「こんなお母さんがいてくれたら…」と思わずにいられない、家族一人一人への惜しみない愛を章子役で体現する七瀬さん。章子を演じてみての感想は…?
――章子は心根のとても美しい女性ですが、演じていてどう思われますか?
「私自身、4歳の男の子の母親なので、『母親はこうでなくちゃいけないな』と日々、襟を正しています(笑)。最初に登場したところでの章子さんって、夫の亮介さんから一歩も二歩も下がり、100%の気持ちで家族のことを支える女性でした。家族全員が蓮くんの過去の事件のために苦しみ、そこから少しずつ元に戻っていく中で、家庭がもう一度壊れかけますが、それでも章子さんは息子を信じて凛としているので、私は『この人は思いのほか強い面があるな』と演じていても感じたんです。章子さんの強さや揺るぎない愛情には感じるものがありましたし、母としてそうありたいな、とも思いました」
――七瀬さんご自身も章子に近い印象を受けますが。
「いえいえ、そんな。もう程遠い…とは言いたくないですけど(笑)。でも章子さんみたいに家族のことをここまで深く思えるのはすごいと思います。私自身、もちろん息子のことを最優先にしていますが、自分のことを考えてしまうときも正直、ありますから。章子さんは旦那さんの支え方も素敵ですよね」
――ご自身の子育てで大切にされているのはどんなことですか?
「子供のペースを大人のペースで乱さないようにすることでしょうか。穏やかにニコニコしていたい、と心掛けています。ということはそうできてないってことですけど(笑)。急ぎなさい、早くしなさい、とつい言いがちだし、子供なので思いもよらないワガママが出るときもあって、叱ってしまうこともありますが『章子さんならこんな風には叱らないだろうな』とは思いますね(笑)」
――お子さんのいらっしゃる立場で、この作品の内容をどう感じていますか?
「家族愛や母の愛の大切さ、家族がコミュニケーションを取ることの重要性…。そういうことをここまでしっかり描いているドラマって最近少ないんじゃないかと思うんです。今、そういう関わりが一番大切だけれど、薄れてきている気がするので、自身が作品に参加していながら、一ファンとしてもすごく楽しんで観ています」
――少年犯罪というテーマについては?
「報道だけを見ていると、例えば『子供が親に暴力を振るってしまいました』という結果だけしか知ることができませんよね。でもその裏側には『たんぽぽ農場』の子供たちのようにこんな出来事があったのかもしれないな、とかいろいろ考えさせられました。加害者=100%の悪でなく、そうなってしまったプロセスは家庭に問題があったり、愛情が足りなかったり、いろいろ問題があるんだろうな、と思いました」
――では「たんぽぽ農場」のような施設については?
「最初は加賀美家のように『怖いわね』という考えに近かったです。でも今はこのドラマに関わったことで、絶対考え方が変わっていると思います。視聴者の皆さんもそんな風に理解してくださる方が増えてくれたらうれしいですね」
――ところで加賀美家はある意味、“理想の家族”だと思います。それなのになぜ、絆が揺らいでいると思いますか?
「加賀美家を理想の家庭と表現するなら、みんなが愛情を持って暮らしていた、という意味ではそうですよね。今はその愛情の方向が間違っているだけのことで。お父さんの希望さんに対する気持ちもすべて息子への愛情の裏返しだし、そこには自分のコンプレックスもあるんですけど、こういうことをまさにボタンの掛け違えって言うんじゃないでしょうか。ところどころで間違えるのは人間だから当然だし、これだけ家族の間に愛情がある人たちなので、実際に加賀美家のような家族がいたら絶対やり直すことが出来ると思います。過ちを許し合い、受け入れあえたなら、こんなに素敵なことはないですよね」
――ここまで演じてきて章子のセリフで印象に残っているものはありますか?
「ドラマの終盤に章子さんにとても素敵なセリフがあるんです。言っていても心が温まるものだったのですごく印象に残りました。ほかにも収録の最後になって章子さんには素敵なセリフがたくさんあり、『(脚本家の)清水さんからの素敵なプレゼントだね』なんて現場でも話しているんです。ただ、その中にはものすごい長ゼリフもありまして(笑)。でも本当に章子さんは愛情あふれるセリフばかりなので、言うだけで幸せを感じています」
――加賀美家のシーンの撮影現場はいかがですか?
「ウチの息子と娘はさわやかで良い子たちですよ(笑)。蓮(松下優也さん)くんも真面目だし、優香(未来穂香)ちゃんも一生懸命で可愛いいし。二人こそまさに理想の子供たちです」
――では「たんぽぽ農場」に行ったシーンはいかがでしたか?
「子供たちの真剣な取り組みに圧倒されました。みんなすごく真面目に役と向き合っているので、正直驚きました。もう少し学校のノリではしゃいでいるのかな、と思っていたので。『たんぽぽ農場』の子供たちが農業を通し、一生懸命更生しようとする気持ちと、若いメンバーが自分の役と懸命に向き合い、まっすぐにエネルギーをぶつけている姿にリンクする部分のある美しい現場で、私も役者として刺激を受けましたね」