スタッフ、キャスト一同、この作品の現場は「まるで本当の家族のよう」と言います。北山役の渡辺いっけいさんが、さしずめお父さんなら、お母さんはまさしくこの方、小川さんです。常に現場を明るくしている小川さんのインタビューをお届けします。
――小春は思ったことをポンポンと言ってしまいますよね。
「最初に脚本家の清水さんから、『今回は現場を大いにひっかきまわして下さい』とお願いされたんです。そこで私のポジションが分かりましたね(笑)。ただ、小春は人の心に土足でズカズカと入り込んでしまうところもありますけど、それは彼女に母親として悩みやトラウマのようなものがあってのことだと私は思っています。口は悪いですけど、心配ゆえのおせっかいに見えていればいいな、と思ってます」
――小春を演じていると、ご自身の子育てのことを思い出しますか?
「子育てって日々不安だらけなんですよ。もちろん幸せは感じてますが、それだけではない色んな感情が入り混じりながら、日々を過ごしています。子供を産んだ瞬間から、その子が大人になるまで、ちゃんと育て上げなければならなくて、それは大変なことです。この作品に携わっていいな、と思うのは思春期のお子さんがいる親御さんだったら『そうか、思春期の子供ってこんなことを感じているんだ』と思うような描写がいっぱいあることですね。それは子供と向き合う上ですごくヒントになっています。」
――小川さんのお子さんは二人とも男の子だそうですが、小島さんを始め、女の子とは違いますか?
「そりゃ、違いますよ。女の子はいいですね、華やかで。みんなの“女子トーク”を聞いているだけで私も元気になれるし、若返る気がしています(笑)」
――小川さんご自身がお子さんとの暮らしの中で心掛けてきたこととは?
「親だから100%正しいなんてことはないと常に思っていました。親だから、教師だから、大人だから完璧、なんてことはありえなくて、人は忙しいと自分の感情のままに行動したり、何か言ってしまったりすることがありますよね。私だって子供が小さいとき、『今日のゴハンは何?』と聞かれ、普段は『おかずはあれとあれと…』と答えてましたけど、余裕がないと『何でもいいでしょ!』なんて言ってしまったときもありましたから。ただ、私はそういう素の部分、ダメな部分も隠さず見せるべきだと思っていたし、言いっぱなしで終わるのでなく後で『さっきはごめんね。お母さんも疲れてたんだ』とフォローを入れていました。きっと、子供たちも私たち両親のことを親であると同時に一人の人間として見てくれていたと思います」
――ところで小春は“口うるさいが料理は絶品”という設定です。小川さんも料理がお得意だとか。
「主婦をやっている以上、毎日作らなければいけませんからね。私のほかに作ってくれる人がいるわけでもないですし(笑)。役の設定を聞いて、料理が得意というところは主婦としてはうれしかったですね。実はドラマを撮っているスタジオが家からそう遠くないので、時間があると家に戻ることができるんです。待ち時間が長くあるときは家に帰って夕飯を作って、またこの現場に戻ったりしてます。それがすごく助かっているんですよ(笑)」
――小春を演じてきて、ご自身と似ていると感じる部分はありますか?
「非常にあります(笑)。せっかちで早合点なところとか。小春は良かれと思って言い過ぎることがよくありますけど、演じていても『あ~、これは私と一緒だ』とちょくちょく自分に重ねてます。普段の私は、自分であれこれ想像して、相手の言うことも聞かずうわ~って言った後、『え、違うの?』ってことに気づき、謝ってばかりなので(笑)。日常でよくあることなので、小春のそういうシーンは素でできてます(笑)」
――現場に小川さんがいると笑いが絶えませんし、撮影でも小川さんのセリフ回しに笑いをこらえているスタッフさんをよく見かけますが。
「悲しい性ですけど、ちょっとおもしろくできるな、と思う場面になると、どうせなら笑いが欲しくなっちゃうんですよ!(笑) 物語の展開上、どうしても重くて暗くなってしまうこともありますから、明るくできるところは少しでも楽しく明るくしたくて。そういう部分も小春に任せられたパートかな、と思っています」
――小川さんは子供を持つ親として「たんぽぽ農場」のような場所をどう思いますか?
「過去に問題を起こしたり、心に傷を負ったりしている子供たちはきっと心のよりどころが欲しいはずなんです。例えば学校の父母会に出て、荒れている子供たちの話がでたとき、自分の気持ちをぶつける場所や、自分が落ち着ける場所がなくて苦しかった、というようなことを聞いていたので、『たんぽぽ農場』のような場所は実際あるでしょうし、こういう場所を求めている子供たちもいるってことを広く世間の皆さんに知ってもらいたいと思いますね」