子供の更生をめぐって、北山の考え方と相いれず、「たんぽぽ農場」を否定する亮介の姿・・・。皆さんはどうご覧になっていますか?大変難しい問題ですし、賛否両論あるかと思います。そんな役・亮介を演じてきた感想を新井さんに話をうかがいました。
――亮介をどんな人物だと捉えていますか?
「亮介は決して間違ったことは言ってないと思うんです。自分は検事になれなかった、というコンプレックスが彼の根底にはあるし、監督からも最初、若い検事にアゴで使われていることに耐えている気持ちも強くあると言われましたが、息子をとにかく検事にしたい。彼の心の大部分をそんな思いが締めているから視野が狭くなっているんでしょうね」
――亮介は「たんぽぽ農場」を非難していますが、世の中には“亮介派”も多くいると思います。決して悪い人ではないですよね。
「物語が『たんぽぽ農場』を中心に動いているし、子供たちを応援している方もたくさんいると思います。そういう人からすると、「何だ、あのオヤジは。子供たちや蓮のことを邪魔して」となるかもしれないですね。僕は亮介が“悪役”なのかどうかは、あまり深く考えないようにしているんです。確実に言えるのは、蓮を検事に、という思いに偏り過ぎているということだけです」
――演じる上で気をつけた点は?
「撮影に入る前、監督からは「なるべく笑顔はなしで」と言われました。まあ、家族に対してのセリフも検察事務官という職業ありきのものが多かったので、『笑わないよう気をつけなくては』と意識しないで済みました。ただ、僕自身は何でもつい笑って誤魔化そうとする人間なんです(笑)。気を抜くとそんな人の好さだとか弱さだとかが画面から出てしまうので、その辺りは気を付けたつもりです」
――そもそも新井さんがこういった役を演じるのは新鮮です。
「10年に渡り、“理想の父親”みたいなお父さんを演じてきましたからね。長期のシリーズ物でそういう役を演じている間は、例えばサスペンスドラマで悪役のオファーってなかったんですよ。今回は“嫌味なところ”のある役を演じられたので、これまでとは違う役を演じる良いきっかけになるんじゃないか、と楽しみにしているんです」
――亮介は息子を検事に、との想いがあまりに強すぎますが、そんな風に思ってしまう人の気持ちは分かりますか?
「検察事務官という職業柄、息子が『たんぽぽ農場』で暮らす女の子を好きになったら、息子のためにならないという気持ちに駆られるかもしれないし、『こんな風に頑なになってしまうだろうな』とは思いますね。反対に蓮の気持ちもよく分かるんです。これだけ父親に反対されたら反発するしかないでしょ(笑)。亮介を演じつつ、息子なら『こんな風に反発したくもなるだろうな』と思うシーンは随所でありました」
――家族の間がぎくしゃくしている加賀美家ですが、現場の雰囲気は?
「実は僕は相当な人見知りなんですよ。『たんぽぽ農場』のセットでの撮影で、(渡辺)いっけいさんや小川(菜摘)さんが子供たちと楽しそうに話をしていて、『いいなー』と思っていました(笑)。同じドラマの現場なのに、違う惑星に来た気分で。僕もあんな風に話せたらいいんですけど、どうにも人見知りなので(笑)」
――物語も大詰めを迎え、亮介が今後の展開のカギを握っている人物だと思います。亮介の視点で見どころは?
「その質問は難しいですね(笑)。亮介は『たんぽぽ農場』に入り込んだ息子をどうにかして連れ出したいわけですよ。なんせ『たんぽぽ農場』を悪だと決めつけていますから。亮介は亮介なりの正義感で息子を良い方向に導くためのレールを敷こうとあがきますが…。ドラマが大きく動く中で、亮介が何をして、また自分のしたことにどう決着をつけるのか観ていただくほかないですね」
――ところで劇中では農場を憎む亮介ですが、新井さんご自身は畑仕事や土いじりのご経験は?
「それが好きなんですよ。年に1回ほど、野良仕事みたいなことをする機会があるんです。純粋に楽しいですよ」
――では更生のきっかけとしての畑仕事、というのは理解できますか?
「そうですね。リアルに言えば『畑仕事なんかしてどうなるんだ』って思う子供もいるだろうけど、やっぱりその子がもともと持っているものって大事ですから。ドラマの中で真太郎がミニトマトをきっかけに更生への道を歩み出していますが、そういうものに巡り会えるかどうか、ですよね」