名古屋市の新栄にある、美味しい肉の店「丸小」。
明治28年創業の老舗は、昼時ともなると多くのサラリーマンで賑わいます。
私も食事から力を貰いたい時は、人気の「牛なべ」目当てに
迷わず足を運びます。
入社以来、四半世紀に渡って通っている店ですが、4代目の女将を務める
小出朋子さんの事を知ったのは、ごく最近です。
きっかけは、お子さんの体験を綴った文章でした。
小出さんは3年のOL生活を経て1984(昭和59)年、
老舗料理店に嫁ぎました。
忙しいながらも楽しい日々を過ごしていましたが、
気掛かりだったのは、なかなか子供に恵まれない事・・・
不妊治療を続け、やっと8年目に命を授かりました。
長女の梨紗子さんです。
その梨紗子さんに発達の遅れを感じたのは、生後4ヵ月の頃。
医師の答えは、この先普通の暮らしは難しいという厳しいものでした。
以来、少しでも良い状況に・・・もしかしたら奇跡が起きるかも・・・
そんな思いを胸に梨紗子さんと共に病院やリハビリ施設を回り、
あらゆる可能性を探る日々が続きました。
そんな小出さんに心の転機が訪れたのは、
梨紗子さんが小学校に入った頃です。
「障害は治すものではなく、付き合っていくものなんだ」と。
それからは「娘に普通の世界も見せたい」と、養護学校に通いながら
地域の学校と交流したり、車いすダンスに通ったりという生活になりました。
中でも障害や国籍、言葉の壁など全ての垣根を越えて集まった
合唱団「地球組」での活動は、もう13年に。
中心メンバーとして、あちこちの舞台に立っています。
<最前列、右から4人目>
そんな母と娘の生活は、他の3組の家族と共に
「四つの空 いのちにありがとう」という映画にもなり、
全国各地で上映会が開かれています。
いのちに向き合い、困難を乗り越え幸せになるために・・・
昼夜の接客で、女将として店を切り盛りしながら、
22歳の梨紗子さんとの生活は、想像を超えるものがあります。
「もう泣くだけ泣きました。だからこそ1日1日を大切にしたい。
せっかく生きているんです、泣いているよりも笑っている方がいい」。
"何事も楽しく"そう心に誓って、今日も小出さんは店に立ちます。
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