚で作っていけるのは非常に楽しいです」
――昨年も渡辺さんはもともと子供好きだとおっしゃっていました。
「小学校の高学年の頃から小さい子の面倒を見るのが好きで、『お前は学校の先生に向いている』と歴代の担任の先生に言われたんですよ。高校に入ったら、落ちこぼれてしまったので、そんなことはさっぱりと言われなくなりましたけど(笑)」
――では、北山という役はご自身に合っていると思いますか?
「どうなんでしょう。ただ、周りからはよく『似合っている』と言われるので、そうなのかもしれません(笑)。もともと自分は舞台畑の役者で、デビュー当時からの仲間がたくさんいるんですけど、めったにテレビでの僕の仕事をほめてくれない友達でさえ『北山は良かったよ』と言ってくれて、そのことはすごく印象に残ってます。自分でもこの作品に出ることは当然仕事だけど、仕事という感覚がないんですよね」
――改めて、この作品の魅力とは?
「まず清水さんの脚本。とにかく素晴らしいです。思わず笑ってしまうコミカルな部分とヘビーな部分のバランスが絶妙で。演じ甲斐、やり甲斐の脚本です。ただ、台本に沿って真面目に演じればいい、というわけでなく、この作品で大切なのはチームワークだと思っています。『たんぽぽ農場』のメンバーと一緒になって作り上げることで出来てくるものがあるんですよ。最初はみんな緊張していて、どこかぎこちないんだけれど、そこからどんどん絆が生まれてきて、今、現場はとっても“いい感じ”です。観て下さっているみなさんもだんだんでいいので、このドラマの世界にハマってくださったらうれしいですね」
――そもそも、パート2が決まったと聞いたときはどんな風に思ったんでしょうか?
「今回、“パート2”と言ってますが、去年は1回きりだと思って演じていました。かなりヘビーな役だったので、撮影がオールアップしたとき“やりきった感”がすごくあったし、燃え尽きたんですよ。3カ月の撮影であれだけの分量を撮るのは初めての経験で、でもこの作品の世界を表現するためには、演じることを流れ作業には絶対したくなくて。スタッフもこだわって作ってくれましたが、みんながみんな、本当に大変な現場でしたね。『あー、良い経験ができた』と自分の中で1回終了していたので、パート2はまさか、ですよ。心の中で、『もし可能ならやりたい』と思っていましたが、いざ実現するとなると、『しんどいんだぞ、大丈夫か』と自分に聞いている自分がいました(笑)」
――実際、演じてみては?
「手探りですね。難しいです。去年と同じセットで、状況も1年後ということですが、子供たちの顔ぶれも半分以上変わりましたから。自分の中には前作のメンバーとの連帯感が残っていて、『去年のような気持ちを味わいたい』と思いましたが、できるかどうか不安で。でもそんな気持ちを『今年のメンバーとまたゼロから作り上げていけばいんだ』と思い直しました。それに不思議なもので、気がつくとそんなことまったく気にならなくなってました。人間よくできているもんですよ(笑)。もうみんながこの現場に馴染んでいて、一体感がありますから」
――今回のメンバーはいかがですか?
「去年は男子が元気だったけど、今年は同世代の女の子が多いので、完全に女子校のノリですね。男子はタジタジですよ(笑)。大樹とかアヤメとか、去年のメンバーがときどき出てくれますが、物語の良いアクセントになってくれているし、俺自身も気心がしれているので、彼らがいると、ホッとする部分もあります」
――北山自身も大きな傷を抱えていますが、果たしてその傷がいやされることはあるんでしょうか?
「今回は蓮くんと出会ったことで、北山も自分の解決できていない過去に向き合うことになりますが、脚本の清水さんがどこまで踏み込むか、ですよね。北山は自分の妻と息子を殺した通り魔の少年に自殺された、という過去があって、パート1では手元にある犯人が書いた遺書を開けられずに終わっているんです。今回、ひょっとしてその遺書を…、と思ってますが、こればっかりは分かりませんね。過去のことを他人に打ち明ける場面は、これがまた大変なんですよ、気持ちの面で。“憑依”なんて言葉は使いたくないけれど、気持ちがとても乱れてしまうんです。感情のコントロールができなくなってしまって。こんなことは珍しいです」
――北山と通して、視聴者の皆さんに伝えたいことは?
「北山は決して神様のように完全ではなくて、結構ダメな部分もあります。だから劇中でも子供たちの悩みを解決はしてあげられません。ただ、一歩前に踏み出すよう勇気付けることや背中を押してあげることはできます。視聴者の皆さんにとっても、北山がそんな存在になれたらうれしいですね」